#14 会心
ガバガバ知識が唸るぜべいべー
入場と共に9人がものすごい速度で駆け出す。
まずい、出遅れた。彼らのようにこの一瞬で見えなくなるほどの自己強化魔法をレオは覚えていない。
目に付いた小型のゴーレムに向かって走る。
あちこちから轟音が聞こえてきた。
岩石でできた無生物に炎は効かない。
ナーガを倒した水の刃を放つ。
パァンという破裂音と共にゴーレムは二つになって崩れ落ちた。
問題なく破壊できる、だが足りない。
道中であったゴーレムを切断しながらもっと奥の方へ向かった。
遺跡のようなところを抜けると木々が茂っていた、大きな池も見える。流石は最高峰の学園の入試だ、会場の完成度に感心してしまう。
そんなことを思っている場合ではない。
響いてくる音の数からして周りは各自10体近くは倒していると考えられる。
機動力の有無がここまで響いてくるとは思わなかった、逆転の一手が欲しい。何か広範囲で一掃できるような魔法があれば───
ふと先ほどの池が目に入った。
わずかな可能性にかけ手をかざし魔力を込める。
突如沸騰したかのように池がブクブクと泡立った。
「よし…!」
魔力の壁で瓶を作るイメージで発生した気体を集め薄いコイン状に圧縮する。
「これ、危ないよな…。」
空気の振動を調整し擬似拡声器で叫ぶ
「全員!可能な限りの防御態勢を!!!」
自分も魔力操作ができるところまで逃げた。
気体に火を放ちコインの上下の壁を残したまま側面を解放する。閃光が走り波紋状に熱波が拡散した。かなり離れた位置からさらに走って逃げていたレオも軽く吹き飛ばす。
魔力の壁や風魔法で相殺していたにも関わらず鈍い痛みが全身を襲った。
遅れて轟く爆音で耳が痛む。
再び立ち上がるまでかなりの時間を要したように思う。
水素爆発というのを舐めていたかもしれない。
辺りは変わり果てていた。
流石に他の受験者を超えられただろうか、肝心のゴーレムが倒せたのかはまるで分からない。
試験終了の音が木霊する中で呆然と立ち竦んだ。