アリーゼVSキャロル
「お手柔らかに」
果たしてセシルのこの言葉はアリーゼとキャロル、どちらに向けられて放たれた言葉であったのか。
この訓練所として開放されている円形闘技場だが、もちろん本日も訓練生からブレイブスの正規兵達も使用中である。
「これから模擬戦を行う、怪我したくなかったら離れてなさい!」
このアリーゼの言葉に訓練生は走って観客席まで退避。
正規兵達は何事かとアリーゼの元へと駆け寄った。
「アリーゼ様、どういう事です。
今日は訓練生達の訓練のみと伺っていましたが」
「ああ、ごめんね。
この子達と私だけで模擬戦するから、皆は離れてなさい」
「本気ですか、見たところ相手はまだ子供……」
「見た目で判断するなとは、総隊長のお言葉だった筈だけど?」
「も、申し訳ない」
「別に謝らなくても良いわよ。
ほら、剣2本貸してちょうだい、すぐ始めるから、あなた達も早く離れてなさい」
「り、了解しました」
アリーゼに従いブレイブスの正規兵標準装備の剣を2本渡し、兵士達も訓練生に続いて観客席へと退避する。
それを見届けると、アリーゼは剣をキャロルとセシルに渡そうとするがセシルはコレを拒否。
「アリーゼがキャロルに勝ったら、その時はあたしが相手をするわ、どうやらお姉ちゃんは1対1をご所望みたい」
「舐めてる、ってわけじゃ無いのは分かるわ、分かった、1対1でやりましょう」
「ありがとうセシル、お膳立てしてもらって。
では、アリーゼ様、胸をお借りしますね」
キャロルは受け取った剣を鞘から抜き、アリーゼから距離を取り、縦、横、斜めと数回素振りをする。
今年10歳になる幼女がまるで小枝でも振るかのように片手で鋼鉄の剣を振るのだ。
「ちょっと軽いな、まあ仕方ない」
観客席からその様子を見ていた訓練生達がにわかにざわついた。
「子供が片手で振れる物じゃ無いぞ」
「あの子もハーフドワーフなんだろうか」
「アリーゼ様の相手が務まるのか?」
兵士達の心配をよそに模擬戦は開始された。
アリーゼが宙に描いた魔法陣から、キャロルの持つ剣と同じ物を取り出して構える。
それを見てキャロルは先制、数メートルほど空いていた間合いを、アリーゼ目掛けて一直線で跳び潰し、剣を振り下ろす。
「はやっ!」
一瞬で潰された間合い、振り下ろされる剣。
アリーゼは間違いなくこの時瞬きをしていない。
しかし気が付けばキャロルは眼前で剣を振りかぶっていた。
「っつ!」
防御の為、剣を横に構えるアリーゼだったが、キャロルはそんな事お構いなしに、振りかぶっていた剣を振り下ろした。
剣と剣がぶつかり鍔迫り合うアリーゼとキャロル。
「アリーゼ様、私はあなたの本気が見たい。
お願い出来ませんか?」
「そうね、正直な話し、ここまで化け物じみてるとは思わなかったわ。
1合受けてみたから分かるわ、手加減の必要はないってね」




