第40話
更新しました(・Θ・ゞ)
フレグランに行くまでの間、お店はノルアが頑張ってくれるとなった。ホームを使えばすぐに戻れる。在庫切れの心配もお店の倉庫とホームの倉庫を繋げたので問題はないだろう。
「フレグランは西にあるんだっけ?」
『はい。そうです。』
「準備は大丈夫?騎士の人たちとか」
『ええ、抜かりありません。長旅になりますが、コトリ様達は大丈夫ですか?』
一応行くメンバーは私とシャールとシャークとカイルってなってるけど。
なんか持ってくものとかあるっけ?
紙の材料の木材は結構買っておいたし…折ってない紙もある。
食料は…少し買っといた方がいいかな?
「食料買ってから行く感じかな?他のみんなは?」
「食料って買っても意味ないだろコトリさんスキル持ってんの?俺持ってるから気にしなくていいよ。」
「おっ、カイル持ってるの?じゃ、よろしくお願いするよ。」
豪華な馬車を護衛するのはいいのだけど。私が中じゃ意味なくないかな。他の人達は外なのに。私も乗馬体験したいです!
「騎乗スキル持ってないと危ないから。次の休憩場所まで我慢してっ」
シャールが教えてくれることになってますが、私以外乗れるってところを見るとやはり先輩感がある。シャールもカイルもシャークも、トッププレイヤーなんだよなぁと改めて感じた。
馬車の中はのほほんとしてて折り紙教室が開かれている。ナイト達の装備を作って見たり、ヴァイスのためのクランバッチなるものに手を出して見たり。
まあ、バッチではないのだけど…
『コトリ様、さっきからずっと紙をひねっていますが…何を作っているのですか?』
「コレはね、紙紐を作ってるんだよ。」
『紙の紐ですか?』
「そう。コレでミサンガを作るの。」
『みさんが?』
「腕輪みたいなものだよ。」
しばらく巻き巻きと巻いていると細いけど頑丈な紐が完成する。紐を作っていて考えついたアイデアを形にするため、編み始めるが、フレンやサラは流石に飽きて来て、眠たそうにしていた。
「少し眠ったら?」
『うぅ、すみません…』
『はぅー』
2人が眠った頃、外では戦闘が始まっていた。
「…結構来てないか?」
「コトリさん無しがこんなに辛いとは!甘え過ぎてたかな。」
「経験値に変わりなさイ!」
3人と騎士達は押し寄せてくる魔物の対処とその勢いに乗じて乱入して来た山賊とやり合っていた。
『くっ!いかん!』
馬車の方に一匹魔物が抜けて行く。
「あっ!」
シャールがそれに気づくが詠唱が間に合わない。
魔物が馬車に向けて攻撃を仕掛けようとした瞬間。
風が吹き荒れ、魔物を切り刻んだ。
「え?!」
「どした!つっ。シャール!先にこっちだ!」
「あ、うん!」
外の状況を伺い視線を向けたら魔物がいた。そして、馬車の上に配置した緑魔法使いがソレを落とす。
「大変そうだなぁ。手伝わせよう。」
馬車の中で立ち上がって、天井を二回叩く。
馬車の上に配置されたナイト達の手には弓矢セットが3つ。
矢が尽きたら知らせるように指示してあるのでおそらく大丈夫だろう。さて、早くヴァイスのために心強いお友達作ってあげないと。
サラやフレンはお姫様と王子様だ。そしてヴァイスもソレは同じ。私がいない時、守ってくれるのがミサンガだけだと心もとない。だから、ナイト達に匹敵する、強い友達を作ってあげないと。
フレグランの近くにヴァイスの故郷があるのなら少しそこに立ち寄って、王子暮らしも経験してもらわないといけないと思う。いつかは王になるのだから国のことを知っておかなければならないだろうから。
どっちが遠いのかはわからないけど。
しばらくすると外は静かになって、ノック音が聞こえる。2人が起きないように私がこっそり確認する。
「休憩します?」
『……見抜かれたか。そうしようかと提案しようとしたところだ。』
「わかりました。」
座りっぱなしというのも辛いだろうと眠っている2人に外の空気を吸わせるため起こす。
2人を起こして外の空気を吸わせる。
机と椅子とお茶やお菓子を出し始めるメイドさん達。テキパキしてる。
