武器を選ぼう
「お〜」
と、ついキャロルの口から感嘆の声が漏れてしまったのは、クロエに連れられて隣の部屋に入った先で大量の武器を見たからだ。
見た目にも豪華絢爛な物から、機能性重視のシンプルな物まで。
部屋というよりは大広間と言える程の場所、壁一面、ショーケースにも武器が飾られ、一見するとデパートのフロア一面を武器で埋め尽くしたバーゲンセールの様相だ。
「ははは、良い顔をするわね。
まるで男の子みたいにわくわくしてるのが分かるわよ?」
クロエの言葉に「まあ確かに中身は男ですが」と、応えるわけにもいかず。
「これだけの武器が並べば心も躍ります」
と、好奇心から笑みが浮かびそうになるのを堪えながらクロエに応える。
大剣、槍、大鎌、大槌、ロングソード、ショートソード、バトルアックス、ハルバート、弓、銃、鉄扇、鉄爪。
様々な武器が並んでいるこの場所にキャロルは確かに自分で言った通り心を踊らせていた。
「キャロルちゃんの今の身長ならショートソードが良いかしらね?
まあゆっくり見ていってちょうだい、ケースの中の武器が見たかったら声掛けてね」
「分かりました、では早速」
年甲斐にもなく……今は十歳の少女な訳だが、キャロルはスキップしたい衝動を押さえつけ、案内されたショートソードが複数掛けられた壁まで早歩きで向かう。
手に取り振って、戻して、別の剣を手に取りまた振り、戻す。
その様子にクロエは戦慄していた。
ショートソードとは言え、ここにある武器は鉄で出来た所謂’普通’の武器では無い。
勇者と呼ばれる存在、その中にあって更に突出した力を持つトゥルース達。
そのトゥルース達が使うためにクロエが造ったここにある武器はその全てが特別製だ。
希少なアダマンタイトやミスリル、オリハルコンなど。
人間側の領土から採掘出来る物を複数組み合わせた魔石合金製の武器。
その重量は鉱石の配合率で軽くもなり重くもなる。
しかし軽いと言えど武器は武器。
十歳の少女が小枝を振るように素振り出来るような重量では無い。
「なるほどなるほど、最年少のトゥルース。
これ程か」
「良い剣だ、コレなら耐えられるか?」
関心するクロエの視線の先で、剣を睨んで呟くキャロルがふと「剣を試したい」とクロエに言ったので「ならこっちにおいで」と導かれ、更に隣の部屋に行く二人。
そこは先程の大広間と同程度の広さを確保された、何もない部屋。
「まあ、武器は思いっきり使ってみなけりゃってのは今までのトゥルース全員が言ってきたんでね、特別に設えた部屋よ。
ルクス君が壁に穴空けてからは結界も多重に展開出来るようにしてるから思いっ切りどうぞ。
あ、試し斬り用の人形は必要かしら?」
「いえ、思いっ切り振れるなら人形はいりません」
ショートソードに魔力を送り、強化の術式を多重に掛けるキャロル。
鉄の剣と違い、壊れる様子は無い「いけるか?」と壊れる様子は無いが何処か不安なのはやはり前世で振り回していた聖剣程は頑丈では無い、と思ってしまったからだ。
「ふ~。
ん!!」
大きく息を吸い込み、肩に担ぐように剣を構える。
ルクスとの立ち会いで見せたあの構えだ。
その構えから加速無しで剣を思いっ切り振り下ろしたキャロル。
剣圧が地面を叩き、大きく部屋を揺らし、壁を叩く。
剣圧で壁の結界にヒビが入り、クロエもルクスという前例があるので離れて自分に結界を貼っていたが、それでも衝撃が風圧となり、クロエを襲った。
幸いクロエには髪が乱れた以外の被害は無かった。
しかしキャロルの振った剣にはヒビが入ってしまっていた。
「ルクス君と同じか、もしかしてそれ以上の力?
十歳の女の子が?
ふふ、ふふふ、面白い、面白いわね。
しかしどうしようかしらね、ルクス君は大剣でどうにかなってるけどキャロルちゃんの身長じゃねえ。
あ、そうだ、アレを試して貰おうかしら」
何やらブツブツ言いながらクロエは隣の部屋へ戻っていったので、剣を壊した申し訳無さから黙って後に続いてキャロルは、戻った部屋でクロエからある物を渡される。
「これは、剣の柄ですか?」
鍔もなく刃も無い、剣の柄だけをクロエから渡されたキャロルは流石に困惑した。
「キャロルちゃんの魔力がルクス君と同等ならコレを使いこなせるわ。
隣の部屋に戻りましょうコレの使い方を教えてあげるわ」




