第7話
本がいっぱいある!
うわぁ!
大きなドーム状の図書館に入るとたくさんの本がいっぱい並んでいた。中心には受付のようなものがあって1人の男性が静かに本を読んでいた。
「…あの、すみません。」
『…………ん?あ。すみません。お客さん居たんだ。えと。君は異界人?珍しいね。どうかした?』
「あの、字を学びたくて絵本とかってどこにありますか?」
『ああ、少し待ってください。』
お兄さんは本に適当な紙を挟んで案内してくれた。
案内先にあったのは小さな机と小さな本棚そして、小さな人形達。
『ここにありますよ。絵本を読み進めたら言語スキルというものが習得可能になります。読み書きはとりあえずできるようになると思いますよ。』
「ありがとうございます。頑張ります。」
ヴァイスに気になる本を選ばせて、私が読み聞かせる形にした。
ヴァイスが持ってきたのは、《いろんなひと》《ゆうしゃとゆうしゃ》《こいびととは》
……いや、3冊目何故それを選んだ?何故絵本のとこにあるの?…謎。
と、とりあえず《いろんなひと》から行こう。
このせかいには
いろんなひとがいるんだよ。
いろんなひとのなかの“しゅぞく”でちがうひとについておはなししよう!
せかいにはいろんなひとがいるんだよ。
まずは“にんげん”
にんげんはばらんすたいぷ。けんやまほうどちらもあつかえるしゅぞくだよ!
つぎに“えるふ”
みみがながくてあかるいみどりのひとみをしたしゅぞくだよ。ゆみや、まほうがとくいなんだ!えんきょりからのさぽーとたいぷだね!
つぎに“どわーふ”
せがちいさくておとこのひとはひげがながいんだ。おんなのひとはおとこのひとよりちからがつよいよ!はんまーや、おのをつかってまえでてきをたおしていくあたっかーだよ!
つぎに“まぞく”
まぞくはとくしゅなくせをもつんだ。まほうがとくいなんだ!めがあかいのがとくちょうだよ!えんきょりからのさぽーとたいぷだね!
つぎに“ようせい”
かれらはいろんなところにいるよ。まちにいたりもりにいたり…いたずらずきがたまにきず。すごーくちいさいんだ。おとなのてのひらよりちいさいよ。かれらもまほうがとくいなんだ!きれいながらすざいくもつくっているよ。
さいごに“いかいじん”
かれらはみためはにんげんといっしょ。あつかうぶきはかみさまによってきめられてるの。すきるもかみさまによってきめられてるの。すきるをあたらしくおぼえやすいしゅぞくだよ!だからばんのうたいぷだね!
これで“しゅぞく”のせつめいはおわり!
みんなわかったかな???
つぎは“せいかく”へんであおうね!
ばいばーい!
……なんか、わかりやす…かったような?
読みきったところで、ログに更新が。
ーースキル言語を取得しました。ーー
おっ。これでもう一度絵本を開いてみると漢字表記になってる。ひらがなばかりって読みにくいね。カタカナよりマシかな?
「ヴァイス、勉強になったね。」
キュ!
…あれ?お話はまだできないのかな?
「…残念。」
『何が残念なんだい?』
「わっ。びっくりした。」
受付の男の人が小さな机に肘ついてこちらをみて居た。
『あはは、なんかわかんないけど。心地よさを感じてね。ついつい、読み聞かせに聴き入っちゃったよ。』
「そうでしたか。…あ。えと、私コトリと言います。貴方は?」
『嗚呼、紹介遅れました。ここの館長を任されてるヘルシャと言います。』
え?!
「館長さん?!てっきり、バイトかと…すみません。」
『まあ、見た目若いし。わかるよその気持ち。なんか面白いことないかな。ここの本さっきので読破しちゃって…暇なんだよ。』
ここの本って…
「全部読んだんですか?!」
『うん。本なんかみんな読みに来ないし…君が初めてのお客さんだよ?』
そんなバカな。
『という冗談は置いといて、何かないかな?』
冗談かい。
あ。それなら。
「折り紙を教えましょうか?」
『ん?なんだいそれ?』
「紙を使って飾りを作るのです。」
『紙を使う飾り?……見せてくれるかい?』
とりあえずツルを折ってあげる。
目を瞬かせまるで宝物を見つけた子供のよう。
『すごい!一枚の紙が鳥になった!しかも動いてる!』
「あ、動くのは私の持っているスキルのせいです。普通は動かないものなんです。」
『それでもすごいや!作り方を教えてくれるかい?』
「はい、喜んで。」
この絵本広場を華やかにするために少しお手伝いしましょうかね。
まずはツルのおりかたを教えて時々様子を見ながら私は違うものを作る。
生き物じゃなかった場合、折り紙はどのようになるのか少し気になったのだ。例えば星は?
『…ここをこーして……よし!できた!!…完成した…よ。ふわぁ!』
ヘルシャの目がさらに輝く。
それは上に少し浮かんだ星のせい。
真っ白な星型の折り紙は時折くるくる回り、まるで踊っているよう。
『すごいすごい!もっとつくってくれ!』
「いいですよ。じゃあつぎはナイト。」
これは一枚では作れない。足と胴体をつくって剣ももちろん折り紙。
《ーー!》
声はないけど何か掛け声をかけ、次々に生まれるナイトが一番最初に作られたナイトの後ろに並ぶ。
とりあえず三体作りました。
紙がなくなっちゃったからね。
《《《ー!》》》
まるで生きてるかのように私の前に膝をつくナイト三体。
『凄い!ねぇ、何か命令してみて!』
「え?命令??…えと。回れ右、三歩進んで止まれ。」
というとその通りに動いた。
『おぉ!!』
「すごい。こんなこともできるのか…」
『コトリっ、馬は作れないの?』
馬か…
「やってみる。…ってあ。紙がもうないんだった。」
『んー?じゃ、僕がつくってくるよ!』
「あ、待って。私も作り方知りたいの。」
『もちろんいいよ!君には絶対必須だね道具は特にないけど、材料は木屑と水。木屑の入手はザナさんのとこがいいよ。タダでくれるから。それか、国の外にある木の表面を削れば代用できるよ。』
ザナさんだね。
『手持ちが少ないからついでにもらいに行こう。』
「わかった。……あれ?あ、いた。ヴァイスー!お外行くよー。」
ヴァイスは少し離れたところで本を読んでいた。1人で大人しくしていたことを褒めてあげないと。勉強も頑張っていたようだ。
キュウ〜!
本を片付けて抱きついてきた。
いつもは腕にしがみつくように抱きかかえられているのに今はコアラが木に抱きつくようにしている。
よくわからないがご機嫌だ。
頭を撫でてそのままいく。
まだ、ヴァイスは小さいから抱きついても重いわけでもないし。逆に軽いぐらい。
『では行こうか。』