馬車を操作している人も弓を置いて一息ついていた。
少し話して、休憩がてら私が交代することにした。
「コトリさん、馬車操作できるんですか?」
「メルさん助けた時に覚えたんだー。」
「にしても、まさかナイト達が馬車の上で待機してたとは…」
「……気づかなかっタ」
ナイト達は小さいからいい護衛してくれるんです。ナイト達にも休憩を指示。
矢が少なくなっていたので補充しておく。
魔法使いは魔力が減ったのか動きが鈍い。
魔力の回復は徐々に回復するしか手段がないから手元に呼んでよく頑張ったねと撫でる。
倒した魔物、捕まえた山賊は次の街で売り払ったり、引き渡したりするとのこと。
「山賊…ガイさん元気かなぁ。」
「あー…コトリさんお別れできてないもんね…」
それとなく話していると、フレン達が混ざってくる。
『ガイという人がどうかされたのですか?』
『山賊なのですか?』
「山賊ではなかったんだけど強い人なんだよ。大樹の守り手っていうお仕事してたの。」
『大樹?……それ、世界樹のことではない…ですよね?』
「……?世界樹…とは違うんじゃないかな?」
「うん、世界樹って一本だけど、大樹って5本あったし…」
『……世界樹はもともと五本だと聞きました。それが1つになって…今の世界樹になったのです。』
「「え。」」
え。あれ?待てよ。それなら、植木鉢に植えて育ててる植物って……大事に育てよう。元からそのつもりだけどより一層丁寧にしなくては。
「……まあ、それはエルフの国に行ってからのお楽しみにしておこう…」
「そ、そうだね。……てかアレって過去ステージだったんだ…ならガイさんはいないのかな?」
「そうだね。ガイさん達は流石にいないかも。樹霊様はいそうだけど…」
五体の樹霊様も1つになっちゃったのかな?虹色樹霊様なのかな?
『その、同一人物かはわかりませんが。守護者ガイという人はいますよ。彼は確かエルダーエルフという種族なので、千年は生きられますから。』
「…そ、それはそれで再会できるからいい、のかな?」
まさかの事実。ガイさんにまた会える。他の人たちとかはどうなんだろ。てか、エルダーエルフという種族なのか。そういえば人のように見えたけど、耳はとんがっていたなぁ。
長い耳ではなかったけど…。でも、エルフなのに強いよね…エルダーエルフとエルフの違いはそこなのかな。
楽しみが1つ増えたところで、休憩も終わりまた馬車。
次の街に着くまでは私が変わった。
街について宿を探して街の探索班と休憩中の護衛班と別れることになった。
今度こそ守るっと意気込むのはシャールそれの連れ添いするとカイル。ということで、私とシャークが探索班になった。
「…」
静かに後ろを歩くシャーク。
この組み合わせってどうなのだろう。シャークと組みたくなかったとかそういうのじゃないよね…。
少し話しかけてみることに。
「シャークって、寄り道したいって言ってたけどどこ行きたいの?ここじゃない?」
「…暗殺ギルドというのがあるらしいのでソコデスネ。」
「なんとなく察したんだけど。そこに依頼するとかしないでよ?」
「さァ?ソレはどうでしょウ?」
…するんだね。するつもりなんだね。もー。
ゆっくり旅をさせておくれよ。
「…アナタは何か手に入れたいものでも?」
「木材しかないよ。」
「…無欲ですネ」
「私にとって木は防御にも攻撃にもなりますから。」
「…」
といっても、珍しい木というものはなく、買い足すことはしませんでした。その代わりに綺麗な宝石を見つけます。
「わぁ、綺麗ですね。」
『冒険者かい?これは魔道具の要となる魔石だよ。色によって属性があるんだ。小さなものはあまり役に立たないから、飾りや装飾によく使われるよ。1つどうだい』
魔道具の要…赤いのが高いのは燃料になったりもするからって需要があるからだそうです。魔道具ですか…面白そうですね…。色は赤、青、緑、橙、紫、紺色、白と黒、全属性でした。
あまり大きくなく、同じぐらいの大きさの1つずつ…あといくつか記念に買っておきます。
