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初任務

 キャロルとセシルがファクトリーへ入所して半年が経った頃。

 人類にとっても魔族にとってもちょっとした、嫌、歴史的に見ればここが転換期であったと後の歴史家が言うほどの事件が起こった。

 

 「クーデター?」


 「いや、どうやら魔族の女王様の方から喧嘩を売りに行ったって話だ――」


 「いやはや魔族は何考えてんだか。

 まあ人間にも裏切り者はいるからなあ」


 街の井戸端会議でも話が上がるくらいには事件として広まった今回の事件。

 キャロルとセシルがトラリシアからグランゼリアへの旅路の途中で聞いたアンジェリカからの一方的な停戦宣言。

 アレから半年だ、その半年の間で魔界で反乱が起こったと言う。

 正確には反乱では無いと言うのがルクスが魔界に潜入させている諜報員からの報告だ。


 「魔界統一とは、凄い事考えるね新しい魔王は」


 ルクスが部下からの報告書を読み終わると、そっと机の棚に報告書を片付けながら呟いた。

 そんな折、ルクスの執務室の扉がノックされることも無く何かがぶつかったのかと思う程の勢いで開いた。

 ルクスの執務室にこうやって入ってくるのはルクスの婚約者であり、ファクトリーの副長を務めるリアだけだ。

 その傍らにはノックをしようとして手を上げていたキャロルの姿もあった。

 

 「副長、あの、流石にソレはどうかと思うんですが」

 

 「うっせえ黙ってろ!」


 リアはルクスの執務室の扉を蹴って開けたのだ。

 その事についてキャロルの後ろにいたセシルが諭そうとするが、何を怒っているのか眉間には皺がより、若干額に血管が浮いている。


 「おいルクス! お前ガキ共だけに潜入任務やらせるつもりなのかよ!?」


 今日キャロルとセシルがルクスの執務室を訪れたのはリアが言った任務について聞くためだった。

 正式な辞令はまだだが、連絡班の兵士からあらましを聞かされ、概要は総隊長から説明があるからとの事だったので、キャロルとセシルはルクスの執務室へ向かっていた訳だが、その執務室の前でリアと出会い「おう、どうした双子」と声を掛けられたので「総隊長から任務が――」と簡単に返したら、リアが止める間もなく扉を蹴り開けたわけだ。

 

 「まあ説明するから落ち着いてリア。

 ほら皆中に入って入って」


 言われるまま部屋に入る3人。

 依然リアの眉間には皺が寄ったままだ。

 

 「さて、早速だけど、キャロルちゃんとセシルちゃんに初任務だ、魔族と内通している国が人間界にあるって話は知ってるかな?」


 「魔族に取り入ってコッチの脇腹を突いてくる奴らがいるってのは知ってますよ」


 この魔界と人間界の大戦で魔族に寝返った国家が有る。

 アンジェリカではなく、前魔王が「人間を裏切ればお前達の国だけは見逃す」と、まあ従っても最終的には殺されそうな感はあるが、そんな言葉1つで人間界を裏切ったマルシカという国だ。

 南から攻める魔族、北へジリジリ退く人間側、そしてその退く人間側の軍を西から突くマルシカ。

 形を見ればまさに脇腹を突く位置にマルシカはあった。


 「なら、話は早いね、じゃあ今魔界で起こってる事は?」


 「もちろん聞いています」


 あいつがやりそうな事だ、とは口に出さなかったキャロルは、呆れた様に応えた。


 「二人には、出来れば迅速にマルシカの内情を探ってもらいたい」

 

 「ルクス、お前!」


 「まあまあ、最期まで聞いてよリア。

 魔族が進軍を停止した事で、恐らく今マルシカは焦っている。

 魔族の相手をしていたからこそマルシカからの攻撃は防衛だけに留まっていたからね」


 「確かに、魔族が止まっちまったら、裏切り者であるマルシカはコッチにとっては……なんて言うんですっけ……後顧の憂いですかね、まあそんな感じですもんね」


 「まあそういう事だよ、でも僕達が正面から行っちゃうとちょっとね。

 魔族は進軍停止しているとは言え、いなくなった訳じゃないから、トゥルースは各方面で警戒させなきゃだし。

 かと言ってどうやらマルシカには魔族も入り込んでるらしくて、諜報員じゃちょっと手に余る」


 「私達はまだ顔も割れてませんしね確かに行くなら私達が適当ですかね」


 「察しが良くて助かるよキャロルちゃんセシルちゃん。

 僕のお嫁さんになる子は普段の言動からは想像出来ないくらい優しくて、子供が好きでさあ、こういうの凄い嫌がるんだよねえ」


 ルクスの言葉にキャロルとセシルはチラっとリアの顔を覗く。

 リアの顔面は真っ赤だったが、もはや怒りなのか照れなのか良く分からない表情でぷるぷる震えていた。

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