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二人の姫

 ルクスの執務室、ここだけはファクトリー内の暗い雰囲気とは程遠かった。 

 いつもと同じようにルクスは二人を笑顔で迎えた。


 「やあ、いらっしゃい。

 呼ばれた理由は察してるよね。

 二人の初陣の時が来たよ」

 

 「潜入任務ですね。

なんて国でしたかね?マルシカクでしたっけ?」


 「クが多いわよセシル」


 「ははは、マルシカだよセシルちゃん。

 さて、潜入任務ではあるんだけどね。

 ちょっと事情が変わったんだ」


 マルシカに潜伏していたルクスの部下によると、元より魔族の侵攻停止以前からマルシカ国内では魔族に服従すべしの国王派と、人類と徹底抗戦すべしの第1王子派で勢力が割れていた。

 しかし、魔族の圧倒的な戦力を前に第1王子派の勢力は国王派に従うのを余儀なくされていたわけだ。

 そして、魔族の侵攻停止を契機に、第1王子派は内乱を画策、自国の領主達をまとめ上げ、遂に国王に反旗を翻した。


 「と、言うわけで、二人にはマルシカヘ行ってもらって王都に潜入、第1王子派が有利になるように立ち回って欲しいんだ」


 「直接国王派を全滅しちゃ駄目なんですか?」


 「政治の話があるんでしょう。

出来れば私達……ファクトリーが関与したようには見せたくないんじゃないかしら」


 「まあ確かに目立たないに越したことはないよ、こう見えても僕だって君達が怪我しないかを心配してはいるからね」


 「じゃあまあ、やってしまっても構わないと」


 「こちらとしては、マルシカが人類側にちょっかいをかけなくなってくれれば万々歳だからね。

 マルシカ潜入後のやり方は任せるよ」


 「子供に軍事行動を任せると?」


 「ははは、君達が普通の子供ならありえないよ」


 「確かに、そうですね。

 了解しました、キャロル、セシル両名は本時刻よりマルシカ潜入任務を開始します」


 「頼むよ。

 ああ、後そうだ、今回の任務に赴くにあたって模擬戦の様子を見た陛下から君達に称号が下賜されたんだ」


 「称号というと、総隊長の'剣帝'とかリア副長の'剣妃'みたいなヤツですか?」


 「そうそう、アイツ……陛下がこういうの好きでね。

 キャロルちゃんには'剣姫'セシルちゃんには'戦姫'の称号が与えられたよ」


 「双子の私達に似た名の称号、謹んで受け取らせていただきます」


 「子供には厳つい称号だなあ。

 というか、こういう称号とかって普通授与式とかあるんじゃ……」 


 「本来ならね。

 ファクトリーで研鑽をつみ、戦場で多大な戦果を上げたトゥルースのみが陛下から与えられる。 

 そんな代物だけど、ほら君達は入隊して最短最速でトゥルース入りしたからね、入隊式までに思い浮かばなかったんだと思うよ」


 

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