「何かするんですカ?そのぐらいの大きさダト、何もできませんヨ」
「さあ?どうだろうね。」
「ムム」
シャークの見た目は赤い目に銀髪。なので白と赤それと紫は追加での組み合わせをミサンガに組み込みます。私しか狙わないという約束を守っているし、普通のミサンガだけどあげるのも悪くないでしょう。何か起こしたら取り上げることとしましょう。でも万が一ということもあるかもですね…どうしますかね…
ミサンガにくくりつけていい飾りになります。
ーー細工スキルを取得しましたーー
宝石を組み込んだからでしょうか。
これから生まれるこの子にも使いましょうね。
どうにか1つにまとめて、心臓部分にしましょう。ここは破壊されないようにと頑丈に。
そして、編み込んで行く最中に絡めて…
「ソレはなんですカ?」
「ヴァイスの友達作ってるんですよ。」
「…ハイ?」
尻尾と下半身…はなんとかできました。んんの手前にあるディアートというヴァイスの故郷に着くまでに完成させたいですね。
肌身離さずに持ってもらうために、小さくなったり大きくなったりできないかな?とか考えて作ってます。ミサンガについているアクセントならそんなに気にしないでしょう。攻撃するときにも邪魔にならないようにできたらいいですね。
あれこれと考えて、作り続けます。
馬車の中で、休憩中に木陰でも。
途中からシャールがつきっきりで見てきます。
「何ができるんだろ」
「もう形はできてますよ?」
「そう意味じゃなくて、運営の敵になるようなどんなアイテムができるのかなって。」
……そういう意味ですか。それは考えてなかったですね。無意識って怖いですね。
でもできちゃうので、許してもらえませんかね。
破壊不可なのは心臓部分だけにしてますし…あとつくとしたら炎耐性とかじゃないですかね?水もつくかもですね。
まあ、できたらわかりますよね。
「あ、もう完成したものの1つシャールにあげますね。コレもクラメンのみです。」
「え?私にもあるのっ!なんだろう?」
まあミサンガなんですが。
できたものはこちらです。
友情のミサンガ
紙でできた紐を編み込んでできた軽くて丈夫なミサンガ。小さな魔石が一緒に編み込まれている。
※シャール専用
母の祈り効果…
火に強く、水も弾き壊れにくい。
一度だけ死ぬのを身代わりにできる。
魔石の効果…
紫魔法ショックを1度使用可能。
「…」
「手加減してますよ?」
「……いや、うーん。まあ、そうかな。バッジよりは…マシ?」
魔石を組み込むことで、その魔石の属性魔法を1つだけ…さらに一回だけなら使えることが判明。
カイルには緑魔法ウィングと橙魔法ストーンウォールのどっちがいいか聞いて、ウィングの方を渡しました。
「装備充実してるからもういいからな?」
「これ以上はダメなきがするから、装備以外の…飾りとかにしよ?ほら、ホームまた寂しいじゃん?」
そんなに言わなくても作りませんよ。
…………プレイヤーには。
「……」
話に混ぜて欲しそうな目でこちらを見ているシャーク。
「あ、シャーク。」
「ちょ、まさかあいつにも渡すとか言わないよね!」
「コトリさん?何を渡すか見せてからな?」
そんなに警戒しなくても、ただのミサンガです。
手作りのミサンガ
紙紐で作られた軽いが丈夫。
器用値+1
※シャーク専用
「「……短っ」」
「コレが普通なのでしょう?こうしようかとか考えず、編み方を思い出しながら作ったので母の祈りはつかなかったです。途中からこれシャークのでと思ったぐらいで。」
コレならいいんじゃないかなっと2人の許可をもらったのでシャークに渡す。
「一応貴方も私のクラメンです。証は必要でしょう?」
「……標的が気を使った結果デスカ」
「最近はおとなしいですからねぇ。ご褒美です。」
「……」
情報収集中ですからねと受け取りつつ装備するのを見送る。
「……ナンデスカコレ」
「……ふふふっ。」
「え?何々?!」
「なんか色が変わった?」
「コレで監視しやすいです。」
「〜っ。」
他所で本当にPKしてないか怪しいですからね。違反したらちょっと痛いですよ?
