国王と双子達
「ほお。
このお嬢さん二人がそうかい?」
ルクスとグランゼリア国王、ヴァイツが女性陣と合流するや否や、顎に手を当てながら腰を曲げ、キャロルとセシルを好奇の目で見ていた。
「お初にお目に掛かります陛下、この度ファクトリーへ入所致しました、キャロル・リフテルと申します、お見知り置きくだされば幸いです」
「キャロルの妹、セシルです。
若輩者ではありますが、人類の為、誠心誠意尽くす所存です」
キャロルはスカートの裾を持ち上げ、女性らしい所作で挨拶を行い、セシルはファクトリーでの敬礼でもってグランゼリア国王への挨拶とした。
「立派な、これでまだ何歳だったか、10歳位だったかな? それが凄い。
なるほど、様になっている。
普通の子供が大人を真似た所で、こうも立派に挨拶出来るものではない。
だが、それでも信じられんな、こんな幼い少女がルクスやリアと対等以上に戦えるとは」
「腕試ししてみるかい? 剣は衰えてないだろ?
まあ間違いなくヴァイツじゃ怪我するだろうけど」
「やらんよ、お前は冗談は言うが嘘は言わんからな」
ルクスの言葉に笑って応えるヴァイツだったが、ふとその笑顔が消えた。
そして、ヴァイツはキャロルとセシルの頭を撫でると顔をしかめた。
「すまない、君達のような年端もゆかぬ子供に戦争をさせる私を、恨んでくれ。
平和な世なら君達の未来は血に染まる事は無かったのだ――」
キャロルとセシルの頭に置かれた手が震えていた。
子供を戦争に行かせる悲しみからか、至らぬ自分に対しての不甲斐なさからくる怒りか。
「恨みません陛下、私達姉妹は自らの意志で戦場を駆けるのですから」
「そうですよ、強制されたからとかお願いされたから戦場に行くんじゃ無いですから。
いや、お願いはされたか」
神様に、とは言えるわけもなく。
最後の一文は口に出さなかったセシル。
シルヴィアもヴァイツと同じ様に、悲しそうな、申し訳なさそうな、なんとも居心地の悪そうな顔をしていた。
「何辛気臭い顔してんだグラゼリアの2枚看板。
2人が良いって言ってんだから、良いじゃねえか」
リアが呆れた様に言うと、それに続くようにセシルがうんうんと頷く。
ルクスとキャロルも表情や態度にこそ出さなかったが、リアと同意見だ。
「俺はそんな事より、セシルが敬語を使えた事に驚いてるんだが」
「おっリア副長、喧嘩しますか?」
「止めなさいセシル、パーティー会場が無くなってしまうわよ?」
3人のやり取りに気を紛らせたか、ヴァイツの表情から陰りが鳴りを潜めた。
「自分の意志か。
そうだな、それなら俺が謝罪や同情をのするのは間違いだな」




