#7 出発
1話が短いんじゃないか
※割り込まれました(19/02/11)
「行ってきます。」
背負った重い荷物のせいか自然と背筋が伸びる。
とうとうこの日が来たのだ。
この村からセントレアまではかなり距離があるため都市から仕入れに来る商人の馬車に同乗させてもらう。
姿が見えなくなるまで身振り手振りで別れを惜しむなんて初めてのことだった。家族の存在の大きさに改めて気づかされた。
ガタゴトと不快に揺れる荷台で振りすぎて痛む右腕をさする。
9年共に過ごした家族と別れたのだから少しくらい感傷的になってもいいんじゃないか、そんな思いを商人の他愛ない問いかけに邪魔される。
俺は接点のない人との無理な会話が苦手だ。
気の無い返事を返す。
床屋に来たみたいだと、そう思った。
「いけないな。昔の俺に逆戻りだ。」
「え?何か言いましたかい?」
商人がこちらを振り向く。
「ああ、いやなんでも。」
ふと外に目をやると大きな青い花がたくさん咲いていた。遠くには高層ビルくらいの高さはありそうな大きな木やしずく型の門のような遺跡がそびえ立っている。
初めて見る景色だ。いつの間にかかなり進んできたらしい。
異世界に転生したのだという実感が久しぶりに俺を襲った。
高揚感が今までの陰鬱な気分を嘘のようにかき消す。
俺も大概子供っぽい性格だよな。もう23歳なんだけどな、あーでもこっちで9年過ごしてるからね32か?
いや最初の6年も足したら───
「なんでしょうかねあれ」
そんなどうでもいい自己問答は商人の一言によって遮られた。