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アリーゼとクロエ

  「素晴らしい、私が予想したよりもキャロルちゃんの能力は遥か高みにあるようだ」


 眉間に皺を寄せ顔をしかめるリアとは対称的に、クロエの表情は爆心地で剣を眺めるキャロルと同じく晴れやかだ。

 

 「今の衝撃波は何!? 魔術の教練まではまだ時間はある筈よ!? 

 誰が爆裂術式の類を使った!?」


 慌てた様子で声を上げ、訓練場に姿を表したのはアリーゼだった。

 午後の魔術の教練を前にリアとセシルが模擬戦をしているのを知らなかったアリーゼは、教練を前に兵士の誰かが爆裂術式の制御を失敗したのかと心配になり、訓練場に駆けつけたのだ。

 そして駆けつけ先で見た惨状は、まさしく爆発事故の様な現場だったわけで。


 「リア様、これはどういう状況ですか」


 「ようアリーゼか、状況かぁ。

 まあそうだなあ、キャロルが新しい剣を振っただけなんだよなあ」

 

 「剣を振っただけ? まさか、ルクス総隊長じゃあるまいし……いやキャロルならやりかねないですね」 


 そのキャロルは爆心地で剣を柄だけの状態に戻し、宙空に描いた魔法陣の中に片付けていた。

 そんなキャロルに近付き、検査の術式でもってキャロルの身体に異常がないか確かめるクロエ。

 そんなクロエを見て、再びアリーゼが声を上げた。


 「ママ!? あ、いや、クロエ局長!? なんでここに? めったに研究棟から出てこないのに」


 「あらアリーゼ、良いのよママって呼んでも」


 「ん? 二人って?」


 「アリーゼ・テリスとクロエ局長、クロエ・テリスは正真正銘の母娘だ」


 闘技台の瓦礫を片付けていたセシルにリアが応えた。

 それを聞いてセシルは二人を見比べる。


 「あー、確かに目元がそっくりっすねえ

 胸は似てないけど」


 「ナチュラルに喧嘩売ってきたわねアンタ、分かった、今日こそペチャンコにしてやるわ!!」


 このアリーゼの怒声を聞いた瞬間、現場にいた兵士達は片付けと清掃を諦めた。

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