第4話
んーとりあえずどこに行けばいいんだろ?
選択肢は
冒険者ギルド、生産ギルド、武器屋、防具屋、そこら辺の民家、ぐるっと一周…
かな?
んーんー…
『うわーんうわーん』
!!
子供の泣き声に顔を上げ、どこかと見回す。
人混みが避けるように子供の周りを通り過ぎる。
ほとんどの人が見て見ぬ振り。
まったく。
私は泣いている女の子のところに向かう。
「どうしたの?」
『おじーちゃんがいないの。』
お母さんではなくおじーちゃんがいないのか。
「じゃあ、おねーちゃんと一緒に探そうか。」
『……うん。』
よしよしと頭を撫でて手を繋ぐ。
撫でるとすぐに泣き止んで笑顔になる。母の手最強じゃないだろうか。リアルにも欲しい。
ただ探すのも楽しくないね。そうだ!
「お歌歌いながら探そうか。声が聞こえたらおじーちゃんが見つけてくれるかもしれないし。」
『おうた?』
ここは無難にカエルの歌でいいかな?
「カエルの歌が〜♪」
『…!それ知ってる!きーこーえてくーるーのー♪』
「『ぐわっぐわっぐわっぐわ〜げこげこげこげこぐわっぐわっぐわ〜♪』」
『もう1回!』
「じゃあ、おねーちゃんはずらして歌うからつられちゃダメよ?」
『わかった!』
『カエルの歌が〜♪』
「…。」
『きーこーえてくーるーの〜♪』
「カエルの歌が〜♪」
『ぐわっぐわっぐわー』
「きーこーえてくーるーの〜♪」
『げこげこげこげこぐわっぐわっぐわ〜!』
「ぐわっぐわっぐわー!」
『「げこげこげこげこぐわっぐわっぐわ〜!」』
最後は2人声揃えて歌い切る。
そして笑う。
…側に笑顔のおじいさん。
…?!
『あ!おじーちゃん!!どこいってたのー?もう!』
『…悪かったの。できの悪い若者の説教に時間をかけてしまってな。』
何があったんだ。
『して、お前さん名前は?』
「あ、私はコトリと言います。」
『あ!おねーちゃんに名前教えてなかった!私はアイシャだよ!』
『わしはアイシャの祖父。ロルフじゃ。孫が世話になったの。』
「いえいえ、見つかってよかったです。」
『……ふむ。おぬし、これから用事か何かあるのかな?ないのであれば、時間をくれんかの?』
特に何をすると決めてはないので別にいいかな。
「いいですよ。なんの御用でしょう?」
『今日はの、アイシャがわしの仕事場を見学したいと言っててな。仕事をしている最中面倒を見て欲しいんじゃ。アイシャの。わしは仕事をささっと終わらせるからの。』
仕事を見学したいといってついて来ていたのか。面倒を見ているのは別に構わないといってアイシャと再び手を繋ぎ、ロルフさんの後ろについたいった。
ロルフさんは武器屋さんだった。
確かに、豪快そうなおじいさんだったし、よく見たら腕や足ががパンパンだし…全体的にマッチョですね。
そして、誰もいないカウンターの前に並ぶ客の列。全員正座である。いや、何があったんだ。
「あ。オヤジ!早く武器くれ!」
『……次喋ったら今日は店を閉めるぞ?』
その一言で、ロルフさんに向かって怒鳴ったプレイヤーは周りに正座していた人たちに睨みつけられて黙る。
『ささっと終わらせるから、アイシャはコトリと遊んでいてくれるか?』
『えー。武器作るとこ見たいー!』
『安心せい、コトリの武器を作るときに見せてやるわい。』
「え!作ってくれるんですか?」
『それがお礼じゃ。2人はそこの机があるところで遊んでなさい。』
そう言うと奥に入ってカンカンカンカンと、鉄を打つ音が響き出す。
カウンター向こうには全員正座で待機するプレイヤー。
カウンターの中に入っていいと許可された私とアイシャ。アイシャはお絵かきの準備を始めたが、私、少し気まずい。
そんな空気もすぐになれるんだけど。
アイシャは花を書いたり、空を書いたり、いろいろ書いてる。紙は自由に使っても良さそうなので、正方形の折り紙サイズを作っていろいろ作って見た。
それを途中から食い入るように見だすアイシャ。
アイシャに鶴を折って渡してあげる。
『すごーい!鳥の形になった!』
「じゃ、次はお花を作ってあげよう。」
保育士をやってると折り紙が楽しくてついついいろいろ作って見たくなって自作で考えたりするのだ。
『かわいー!』
真っ白な紙で作ったので真っ白な花だ。そしてこれを使って…
「このお花に色をつけてあげて?」
『…!うん!!!』
絵に描いたようなお花畑にするためにせっせと作る。
アイシャはいっぱい塗る。
とりあえず机の上はお花畑にしてやった机の周りもすこし…散らかしてしまった。
『お花畑ー!』
喜んでくれて何より。
『おぉ、紙細工は初めて見るのぅ。』
「あ。すみません、散らかして。」
『よいよい。もう少し待ってな。』
ロルフさんが奥から出て来た。そして、武器を並べる。綺麗な剣から大きくなんでも壊しそうなハンマーまで…
作るの早くない?!
