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アリーゼVSキャロルⅡ

 「対人訓練で私のエリムちゃんを使うのはあなたで3人目よ。

 死なないでね」


 アリーゼが鍔迫り合いの状態から後ろに跳び退き、剣を投げ捨てる。

 そして手を掲げて宙に魔法陣を展開すると、魔法陣から柄の長い1本の戦鎚が姿を表した。

 全長はアリーゼを軽く越え、打撃を与える為の頭部も通常の戦鎚に比べると遙かに巨大で、ドラム缶程はある。


 「私の相棒、戦鎚エリムサルエの威力、見せてあげる」


 今度はアリーゼが、観戦していた訓練兵の目では追えない速度でキャロルの懐に飛び込んだ。

 腰溜めに構えた戦鎚を容赦の欠片もなく振るアリーゼ。 

 

 「受けては剣が保たないな」


 そう判断したキャロルが高く跳ぶ。

 その足元を盛大にアリーゼが空振るが、戦鎚の空振りの軌道に炎が続いた。

  魔力で足場を作り、その足場を使って後ろに跳び下がり間合いを取ろうとするが、地に足を着けた時には間合いを潰したアリーゼが既にキャロルの眼前で戦鎚を振りかぶっていた。

 

 「いけませんアリーゼ様!?」


 確実に殺した。

 誰もがそう思うタイミングだった。

 だからこそ戦鎚が当たってもいない内に、正規兵がどよめき、そのうちの一人が叫んでしまったわけだ。

 しかし、比較的近くにいたセシルにはそう見えなかった。

 見えたのだ、キャロルが楽しそうに口角を吊り上げるのを。


 「嘘、でしょ。

 ありえない」 

 「ありえない、なんて事は無い、強化、硬化、魔力による障壁、組み合わせればこんな事も出来る」


 振り下ろされた戦鎚、ソレは確かにキャロルを捉えていたが、当たっただけ。

 正確には受けられただけだ、それも片手で、まるで太陽光を遮る為に手をやる程度の仕草で。

 

 「いや出来ねえよ普通、アリーゼ嬢も同じくブーストしてるだろ」

 

 セシルはキャロルの様子に苦笑いだ。

 間違いなく訓練生がキャロルと同じ事をすれば、否、たとえ正規のブレイブスが同じ事をしてもアリーゼの一撃をまともに受けては、ひしゃげて潰れる未来しかない。

 アリーゼがキャロルに背を向け、地面に戦鎚を叩き付け、訓練施設の地面を叩き割った事からもその威力は伺えた。

 

 「大丈夫、いつも通りね。

 ならやっぱりアンタが化け物じみてるって事か、いや違うわね、じみてるなんてもんじゃないわ、化け物そのものじゃないの」

 「そうかも知れませんね、でもまあ、お互い様じゃないですか」

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