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試験前日

 それからの1週間はあっという間だった。

 二人は、魔術適正の高さから試験を受けにはるばるトラリシアからやって来た、という事にしたルクスの計らいで、客人として迎えられる事になった。

 二人の幼い容姿も相成って、兵達、特に女性達はこぞって二人の相手をしにやって来た。

 

 「まさか着せ替え人形みたく扱われるとは」


 「まあ仕方あるまい、衣食住とまだ兵士にもなっていない私達を世話してくれてるんだ気の済むまで相手を務めようじゃないか」


 ある日の午後、この服が似合うだの、こっちの髪飾りが似合うだの、盛り上がる数人の女性兵達に囲まれながら二人は愛想笑いを浮かべつつ念話を行っていた。

 ベルマンや百戦錬磨を思わせる老齢の兵達ですら、二人の前ではまるで自分の孫を見るかのように頬を緩め、菓子を渡してくる。

 その様子にアリーゼだけが不服そうだった。


 「背恰好なら私も似たようなもんじゃんかさあ」


 「子供扱いがお望みかな?」


 「ソレは嫌」


 「さようで」


 日も暮れた頃、二人の部屋に遊びに来たアリーゼが二人と自分の待遇の差に文句を言っていた、それにセシルが戯けるが、最後は苦笑い。

 なんやかんや、アリーゼと二人は仲良くやっていた。

 

 「いよいよ明日ねえ」


 夜もふけ、月が高く登る頃。

 二人のベッドの間に当たり前のように自室の布団を持ってきたアリーゼがその上に横になって言った。

 

 「結局毎日ここで寝てたなアリーゼ」


 「今その話しして無くない? いよいよ明日ねって言ったじゃん?」


 「セシル、アリーゼ、もう灯り消すわよ?」


 答えを待たず、キャロルは魔石を光源にしたランプを消し床につく。

 セシルもアリーゼもとりあえず布団を被るが、話しは続いていた。

 

 「いよいよって言ってもなあ、まあ落ちる事は無いんだし、そんなに意気込んでもねえ」


 「セシル、それでも油断無くよ。

驕り昂ぶれば、いや、あなたに言っても仕方ないか」


 「その通りよアリーゼ、説教されて言うこと聞くなら、私はもっとお淑やかに育っているわ」

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