折り紙折ってだだけでそんなに時間経ってないはずなんだけど…
『さて、欲しいものをさっさと決めてさっさとでてけ。店の中では静かにしろよ?わかってるよな?』
正座を解いて武器を静かに見定めていき、次々と買っていくプレイヤーそして静か退出していった。
『終わったの。じゃ、アイシャ、コトリ奥においで。』
催促されたので、アイシャとともに奥に行く。
と言うか入ってよかったのだろうか。私部外者じゃ…
『さて、コトリは何が欲しい?』
はっ!武器かぁ。
「それがですね。あんまり想像ができてなくて…いいのが思いつかないと言いますか。」
『ふむ。職業はどうなっとる?』
「テイマーです。あ、紹介遅れてますね。この子はヴァイス。最初に契約した子です。」
「キュ!」
ずっと抱っこしてたからぬいぐるみと間違えられてたりしそうだが…
『………のぅ?その子供のドラゴンどこで契約した?』
「えっとですね。この世界に来たとき、山の上に送られまして、そこに偶然いた大きなドラゴンの…えと、龍王さんに急にこの子を任せると言われまして…」
『やはりあいつの子か。はぁ。』
あれ?
「お知り合いですか?」
『嗚呼、預かるときに何かもらわなかったか?』
「通信石というものをもらいましたけど…使い方わかんなくて。それに、仕事中だと悪いし…」
『すこし貸してもらえるか。』
「あ、はい。どうぞ。」
アイテムボックスを操作して手元に出し、ロルフさんに貸す。譲渡ではないから大丈夫のはず。
『この通信石に触れて使うと念じればいいだけじゃからな。そうすれば……ほれ。こんな感じで相手の顔が映る。』
【んあ?なんで、お前が通信石を持ってんだ?】
『異界の子に貸してもらっとるんじゃ。ファランを出せ。』
【いーぞー。ファランー!!ロルフから通信入ってんぞー!】
【あなた!いいから!あの子はどこにいるか言いなさい!!】
【げ。】
『やはりかの。ファランや、落ち着いてくれ。お前さんの息子ならここにおる。無事じゃ。』
何やら急展開。
「キュー!」
【!!!私の子!大丈夫?!本当?!今迎えに行くからね!】
「キュ?キュッキュー!キュキュキュキュッ!」
【…………ぇ?契約した?お父様にその人に預けられた?会うのはいいけど帰らない?成体になるまで…帰らない?!】
【……ヤバ…ヒッ】
龍王さん…お母様に何も言わず預けたのですか…?!
「あ、あの!わ、わたしコトリと言います!その、龍王さんにお子様を預けられたものですっ。」
【………あら?…女の子?】
「は、はいっ。」
石には龍王さんの顔だけが映り出されていたのだが、急に龍王さんが消え、銀髪で綺麗な女の人が現れる。
【………………………いい。】
「へ?」
【可愛い!!何この子!保護欲が保護欲が湧いてくるわ!今はロルフのところにいるのよね!ちょっと待ってて!今すぐ行くわ!】
「え、えと。」
【あなたは留守番よ!!来たら許さないからね!!フン!】
【えぇー!私も行きたいぃー!ギャァ!!】
【フフフッいい度胸ね?……コホン。じゃ、とりあえず切るわね!】
「あ。はい。」
ブツンと石は元に戻る。
『……騒がしくなる前に武器を決めるかの。』
「ですね。…テイマーは何がいいのでしょう。」
『普通は杖か本じゃな。他には短剣も良いな。』
杖か本か短剣ですか…本はちょっと気になりますね。短剣は予備の武器として持っておくのもいいかもです…。
「あの、本ってここでも作れるのですか?」
『うむ。可能じゃ。中身は何もな書いてない紙になるし、束ねた後金属で固定するだけじゃからそう難しくも無い。』
「金属をつける?では、打撃攻撃も出来るのですか?」
『できるぞ。』
「あ。各武器のスキルとかいるのでしょうか?」
『おぉ、いるのぅ。武器スキル何も持っておらんのか?』
「はい。魔法はあるんですが…」
『……ふむ。…そうじゃ!ここで覚えればいいんじゃ!』
「えぇ?!できるんですか?!」
『うむ!それとな、武器と呼べる武器は小鳥は持たない方が強いかもしれん。だから、サブのみ用意しよう。』