#15 合格発表
国公立受験直前ですね
静かだ、あまりにも。
数日後合格発表の日。集まった人々はそれぞれにその瞬間を待っていた。
張り詰めた静寂に思いが混じり溶け合う。
この雰囲気は苦手だ。
腕の時計に目をやる。
この街に来て買ったものだ。魔道具の一種で所有者の魔力を持続的に使うことで正確な時を刻み続けるらしい。
だがそんな話が嘘に思えるほど針は一向に進まない。
辺りを見渡すとすでに泣いている者さえいた。
自分に自信がない。呪文の解読も大したことではないのではないだろうか。原理のわからない魔法は結局呪文を唱えなければ使えない。回復や強化魔法がいい例だ。
試験の時もそうだ。爆発の衝撃と焦りで終わった後の記憶がほとんどない。
考えれば考えるほど気分は落ち込むばかりだ。
「只今より合格者の発表を行います。」
アナウンスとともに空中に巨大な文字が映し出された。人々が一斉に空を見上げる。未知の魔法だ、僅かに気持ちも上を向いた。
「合格者は例年通り20名、特待生も同じく2名が選出されました。」
合格者が淡々と読み上げられ、受験番号と名前が空に浮かぶ。
その度に大小様々な歓声が上がったり上がらなかったりした。
一人また一人と選ばれる中にまだレオの名はない。残り2人。特待生枠だ。
少しの間を空けた後再び文字が浮かんだ。
「特待生1人目、ミラ・シェヘラザード」
おおと声が上がる。
あと一枠…どうにか…
打ち付けるように響く鼓動に心臓が耳にあるような気さえしてくる。
「特待生2人目、最後の合格者は──」
世界が再び静けさを取り戻す。
「 ──レオ 。」
俺だ…!足元から風が昇るような興奮が吹き抜けた。