ただいま試験中
試験開始から間もなく、一組目の試験が終了した。
結界を張られた闘技場の中、呼ばれた者以外が観客席で見守る中行われた一組目の試験。
闘技場の中央に佇むブレイブファクトリーの正規兵が刃引きした剣を構え、その一人を十人の軍人が囲み、各々が剣を構えた。
一斉に飛びかかった十人だったが、一人に対し一斉に飛びかかったところで十人同時に攻撃出来るわけではない。
ブレイブファクトリーの正規兵も十人の軍人もそんな事は理解していたのだろう。
取り囲みながら、しかしタイミングは少し外し、避け辛いタイミングで剣を振るう面々だったが、ブレイブファクトリーの正規兵はその全てを捌き、当て身や威力を落とした魔法で各個撃破していった。
「無駄な動きが多いですね、1番、3番、7番、8番、9番、10番の方は残念ながら不合格ですね。
2番の方は私の初撃にちゃんと反応出来ていましたね、4番の方、もう少し踏み込んでいれば私の鎧に傷を付けることが出来たでしょう。
5番6番の方達は連携が素晴らしかったです。
少し甘い採点ですが及第点と私は採点させていただきます。
ようこそファクトリーへ、これから候補生として研鑽に励んで下さい」
息を切らせることもなく、ファクトリーの正規兵はそう言いながら合格者と不合格者に回復術式を掛けると、合格者を連れて闘技場外へと進んでいった。
不合格者達はとぼとぼと反対方向の出口へ向かっていく。
そんな事が十組以上続いた後、ついに候補生の試験が始まった。
「今日の昇級試験、まずは私が相手をします。
さて、それでは最初の方、こちらへ」
闘技場に立ったのは槍を携えた初老の男、ベルマンだ。
「おー、あの爺さん、菓子持ってきたときとは別人だなあ、顔つきは変わんねえのに、雰囲気が全然違うなあ」
「流石はトゥルースのお一人というわけね」
観客席から試験の様子を覗くキャロルとセシル。
端から見れば屋台の菓子に目を輝かせる子供のそれだ。
一人、二人、三人と試験が終わり、一向に名前が呼ばれないままついにベルマンは一人で数十人の候補生をのしてしまった。
ここまでで合格者は僅かに一名のみ。
ベルマンを一歩後退させた者のみが合格者に選ばれた。
そう、長尺の槍を扱いながらとベルマンは足を入れ替えたりはしたが、退いたのはたった1度だけだったのだ。
「お見事」
「トゥルースってのはスゲェな」
次は自分達の番、というかもう残っているのが自分達だけだからと、観客席から降りてベルマンの闘いの様子を見ていた二人。
「さて残るはお二人ですな」
「おう、頼むぜ爺さん」
「いや、どうやらベルマンさんが相手では無いみたいよセシル」
「さようでございます、私の役目はここまで、お二人のお相手は個別におられます」
ベルマンがそう言いながら会釈し、後ろに下がる。
その向こう、闘技場の入り口に。
「上がってこいセシル・リフテル、お前の相手は、俺だ」
腰に刀を2本差したリアが仁王立ちしていた。