審判のミサンガ
このミサンガに込められた約束を違反した場合、ショックが発動する。製作者に位置がわかるようになる。製作者の許可なく外せない。
「……コレ、イベントの時発動したりしないですよネ」
「その時は私が許可するので大丈夫ですよ?」
「…」
「首輪だね」
「…あの内容がここまで変わるか。」
「偽装ってスキル取れたんですよね。完成したら。」
これなら運営さんも騙しに行けますよね!
まあ変なものを作る気は無いですけど。
「……上に修正を申し込みマス」
「えー?」
変なもの作らないのに…
「もう装備は作りませんて、それにしても。寄り道は良かったんです?」
「…もう済ませましタ」
いつのまに…。
まあいいです。
「仕上げは明日します。今日はここで野宿ですかね。」
『うむ。少し森に入って野宿の準備に入る。』
「じゃあ、水場探してきますね。」
『頼む』
この水場探しは私の役目って感じになってます。ツル達を3匹放して水を探してもらいます。見つけたら私が騎士の人から預かっている木の桶などに溜めて水を確保して持っていきます。
「……今日は少し離れてるみたいですかね。」
馬車にはナイトを残してきました。何かあったらいけないからですね。ツルが3匹とも帰ってきて、私を案内し始めます。
「ここですね。」
早く水を注いで…
「……ん?」
スキルが反応して、目の前の川は危険だと言います。黒い川ですね。こういう時は危険眼がとても役立ちます。
問題は上流でしょうか。こういうのは1人で行動しないほうが怒られないですよね。報告に戻りましょう。
桶は使わず瓶に入れます。
「戻りました。」
『水は確保できました?』
「それが、毒か何か混じってるようで、飲まないほうがいいかと。上流の探索は報告してからにしようと思ったのですが…」
『エ。……そうですか、水はなくてもまだあります。探索はお願いしてもいいですか。ディアートに着くまでにはもう一度休憩を挟まないと馬が持たないと思うので、元凶を潰さないと水が持つかどうか。』
「わかりました。」
シャール達には護衛をお願いして、私だけで行こうとしますが、シャールが付いてくると言います。
「すぐ戻ってきますよ?」
「ストーリークエスト、コトリさんばっかりに任せて悪いですから。」
「そんなこと考えてないのですが…まぁ、行きましょうか。」
川を辿って上に来ました。すると、大きな石の上にガラス瓶が倒れて石を伝って川に流れていました。
「意図的に置いたとしか思えないですね…」
「そうですねぇ」
山賊の残り?
