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招集

 緊急事態の一報をルクスが部下から受け取ったのは日が傾き、空を炎の様な夕焼けが覆った頃。


 その一報を受け、ファクトリーの兵士達やキャロル達を含め、訓練場にいたトゥルースの面々が瓦礫の片付けや地面に出来た大小のクレーターの補修を終えたのを見計らったかの様に、ルクスは通信術式でもってキャロル、セシルの両名を呼び出した。


 「良いタイミングだったわね」


 「ん〜? 掃除が終わったって話し? 武器が間に合ったって話し?」


 「両方よ」


 キャロルとセシル両名の呼び出し。

 それは遂に二人が戦地に赴く時が来たと言うことだ。

 十歳の少女二人が、だ。

 二人の強さをファクトリーの面々は身をもって理解している。

 しかし、年相応に笑っている時や、話している時の二人はただの子供にしか見えなかった。

 アリーゼも見た目はキャロルやセシルと同年代に見えるが、それは種族の違いからであって、アリーゼは成人している。

 正真正銘の子供が軍事に関わる、その事実がファクトリーの兵士達の表情に陰を落とさせる要因となった。


 「あんた達、潜入任務とは言え戦地に行くのよ? 

 怖くないの?」 


 呼び出されたルクスの執務室まで、付き添う為に二人の後を追うアリーゼが聞いた。

 先程までセシルに向かって自慢の大鎚を振り回していたとは思えない程に、その表情は弱々しく、今にも泣き出しそうだった。


 「うーん、アタシは忘れたなあ怖いって感情」


 「私は飼い慣らしたわ随分前にね」


 「どんな人生を送れば十歳の子供が恐怖を忘れたり飼い慣らしたり出来るのよ」


 「まあ、色々あるってこった」


 アリーゼの心配をよそに、キャロルとセシルはいつものように笑っていた。

 その様子はまるでこれから友達の家にでも遊びに行くかのようだ、つまるところ、二人は久々の戦場に意気揚々というわけだ。


 「じゃあまあ、ちょいと作戦会議に行きますかね。

 ありがとうなアリーゼ、心配してくれて。

帰ってきたら街に飯食いに行こうぜ」


 「そうね、無事に帰ってきたらおすすめの店の絶品料理をご馳走してあげるわ」

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