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路上にて⑥

ぽつり、ぽつり


鼻先をを打つ水滴に目を覚まされます。


(あたたかい……)


身体全体にほんのりと熱を帯びて、まるでお布団の中に居るみたいです。

ゆらゆらと揺れて、それがとても心地よく、まどろんでしまいます。


「くそー、どこへ行ったのだ。奴は」


くぐもった声が聞こえて、それがどの方角からのものかさっぱり見当がつきません。

頭がぼんやりとしてます。

脳に酸素が足りていないのでしょう。


「ふーー、はあーー、ふーーー」


ゆったりと深呼吸をして、脳に酸素を送り込もうと試みます。


「おや、気が付いたかな?お嬢さん」


今度は声をはっきりと捉えました

私のすぐ傍から、声はしていたのです。

左に首を少し傾ければ、そこにとても派手な赤色のマスクがありました。

見覚えがあります。そうです、こいつは。


ゼンラサンです。


「ひぃっ……」


私は高く声をあげようとして、思い通りにならず喉の奥が震えただけでした。

どうやら私の身に起こった最悪な事態は継続しているようです。

コートの変態にキツク抱きしめられかと思えば、お次はゼンラサンにオンブされてしまっているのですから。


「安心したまえ。気を失った君は何もされていないよ。この全裸マンが保証しよう」


いえ、それは違いますよ。

今まさに全裸の変態に拘束されている最中なのですから。


「天候のせいで、”センサー”の効きがよくない……こうなったら」


何をするというのでしょう。

私は体を強張らせます。



「”全裸勘”!!」



 ***********************

 * 全裸勘 とは!

 *

 * ただの勘である。

 * 

 ***********************



「多分こっちだ!」


ゼンラサンは、曲がり角を左に曲がります。

曲がる直前、私は視界の隅で見慣れた制服と、赤い髪留め、ツインテールを見かけたのです。


「あっ」


思わず声を漏らすと、ゼンラサンが ”キュキュ”と 大げさな音を出して足を止めてくれました。


「何か見つけたのかね!お嬢さん!」

「いえ、多分友達がそこに居たんです……ってそれより、降ろしてもらってもいいですか?」

「むむ、もうよいのか?ならば、降ろすとしよう」


ゼンラサンの背中から降りると、初春らしい、肌寒い風に吹かれます。

ぽつぽつと振る小雨も冷たいです。


「さむ……」


ほんの少し、ゼンラサンの背中の上が恋しくなるのが不思議なものです。







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