そうでもなさそうですね。
「シャール、杖を出して」
「…居ますね」
警戒たっぷりの私たちの目の前に現れたのはタレ目の綺麗な女性。
『お待ちください。私は敵ではありません。ここに連れ去られて困って居たところなのです。』
「連れ去られて?」
『はい、殺し屋に狙われて…付き人達は皆殺されてしまいました。』
警護が必要な人という感じでしょうか。
確かに裸足で、服も汚れていて、頭もいい飾りをつけていますが乱れていますね。んー。
警戒解ける段階ではありませんが保護はしましょう。
「このガラス瓶の中身、まだ残ってますよ。コトリさん。回収して戻ります?」
「この解毒薬って今作れますか?作れるなら作って流したほうがいいと思うんですが。」
「あ!そうですね。じゃ、今作りましょう。少し待ってください。」
「作ってる間は任せてくださいね。」
川から少し離れた岩に背を持たれて薬の調合を始めます。
その間、保護した彼女の話を聞きます。
「殺し屋に狙われているのは何故なのか聞いても?」
『…私はとある国の王族なのです。純血ではありませんが王の子供。王位継承権を望まないと言えなければ狙われ続けるのです。』
どこかで聞いたことのある話ですね…
「どこに向かわなくてはならないのですか?」
『フレグランという国です』
目的地一緒ですね。それで、付き人達は殺されたという彼女は保護したほうがいいのでしょうか。彼女がガラス瓶を置いたという確証はありませんが危険人物であることに変わりはありません。フレンやサラに話を聞きたいですが、連れて行って大丈夫なのでしょうか。
悩んでいると薬ができたと知らせが入りました。
「流していいですか?」
「はい、いいですよ。」
『…あ!危ない!』
「へ?」
彼女があからさまに薬を狙って動いたので、シャールの足元に設置していた花達に指示を出して捕まえさせます。そして、それと同時に仕掛けて来た殺し屋さんの対処もします。
『きゃあ?!』
『チィ!』
「花達、彼女を離さないように。さて、あなた方はどちら様ですか?」
短剣を構えて、森から出てきた数人と向き合います。
『は、離しなさいっ』
「動くならもう少し信頼性を確保してからにしてくださいね。」
「コトリさんかっこいー。」
「どうも」
『フンッまあいい、成功するとは思ってねーからな。短剣の女を殺せばあとは楽って情報だ。やっちまうぞてめーら!』
殺し屋というより、ゴロツキの方が正しいのではと思ってみたり。
ナイト達を置いて来たのでシャールを護衛しながら短剣で戦うしかなさそうですね。試作段階の紙はまた今度にしましょう。
敵の攻撃を避けながら動き回ります。
私を倒さない限りシャールには近づかせません。
『女1人に何やってる!後ろのを優先しろ!』
『抜けないんです!全部かわされます!』
1人だけ、異様にしつこく私を狙う人がいますね。フードを深くかぶってわからないようにしてるつもりなんでしょうが…
仕方ありません。1人先に動けないようにしておきましょう。
一度シャールのところまで下がり、シャールにはごめんと伝えつつ、シャールに攻撃が当たるように仕向けます。すぐにミサンガが発動し、ショックが彼に使用されます。
「い”」
「シャーク、貴方の相手は後で。」
「えっ!ちょっ!シャーク?!」
さて、残りを片付けましょう。
短剣を投げつつカードも一緒に投げます。
短剣で狙うのは手元。カードで狙うのは防具。
剣を落とされ、防具が外され、戸惑う彼ら。
『ぐっ?!』
カードはそのまま全員の防具を切り刻み、短剣回収に突っ込んだ後、柄で首を殴打。
確実に1人ずつ意識を刈り取ります。
リーダーらしき人はローブをまとい直して森の中に逃げます。
それを見逃さず、ツル一体を監視につけさせます。
残りの部下らしき人々は気絶した順に花達が捕縛。
「ふぅ」
「コトリさんマジカッコいー!」
「シャールの援護助かりました。」
「どういたしましてっ」
「……それにしても。」
「カイル1人で大丈夫かな?早く戻ろ!」
「そうですね。」
シャークはイベントに協力する気はゼロなんですかね…。まったく。
川に解毒薬を使用してカイルと合流しましたが、こちらに奇襲はなかったみたいです。
「……急にいなくなったと思ったら。」
「殺し屋と組んで倒しにかかるのはいいですが、連携する気ないのに殺し屋連れてこないでくれますか…。」
「……」
