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武器を試してみる

 再び試し斬り用の広間に移動したクロエとキャロル。


 「キャロルちゃんが使える武器は剣だけかしら?」


 「一番得意と言えば確かに剣です、しかし、まあ戦況によっては何でも使いますよ、槍でも棍棒でも大鎌でも」


 「それは頼もしい。

 実にコレ向きだわ。

 本題に入りましょうか、持ってきたこれは私の実験作でね、マルチアームズシリーズとでも名付けようかと思ってるんだけど、さあまずは持ってみて?」


 言われるままに差し出された剣の柄を握るキャロル。

 剣の柄としては若干長いそれは、先程までキャロルが振っていたショートソードと比べるとかなりの重量があった。


 「離すわよ? 大丈夫かしら?」


 「大丈夫です、持てます」


 「じゃあキャロルちゃん、魔力を柄の中心の魔石に流しながら、使いたい剣を想像してみて」


 「想像……ですか」


 言われるままに魔石に放出した魔力を流し込んでいくキャロル。

 思い描くのはかつて前世で長らく苦楽を共にした聖剣。

 魔石が光を放ちその内部に浮かび上がる魔法陣と紋章。

 次の瞬間にはキャロルの手の内に懐かしい手触りの剣の柄が現れ、更には刀身が形成されていく。

 構築されたのは幅広で両刃の剣、刀身には魔王の撃滅と人類救済を願った碑文が彫られていた。

 

 「綺麗な剣ね、なんて書いてあるのかはわからないけど、細かい碑文まで再現するなんて。

 キャロルちゃんはこの剣に何か強い想い入れでもあるのかしら」


 死ぬ間際まで握っていた、親友と呼べる程に長い間共に歩んだ聖剣。

 想い入れなどという言葉には収まりがつかない。

 「依存していたと表現するほうが正しいのかもしれない」

 そんな言葉が脳裏をよぎり、口からこぼれそうになる。

 しかし、例えば久方ぶりに実家に帰省した際、偶然同じように帰省していた親友と数年ぶりに、突然再会したなら、恐らく口から出てくる言葉など、思考した感情や感傷に反して。


 「懐かしいなあ」


 くらいの短い言葉しか出てこないものだ。

 その言葉すら呑み込み、キャロルは久方ぶりの親友との再会にはにかみながら嘘をつく。


 「この剣は昔、私達姉妹が寝付けないときにお母様が読んでくれた絵本に出てきた剣です」


 前世で魔王と相討ちした時に握っていた剣ですとは言えず、咄嗟に出た言葉とは言え、あながち嘘でも無い事をキャロルは思い出す。

 母が読んでくれた絵本の中に出てきた勇者は確かにこんな剣を使っていたのだ。

 とはいえ絵本なのでデフォルメが激しく、細部などは描画されていないわけで。

 その時は「どことなく私の使っていた剣に似ているなあ」くらいの感想が思い浮かんだくらいだった。


 「魔力を随分吸わせたはずだけど、どうかしら、疲れてない? 大丈夫?」


 「はい、問題ありません、本当にコレを頂いてもよろしいのですか?」


 「もちろん、トゥルース達に最適な武器を用意するのが私の仕事だからね

 さあ後はキャロルちゃんのフィジカルブーストに耐えられるかどうか。

 本来なら絶対大丈夫って太鼓判を押すんだけど。

希少魔石合金製の剣にヒビを入れる膂力を見ちゃうとねえ、ちょっと自信が揺らいじゃってね。

 その剣、振ってくれるかしら」


 「……場所を変えませんか? 

 出来ればもっと広いところで振りたいです。

 結界術式はまだ修復出来ていないでしょうし。

そうですね、闘技場なんか丁度良いと思うんですが」


 「ふむ、そうね、一理あるわ。

 じゃあ移動しましょうか」

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