第17話
冒険…それはロマ…
「コトリさん、何浸ってるんですか?」
「……かっこいい始まり方しようとしたのにっ。むぅ。」
「何を言ってるんですか。」
呆れられた…
それにしても暇だ…
ガタゴトガタゴト…ただいまフレイアランに行く商人馬車を護衛するっていうクエスト受けたのだけど…敵とか、山賊とか全然こない…
『威圧は抑えているんだが…』
『何もこないわね。』
あなたたちのせいなのか、よくわからない状態だし…責めに責めきれない。
『まあ、この街道は他の地域よりは落ち着いていることも関係していると思いますよー?』
馬車を走らせる商人さんが声をかけて来た。
商人さんの名前はメルさん。
メルさんがいるところに近づく。
「メルさんって紙細工興味あります?」
『…ほう?なんですか?紙細工とは。』
すぐに商売人の目になる。メルさん。
「私、お金貯まったらマグナートでお店出す予定なんですけど…よかったら宣伝してくださいませんか?」
『物によりますが…どのようなものをお売りに?』
簡単なツルを折ってメルさんの周りをパタパタと飛ばせる。
『おぉ?!こ、これは!!凄い!凄いですね!絶対売れます!!私のところに何個かいただけませんか。宣伝します!あ、これはずっと動いているものなのですか?』
「宣伝ありがとうございます。ずっとは動かないです。動かなくなったら飾りとしてか、紙として使ってもらってもいいですし…」
『永久的ではないのですね。ふむふむ。』
「それと、作り手が私だけなので、1日売る数は制限されちゃうこともお伝えくださると嬉しいです。」
『…それは、増やすことはできないのですか?』
「動かないものでよければクランメンバーに手伝ってもらえますが。動くものは私の持っているスキルが関係してるのか…そのスキルの取得方法とかわからないので、増やすことは難しいのです。」
『……わかりました。そうだ。フレンド登録しましょう。そうすれば連絡もとれます。我々もジールという連絡ツールを使えばあなた方と連絡も取れるんです。』
そうなのか。
「では…これで。」
ーー商売人メルとフレンド登録しました。ーー
なんか、フレンドがゲームの中の人率高い気がする…気のせいではないよね。
『これでいいですね。他にも種類はあるのですか?』
「あ。あとは…花と…んー。ナイトは売らない方向にするから…えと。何がいいかな。」
『花と言うのはどのようなことができるのですか?』
「今作ります。ちなみに、ツルは持ち主の呼び声で手元に戻って来ます。あとひこうきも同じ効果ですね。」
『ひこうきというのもお願いします。』
「はいっ。」
花は色付きで作り直したもの。飛行機は真っ白な紙で作ったもの。
ひこうきはすぐに飛ばしてみせる。くるくると馬車の上を旋回。呼び戻して手のひら着地。
花はちょっとアイシャに協力してもらってアイシャをどこから生やしているかよくわからない蔓で高い高いする。
怪力だよなぁ。ほんと。
『売れますっ!絶対売れます!!!私以外の商人には言わないでください!こう見えて結構有名な商会のものなのです!見た目もよし、機能もよし!!コトリさん!今のうちに契約しておきましょう!そうですね、フレイアランに商会の支部がありますので、そこに行きましょう!!』
おお、なんかおおごとになった!…とりあえず勢いが凄すぎたので頷いておく。
『支部の者にも連絡入れておきます!いい護衛もいたもんだ!あはっはっは!』
『コトリー?お客さんよ。』
『やっとかよ。』
「じゃ、コトリ。やっちゃって。」
え。
「みんなやらないの?」
「だって、コトリの戦い方見たいからここにいるのに。」
「……ハーイ。」
メルさんに馬車を止めてもらって、アイテムボックスから馬とナイトたちを地面に下ろす。初参加の風の魔法使いは私の肩に。
『おぉ?!』
後ろでメルさんが騒いでる。
「ヴァイスは、悪いけど。背中にいて待機ね。」
キュ!