『……コトリ様、彼女と話をしたいので拘束を解いてもらえますか?』
あ、そうでしたね。
すぐに口元を緩めるように花達に指示。
『愚弟、早くそこの者に私を解放するよう命じなさい!』
『お断りします。リーズ姉様。』
『このまま、私たちを狙った犯罪者としてフレグランに連行いたしますわ。』
『ハッ。何を証拠にいうのかしら?どこにも証拠なんてないでしょ!』
『殺し屋と共にいたという証拠で十分です。それと、リーズ姉様…付き人達はどうされたのです。』
『あんな役立たず知らないわっ』
「最初に出会った時は殺し屋に殺されたとか言ってたけど。」
『……リーズ姉様、貴女はこの王位継承権争いの前にお父様から頼まれた領地で悪事を働いていたと噂で聞きましたが…事実でしょうか。』
『知らないわね』
『……わかりました。その件についてはまたにしましょう。コトリ様、ディアート帝国で馬車を購入したいのと色々確認したいので少し滞在してもよろしいでしょうか。』
私に許可もらわなくてもいいんだけど…
「雇い主はフレンとサラだから2人の意見に従うよ?」
『ありがとうございます』
街に着くまでは私の花達で拘束したまま宙に浮かせて進むことになった。
下手なことをすれば高い場所から落ちて怪我をするのだから暴れに暴れられないだろう。
シャークはカイルに見張ってもらっている。
「……」
「キリキリ歩け」
馬の上ではなく歩かせられているシャーク。まあ逃げることはないんだろうけど、拗ねているという感じですね。
「…このミサンガさえなけれバ…」
「なくても、気絶させてます。倒したら街に戻ってしまうでしょう?同行したいならイベントの時ぐらいはおとなしくしておいてください。」
「ムゥ」
それにしてもこのお馬さん、ゆっくりなのにそんなに振動がなく進んでくれる。シャールに教えられて乗り方を教わってからずっとだ。緑の手のおかげかな?それともそんな疲れってない感じなのかな?乗馬すると疲れるって聞いたことあるけど…そこまでは再現されてないのかもしれない。
ディアートに着いたらとりあえず鍵を使ってチェックポイントを登録します。フレイアランのようなことはもう嫌ですから。
ディアートに着いたのでヴァイスを呼び出して、連れ歩きます。故郷に帰れて嬉しそうですね。
『あの女何者よ。愚弟』
『はい?コトリ様は僕たちの命の恩人であり、強い護衛です。』
『騎士達も信頼を置いていますし…お父様もお気に入りです。』
『つっ。お父様もですって?!ディアート帝国の王子ともあんなに親しげに…』
『ヴァイス様はコトリ様と契約しておられますから。』
『成人したら契約は切れますけど…切れても再契約しそうですよね…』
『ヴァイス様が再契約する時は僕らも契約して貰えばいいのですっ。』
『あぁっ!いいアイデアですわお兄様!』
楽しそうな兄妹の会話を聞いて更に顔をひきつらせる。人と人との契約といったら主従契約となる。ディアートの龍王子はまだ未成年だとしても位は王族。その王族と主従契約を結び、なおかつ、今の話を聞いていれば主人と従者の関係はコトリというあの女が主人で、従者が龍王子となる。頭が高いにも程がある。
まして、愚弟や愚妹まであの女の下につきたいという。何がそんなに惹きつけているのか全然わからない。もしこんな2人に王位継承権が移ろうものなら、あの女はドワーフの国と、龍人の国を制したも同然…そんなことはさせない。
『……』
すごく彼女が睨みつけてくるのですが、怖くもなんともないのは失礼でしょうか。というか、弟や妹にあたる子達を殺そうとしたのにあんなに偉そうにしてるのでしょう。
キュ。
ヴァイスが龍の状態で私を呼びます。指をさした方向を見ると、ファラン様とゼクシア様が、走ってこっちに来ているではありませんか。
「わぁ?!」
反射的に馬車に隠れます。
私が隠れたのを不思議そうにシャール達が見て来ますが、2人の来ている方向を指差せばすぐに納得してくれました。
「モテる子は辛いね。コトリさん。」
「シャール、冗談言ってる場合じゃ…」
『コトリ!よく来た!!』
『お城案内してあげるわっ』
『しばらくここに滞在するよな?』
『フレグランに急いで行かなくてもいいのでしょう?つけばいいんでしょ?』
滞在するのはいいのですが、それはですね?私の手から手を離してからにしてもらえないですか?もう離さない的な雰囲気があるのですが?!
