路上にて⑥
ぽつり、ぽつり
鼻先をを打つ水滴に目を覚まされます。
(あたたかい……)
身体全体にほんのりと熱を帯びて、まるでお布団の中に居るみたいです。
ゆらゆらと揺れて、それがとても心地よく、まどろんでしまいます。
「くそー、どこへ行ったのだ。奴は」
くぐもった声が聞こえて、それがどの方角からのものかさっぱり見当がつきません。
頭がぼんやりとしてます。
脳に酸素が足りていないのでしょう。
「ふーー、はあーー、ふーーー」
ゆったりと深呼吸をして、脳に酸素を送り込もうと試みます。
「おや、気が付いたかな?お嬢さん」
今度は声をはっきりと捉えました
私のすぐ傍から、声はしていたのです。
左に首を少し傾ければ、そこにとても派手な赤色のマスクがありました。
見覚えがあります。そうです、こいつは。
ゼンラサンです。
「ひぃっ……」
私は高く声をあげようとして、思い通りにならず喉の奥が震えただけでした。
どうやら私の身に起こった最悪な事態は継続しているようです。
コートの変態にキツク抱きしめられかと思えば、お次はゼンラサンにオンブされてしまっているのですから。
「安心したまえ。気を失った君は何もされていないよ。この全裸マンが保証しよう」
いえ、それは違いますよ。
今まさに全裸の変態に拘束されている最中なのですから。
「天候のせいで、”センサー”の効きがよくない……こうなったら」
何をするというのでしょう。
私は体を強張らせます。
「”全裸勘”!!」
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* 全裸勘 とは!
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* ただの勘である。
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「多分こっちだ!」
ゼンラサンは、曲がり角を左に曲がります。
曲がる直前、私は視界の隅で見慣れた制服と、赤い髪留め、ツインテールを見かけたのです。
「あっ」
思わず声を漏らすと、ゼンラサンが ”キュキュ”と 大げさな音を出して足を止めてくれました。
「何か見つけたのかね!お嬢さん!」
「いえ、多分友達がそこに居たんです……ってそれより、降ろしてもらってもいいですか?」
「むむ、もうよいのか?ならば、降ろすとしよう」
ゼンラサンの背中から降りると、初春らしい、肌寒い風に吹かれます。
ぽつぽつと振る小雨も冷たいです。
「さむ……」
ほんの少し、ゼンラサンの背中の上が恋しくなるのが不思議なものです。




