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二人の幼女と飛翔魔術

 「さて、これからどうするかねえ」


 任務を言い渡され、遂に二人が戦地へと赴く。

 しかし、グランゼリアを発った二人の雰囲気はピクニックにでも行くような穏やかさだ。

 食料や着替えを異空間収納に放り込み、セシルはそれとは別にクロエに用意して貰った銃火器の類も異空間へと詰め込んで、足取り軽く街道をマルシカへと向けて進んでいた。


 「いやあ~、初めての二人旅だなあ」


 「……そうだな」


 「どうしたキャロル、元気がねえな、なんか不満でもあるのか?」


 「不満……と言えば不満だな、軍服で行っては駄目だったのか、と」 


 「なんだよ、服の事かよ。

 いやいや、とりあえずは潜入任務なんだからよ、ファクトリーの軍服で行ったら即バレじゃねえか」


 今、二人はファクトリーの女性陣が用意した服を着用している。

 貴族のご令嬢が好むお洒落なドレスや、フリフリひらひらのドレスではないが、平民の少女達の余所行きのお洒落さはある。


 「最初はスカートやらを嫌がっていたセシルが、成長したものだな」


 「いや、そりゃ十年幼女やってるからなあ、慣れるわ」


 「まあ、確かにな。

 で? さっきから異空間収納から銃火器取り出しては戻してるけど、でばいす化とやらはまだ終わらないのか?

 そろそろ中継地へ急ぎたいんだが」


 「ああ、もうちょい待ってくれ、もうすぐ全部デバイス化できるから」


 マルシカまでの距離は決して近いわけではない。

 普通なら馬や騎竜に乗って数日は走る距離だ。

 しかし、旅立ちの際、二人は馬も騎竜も拒否して徒歩でマルシカを目指した。

 馬や騎竜より速く走れる、そう言われてしまってはファクトリーでの二人を知る兵士達は、二人の言うことを聞かざるを得なかったわけだ。


 「OK、これだけ有れば色々やれるわ。

 さあキャロル、中継地まで行こうぜ」


 「善は急げとはいうが、セシル、急ぐついでだ、飛翔の術式を使ってみるか?」


 「おお良いな! ファクトリーでは移動系の術式は必要なかったからなあ。

 教えてくれよキャロル」


 「私の世界での飛翔の術式は主に2種類が使われていた。

 1つは反重力術式と風力系術式を組み合わせた、速度の調整と操作をしやすいバランス型。

 もう1つが魔力噴出による速度特化型。

 前者が戦闘用、後者が移動用といった感じで私は使い分けていたな。

 さあどっちを教えるか」


 「決まってんだろ? 両方だよ」


 「ふむ、では飛翔複合術式から、まずは――」


 術式を発動し、重力の束縛から解放されるキャロルを見てセシルが年相応に目を輝かせる。

 セシルの過去世において飛翔の術式は、数多の魔術師が挑戦した命題であったが、飛翔し続ける為の魔力が足りなかったり、制御が難しすぎたりで遂に飛翔の術式は開発成功に至らなかった。

 そしてもう1つ、セシルの世界で飛翔の術式が開発を断念された理由、それは科学技術の発展によるところが大きい。

 つまるところ、魔術での飛翔が難しいなら機械で補えば良い、という具合だ。


 「人間が単独で空を飛ぶ、か。

 アニメみたいで良いな」

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