戦う理由
「じゃあ改めて、キャロルちゃん、セシルちゃん、二人のブレイブファクトリー入所を歓迎するよ」
「ありがとうございます。
キャロル・リフテル、誠心誠意務めさせて頂きます」
「同じくセシル・リフテルこれからよろしくです」
深々と頭を下げる二人にルクスは微笑み、ベルマンの淹れた紅茶を一口飲む。
「さて、二人とも入所は確定なんだけど、一般の試験も受けたいんだったね。
まあ理由は分かるよ、その容姿は否応なしに目立つからねえ「子供が特別試験に合格する筈ない」って言ってくる人は、まあ残念だけどいるだろうし。
うん、良いよ。
一週間後に人員募集をかけるから、その時試験を受けられるように手配しておくよ」
「ご配慮ありがたく思います」
「気にしないでよ、こちらもリアの剣を受け、捌いた二人を迎えるためならなんだってするさ。
それにファクトリーは実力主義だしね、試験の日に見せつけてやると良いさ、君達二人の力をね。
あっ、お茶冷めちゃうともったいないし、先に飲んじゃおうか」
「はい、頂きます」
「お菓子美味いです」
ベルマンのお茶とお菓子を堪能する面々。
リアとセシルが一つの皿に置かれていたチョコ菓子の最後の一つの争奪戦を始めたあたりでキャロルが空になったカップを置くと、見計らってルクスが再び口を開いた。
「君達二人が軍人を目指す理由を聞いても良いかな?
シルヴィア様が迎えに行ったからって、君達二人にその意思がなければ、シルヴィア様は君達を連れては帰らなかった筈だよね。
と言う事は君達は自ら軍人になる道を選んだわけだからね」
「詳しく話しても信じて頂けるかどうか分かりませんが。
言うなれば使命、天命と言った方が適切でしょうか、私達姉妹は生まれた時に主より命を受けました、この世界を救え、と」
「あとまあ、個人的な理由もないわけじゃないんですよ。
私達の父親はトラリシアからの義勇兵として戦場で死にましたからね、まあ仇討ちってほど憎しみ溢れてるわけじゃないけど、やられたらやり返すのは礼儀かなって」
チョコ菓子争奪戦に勝利したセシルがそう言って笑ったが、目元はそうでもない。
おちゃらけて見せたがルクスやリア、ベルマンは確かにセシルの微かな殺気を感じていた。
「良いじゃねえか怨恨混じりでも、強くなる理由も軍人になりたい理由もそれで十分説得力がある。
分かりやすいしな、俺は好きだぜそう言うの」
他の皿から掴んだクッキーを口に放り込み、噛み砕くリア。
口から少しこぼれ落ちるクッキーの欠片、その様子にルクスは手拭い、リアに渡した。
「天命か、なるほどね、そして君達自身にも使命感以外の戦う理由があるって事なんだね。
無理矢理戦わされる事になった、って話しだったんならシルヴィア様の所にちょっとお話しに行くつもりだったけど。
それなら仕方ないね。
じゃあとりあえず今日から一週間はこの隊舎で寝泊まりして貰おうかな、部屋は用意させるよ、服は……訓練生用の物を特注で用意させるかな」
「ありがとうございます、改めてよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしく」




