協力者
グランゼリア帝国に属するグランゼリアとマルシカの国境に隣接する領地ディルフィム。
ディルフィム領の更に西、国境に最も近いベティンという街、その街の近郊、小さな丘の上、街道から離れたこの丘の上で一人の青年が懐中時計と離れた街道を見やっていた。
「そろそろ時間か、総隊長からの話しだとトゥルースを二人も派遣して頂けるそうだが、しかし、ルーキー二人か、心配無用とは仰っていたが――」
一見町民の風体だが、彼はファクトリーの兵士の一人であり、ルクス直属の諜報員の内の一人だ。
マルシカに先んじて潜入し、調査していたのがこの青年、アルバである。
彼は優秀な諜報員と言うだけでなく、兵士、戦士としても優秀だ、ファクトリー所属ということは魔術ももちろん使用出来る。
マルシカに所属する並みの兵士程度なら一騎当千とまではいかないが、中隊規模程度なら手玉にとれる程だ。
「ぅぅぅうわああ!!!」
「ん? なんだ!?」
そんな優秀な諜報員アルバの耳に聞こえてきた悲鳴。
剣を術式により顕現、警戒の為に剣を構える。
「おらあ!! スーパーヒーロー!! 着地ぃいい!!」
「そ、空から女の子が!?」
剣を構えたアルバが空から聞こえた声に反応して見上げる、するとどうだろう、とてつもない落下速度で一人の少女が迫ってきたかと思うと、拳と片膝を着いて激しい音と衝撃と共に着地した。
「っあっぶねえ!! 死ぬかと思ったわ!」
「だから、魔力噴出型はまだ早いと言っただろう」
「嫌、でもさあ折角覚えるんなら速い方が――」
「複合型も鍛錬次第で速度は十二分に出る、着地に失敗したら本当に死ぬかもしれんぞ……着地点周囲の人が」
アルバの眼前に着地した少女の上空、もう一人の少女が先んじて着地した少女とは違いゆっくりと着地、アルバに向かって一礼した。
「事前に確認した魔力波形からアルバ殿とお見受けしましたので上空より失礼しました。
ファクトリーより参りました、キャロル、セシル両名、只今より任務に加わります」
「え、な、君達が連絡にあったトゥルースなのか!?」
「そうですね、まあこんな見てくれですので、頼りなく思うでしょうが、よろしくおねがいします」
ルクスからの連絡で、二人のトゥルースの特徴が幼いと聞いていたアルバであったが、十代半ば位か?というアルバの予想を越えて、さらに幼い容姿の幼女が姿を表した為に、つい頭を抱えてしまった。