そうだ!
ここはフレンとサラに急ぎなのですと言って貰えばいいのですね!と期待した目で2人を見るも…
『私共は少しこの国に滞在して姉のやったことを確認しなくてはなりません。なのでしばらくはここにいます。コトリ様もヴァイス様の故郷ですし、滞在したいと思っていますよね。』
『ゆっくりしっかりと調べて帰らなくてはならないのでコトリ様お手数かけますが声をかけるまでここに滞在していいでしょうか?』
「アハハ、雇い主さんはサラ達なのだからいいのですよ〜…」
「……どんまい」
国のための滞在なのです。王位継承者は忙しいのですよねっ。(遠目)
キュー!
ヴァイスが活躍してくれたおかげで私は2人の手から解放されました。ありがとうヴァイス〜とナデナデしてあげます。
しばらくといっても五日間ぐらいだと2人が言うので五日間か何かあったようなと思い出そうとする。
「あ!コトリさん!襲撃イベントがあるんだよ!参加しないと!」
「あぁ!作品展の準備しないといけないんでした!!」
『『作品展?』』
キュ?
シャールのいうイベントとはいつなのか聞くと完全にかぶっていました。
「申し訳ないんですがその日お仕事入ってるので一日中できないのです。この五日間はこっちに来れないと思います…」
「そっかー…お仕事なら仕方ないか〜」
「2人は参加してもいいんですからね?」
「レベル上げしたいってのもあるし参加はするつもりだけどどこになるかだな。ここ以外なら参加するのは面倒だし観戦だけにするかな。」
襲撃イベントというのは定期的にどこかの国の偉い人がターゲットにされてその人を守るイベントなのだそうです。
ターゲットの強さによって難易度も上がるのだとか。私は参加できそうにないのでまた次回期待しておきましょう。
キュー…?
「ごめんね、ヴァイス。明日からは私こっちに来れないからファラン様とゼクシア様や国の人達と遊んでくれる?」
キュー……
すんごく落ち込んでしまった。なんとか元気にならないだろうか。あ。そうだ。
「私のいない間、コレを私がわりにしてくれる?お守り。ヴァイスも2つだよ。」
指輪とミサンガをあげる。
キュー?
「こっちのミサンガは、腕にこうやってつけるの。クランバッジをつけられないからそのかわりだよ。遅くなってごめんね。あと、コレは首にかけられるようにして…コレでヴァイスの側にずっといる。…この指輪はヴァイスがもし怖い目にあって助けて欲しい時にコレを持って私の名前を呼んで。私は来られないかもしれないけど。とっても強いおまじないかけてあるから。守ってくれるよ。」
キュー…
「終わったらすぐに会いに来るからね。」
……キュッ。
名残惜しみながら私はゲームを五日間お休みした。
「……金剛さん、笹川さん、貴方達も不参加ですよね?」
「い、いやぁ…大きいクランのマスターだし…」
「ア、ハハハ…」
「禁止ですからね?」
「「い、いや…」」
「……先生方〜2人が親御さん達の楽しみにしておられる作品展手を抜くそーです。」
“はい?”
般若召喚ですっ!
「「ヒィッ」」
2人は多くの先生方に囲まれて怯えております。ちゃんと言葉で言ってもらわないといけません。何をするのかお伝えします。
「ゲームするそうです」
“へぇ?”
「「ごめんなさい!やりません!参加しないっていって置きます!!」」
あまりの圧力に耐えきれなくなった2人はみなさんの前で誓います。コレで破ったりなんかしたら…あとが怖いですね。
まったくあちらを楽しむのはいいですが仕事は真面目にっ!迷惑かかることはしないでくださいっ。