「さてみんな行くよっ。」
目の前に現れたのは赤い二足歩行のトカゲ。それが5匹。名前はフレアリザード。ちなみに、ナイトと、馬と、魔法使いにもあのバッジは作ってつけてある。だから燃えることのない戦闘人形と化している。
「ナイト達突撃してくる三体に先制攻撃!風の子は後方にいる敵に狙いをつけて風の刃の詠唱開始!!」
指示通りにナイト達は突撃。
肩の風の子も魔法陣を展開…
私も一緒に橙魔法の魔法陣をあと1匹が通過するであろう場所に展開。
ナイト達は馬とともにリザードの体を駆け上り首を飛び越える瞬間に一閃。その一撃により三体が光に包まれ弾ける。
風の子の魔法陣もちゃんと起動し、風の刃に切り刻まれたところで光になって弾ける。
そして、私の魔法陣も発動。下から尖った岩が出現。それに突き刺さり光になって弾ける。
…ふぅ。戻ってきたナイト達を腕や手の上に乗せて馬車へと振り返る。
「終わりました…よ…?」
「……なんでここに来ても一撃なの!!しかもコトリまで一撃じゃないのっ!」
『なんですか!今の!その腕のやつ近くで見せてくださいっ!!』
シャールとメルさんに詰め寄られたと思ったら、いつの間に後ろに回ったかわからないゼクシア様にお姫様抱っこで捕まり。馬車に連れていかれ、ゼクシア様が胡座をかいたところに座らせられ固定される。
『よし、この状態で話をしよう。』
「うぇ?!なんなんですか。戦い方見せただけなのにっ。なんで肩押さえつけるんですか。別に逃げませんって!」
『あのね?予想外すぎたのよ。ちょっと待ちなさい?あなた今レベル幾つなの。』
「え、えと。確か今ので上がったから…11だよ?」
『11にしては強すぎるわ!それに、なんで、初見の魔物のはずなのに急所を知ってるの!』
へ?急所?
「えと、急所は知らないよ?」
『だがお前は今のリザードの急所に当てて倒していた。知っていたのではないのか?』
「いえ?魔物の急所の場所なんて知りませんよ?」
全員がその一言に黙る。
いや、知らないもん。
「…つまり、アレですか?偶々急所にあたって…倒せたと?」
「……じゃないの?」
『…いえ。そんなわけないわ。…何か他に…原因が。』
偶々か…
偶然……つまり運が良かった?……ん?運?
……まさか。
「あのー。運の数値が高いと急所に当たる確率が上がるとかってあります?」
『…!!あるわ!!いくつなの!!』
「えっと、こっちもレベル上がってるから………。」
私は目を疑った。なんでこんな…
『……ど、どうした?』
「さ、さんびゃくきゅうじゅうきゅう…でした。」
高いのっ!
『それよ!!!』
『それじゃ!!』
『それ…だな。』
「…なんでそんな高いの。私だってまだ40なのに。」
「……最初の時点で、99ではあったけど…なぜこんなに上がるのかは知らない。」
謎が謎を呼ぶ…辛い。
『運の良さは伝染すると聞いたことがあります。私は本当に運がいい!コトリさんっ!もう少しナイトたちを見せてもらえませんか!』
「あ、はい。どうぞ。」
ナイトたちを馬車の中におろして、それぞれを自由に行動させる。だけど、ナイト三体と風の子は私の側からは絶対に離れないようだ。
『コトリさん!ナイトたちは動かない物を作って売るというのはできませんか?動かなくても十分売れますよっ!これ!』
「動かないやつですか。んー。私が作るの全部動いちゃうので、そこはクラメンがどうにか作れるようになってからの話になりますかねぇ。んー。あ。木彫りもありますよ。見ます?」
『木彫りですか?!見せてください!』
ちなみに、今馬を操作しているのはラルフさんとアイシャさんでとどまってるわけじゃないよっ!
…って誰に補足入れてるんだろ。
「ま、基本的に、動きますね。鳥ばかりですみません。」
『ク、クオリティ高くないですかっ!木なのに柔らかそう。手触りも滑らか…!反応まで本物のよう!』
「そういえば、この子たちやナイトは、結構長い間動いてるなぁ。」
『そういえばそうね。』
「…本来の作り主のそばにいるから…とか?」
「そうなのかなぁ。」
鳥たちを野に放ってみる。馬車の上を旋回…のちに何かに目をつけてそれに向かう。
「え。どこ行った?」
しばらくすると脚に何か掴んだ状態で帰ってきた。
「……おぉう。」
「…フレアリザードだね。」
2匹で協力して瀕死のフレアリザードを運んでる。
そして、馬車のそばに落下。光に包まれ弾け、アイテムボックスにアイテムが増える。
……素材採集が楽勝になった瞬間である。
「……ロルフさん。素材が勝手に集まる自体に落ち着いた。」
『それは、落ち着いたとは言わんわ!』
何がともあれ、ロルフさんは鍛冶場がないと無理だそうなので、保留だね。
「それって、コトリ。パーティ組んだら私にも入るかな?」
「……そういえばパーティ組んでなかったね。やろう。」
次々にアイテムが増える。
リザードだけでなくチュンチュンという大きくて丸いスズメのような魔物とか、ファイゴンという赤いティラノサウルスみたいな魔物とか瀕死にしては落とし瀕死にしては落としの繰り返し…
見たことのない魔物のドロップが集まる集まる。
そして、フレイアランの街が遠目に見えてきたので鳥たちを回収しいっぱい褒めてあげて、アイテムボックスに収まってもらう。
ボックス内ホクホクの状態でフレイアランにとーちゃくっ!