リアVSセシル
闘技場に上がるセシルを確認したリアは、刀を抜かず、柄に手を掛けると腰を落とす。
それを確認し、セシルも魔方陣から短銃を二丁取り出した。
「居合いですか副長、渋いっすねえ」
「へえ、知ってんのかお嬢ちゃん。
おかしな話しだ、師匠から教わったコレは何処ぞの島国の技らしいんだが、なんで年端もいかねえお前が知ってんのかねえ」
「まあ、博識なんで。
で、副長、開始の合図はどうします?」
「博識ねえ、まあ良いがな。
いつでも来いセシル、じゃなきゃ叩き切る」
「了解、んじゃ、遠慮なく」
居合いの構えのままのリアに短銃二丁の銃口を向け、引き金を引くセシル。
魔力で編まれた銃弾が数発ずつ銃口から放たれ、真っ直ぐリアに向かう。
普通の銃弾に峰打ちなどあろう筈も無く当たれば死、良くて重傷、そんなセシルの魔力で編まれた銃弾はリアに届く事は無かった。
「っは、あんだけの銃弾をたたき落としますか」
「様子見とかしてんな、全力で来い」
観客席から試験の様子を見ていた正規兵の目でもってしても、リアが刀を抜いた瞬間は見えなかった。
しかし、銃弾が全てリアの眼前ではじけ飛び、結界に当たって消えたところを見ると、リアが銃弾を全て斬り伏せたというのは安易に想像できた。
その瞬間を確認していたのは相対していたセシルと観戦しているキャロル。
そして観戦席から見下ろすトゥルースの面々のみ。
「あんなお嬢さんがリア副長の特別試験に合格したってマジなんすか?」
「総隊長のお言葉ですから、まず間違いないかと」
中肉中背、銀髪の青年が発した疑問に、金髪縦ロールのお嬢様が応えた。
両名共にトゥルースの一員である。
リアが刀の柄に掛けた手に力を加える。
やや前傾姿勢になり、攻撃の態勢に入ったというのが見て取れた。
そう認識した瞬間、リアとセシルの距離、大股で数えて優に十歩程の距離を一瞬で詰めたリアはセシルの眼前に迫ると、刀を抜く為に力を込める。
しかし、セシルはその動きを読んでか、飛び上がってリアが抜こうとした刀の柄の先端を踏み、リアの抜刀を防ぐと、銃口をリアの眼前に向け引き金を引いた。
「っち」
「うっへぇ、当たんねえのかよ」
セシルの放った弾丸を間一髪避けるリア、弾丸はリアの髪を掠めて闘技台に穴を穿つ。
リアは力任せにセシルを弾き飛ばし、刀を抜く。
弾き飛ばされたセシルは身を翻して難なく着地するが、再びリアが目前に迫った。
剣戟というべきなのか、リアの攻撃を短銃二丁で防ぎつつ、隙あらば銃口を向けて弾丸を放つ。
しかし両者、決定打を与えられない。
と、不意にセシルが数発、あらぬ方向に銃口を向け引き金を引く。
しかし弾丸が放たれる事は無く。
変わりに二人を取り囲むように魔方陣が現れたかと思うと、その魔方陣から熱線が放たれ、リアに向かった。
「うお!」
思わず飛び退くリア、その隙にセシルは短銃二丁を捨て、魔方陣からライフル型の銃を取り出すとリアに照準を合わせた。




