リアVSセシルⅡ
ライフルの銃口数寸先に現れた魔方陣。
そこから放たれたのは先ほどの熱線とは比べものにならない熱線。
先ほどの熱線が矢とするなら、こちらは破城鎚と言えるだろう。
飛び退いたリアが着地するタイミングで引き金を引いたセシルは、この後の展開を予想してか、ライフルのスコープから目は離さず、引き金に指は掛けたままだ。
「こっのお!」
気合一閃、リアは刀を迫る熱線目掛けて振り下ろす。
空気を刃物で切り裂けない事と同じく、魔力で編まれた物理現象ならまだしも、魔力そのものを放った熱線は本来物理では干渉出来ない。
しかし、魔力を纏わせたならば、その限りではない。
刀に魔力を纏わせた一閃は熱線を切り裂き、切り裂かれた熱線はリアの後方で結界に当たり、闘技場を揺らす。
「予想を上回るってのはこういう事だよな」
「いや、全く。
こっちも同じ心境ですよ」
セシルの普段のニヤけ面が一変、顔からおよそ感情と呼ばれる物が消えたかのように無表情となる。
それと同時、リアは表情こそ変わらなかったが、その体から雷光が放たれ、刀を伝い腕を伝い、脚を伝う。
バチバチと音をたてる雷光。
刀を構えるリアは無表情になったセシルに、俄に殺気立つ。
「子供の出来るツラじゃねえなあソレは」
リアの言葉に返答すらしないセシル。
スコープを覗く瞳はただ標的のリアを見つめ、呼吸は深く、あらゆる動きに対処出来るように、引き金に掛ける指は浅く掛ける。
「リア副長、あれ本気なんじゃ」
「いや、子供相手にそんな事ないだろ」
「リア副長のアレ、見たまま雷光纏いでしたか。
普段トゥルース同士での模擬戦でも中々お目にかかれないんですけどねえ」
試験を観戦していた正規兵や候補生達がどよめいていた。
「はぁい、試験終了~。
二人とも武器下ろしてねえ」
「キャロル、あなたそんな顔するのね。
銃を下ろしなさい、終わりよ」
緊迫する空気の中、間の抜けた声が闘技場に響き、セシルの傍に現れたキャロルがセシルの肩に手を置き、耳元で呟く。
「止めんなよルクス、こっからだろうが」
「あのね、コレは試合じゃないし、ここは戦場じゃないんだから、ほら、セシルちゃんは銃下ろしたよ?」
「っち、しゃあねえな」
不意に闘技場の中央、リアとセシルの間に現れたルクスが両者を諭す。
判定はもちろん合格。
不完全燃焼な感が二人にはあったが、しかし目が合うとリアとセシルはどこか満足げにニヤリと笑った。
「さあ、じゃあ最後はキャロルちゃんだね、相手は僕がするよ、良いね?」
「願ってもないです、よろしくお願い致します」




