#8 大蛇
あぱー
※割り込まれました(19/02/11)
商人の指差す先には何やら猛烈な勢いで馬車がこちらへ向かってきていた。
そしてその後ろから何やら大きな蛇のような──あれって多分、というか絶対魔物じゃないか。
「あぁあ、私らも逃げましょう!!」
商人は大慌てでくるりと踵を返した。
馬車というのは意外と小回りがきくらしい。
「ありゃ砂漠付近で暴れ回ってるって噂のナーガですよ、なんだってこんなところに。」
振り返って様子を見るとかなり距離のあったはずのそれは後ろの馬車に追いつきそうなほど迫っていた。
「後ろの人たちが危なそうです、止めてください!」
「何言ってるんですかい、私らも逃げ切れるか怪しいってのに。」
それなら尚更どうにかしなくちゃいけないじゃないか。どうやら商人は俺が魔法使いだと言うことを忘れてるらしい。
「飛び降りるしかないか…」
馬車とはいえかなりの速度が出ていたらしく、飛び降りて転がった俺は全身にあちこち怪我を負った。だがその痛みも間近で見る魔物を前には霧のように鈍く曖昧なものだった。
デカイ。圧倒的に。デカイ。
鎌首をもたげこちらを見下ろす姿に思わずたじろぐ。ふと横を見るといつの間にか破壊されたあの馬車が転がっていた。かすかに人の声が聞こえる。こうなった以上引くわけにはいかない。
砂漠に生息しているらしいから熱や炎には強いかもしれない、だとしたら──
水を集め圧縮、生成した砂つぶを混ぜる。
そして袋に極小の穴をあけるイメージで。
放たれた水は糸のように細い水流を作り少年の動きに合わせナーガを容易く両断した。