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ルクスの部屋

 しばらくと言わず、二人が少し待っていると部屋の中から「お待たせ、どうぞ中へ」と、ルクスが扉を開けた。

 つなぎ姿のルクスとはうって変わって、軍服を身に纏ったルクスからは物腰の柔らかさこそ同じだが、少しばかりの緊張感を感じられた。

 

 「失礼します」


 キャロルとセシルが同時に言い、部屋に入る。

 ルクスの自室、いわゆる執務室な訳だが、ガーデニングが趣味と言うのは本当の事のようで、執務机や窓際、壁際、応接用のローテーブルの上、至る所に花が飾られていた。

 

 「綺麗だろう? そっちの花は君達の故郷から種を取り寄せたんだよ? トラリシアは良いよね、女神様の加護で温暖な気候が長く続くから綺麗な花が多くて」


 言われてルクスが指を指した方に目をやると、確かに街なかでも見られた赤い花が窓際に飾られている。

 

 「本当に花がお好きなんですね」

 「うん、花は良いよ、見た目も香りももちろんだけど、育てる時の過程も、試行錯誤も、全部が楽しいんだ」

 

 応接用のローテーブルの方に案内されるまま、ルクスがソファに座った対面の二人掛けのソファに腰を下ろすキャロルとセシル。

 どうやらリアの到着を待つらしい。

 しばらく談笑するようだ。


 「今こそブレイブファクトリーで総隊長なんてやってるけど、本当は故郷の街で花屋を営むつもりだったんだよ、子供の頃からの夢でね」

 「なんでそれが今、人類の最終兵器の総隊長に?」

 「こんなご時世だからね、徴兵されて訓練中に魔法の適正ありって事で、上官にブレイブファクトリー行きを言い渡されたんだけどさ。

 ここでの適正試験で合格してからしばらく各地を転戦して、何度も死にかけている内に、自分より強い人がいなくなっちゃってね」

 「叩き上げなんですね、良かった。

 机上の空論を並べるようなタイプの上司じゃなくて」

 「分かるよお、僕の先輩にもいたなあ、口だけ達者な人、まあ死んじゃったけど」

 

 などと話していると、部屋の扉がノックされた。

 リアかと思ったがルクス曰く「彼女はノックなしで入ってくる」との事。


 「どうぞ、開いてるよ」


と言うルクスの言葉に「失礼いたします、お茶をお持ちしました」と扉から声が聞こえると、ワゴンにお茶とお菓子を乗せて、ルクスと同じ軍服を着た白髪の老紳士が現れた。


 「ルクス様、こちらが」

 「うん、そう新しい子達だよ。

 キャロルちゃんとセシルちゃん。

 二人とも紹介するよ、彼はベルマン、彼の入れる紅茶やお菓子はおいしいんだ」

 「お褒めにあずかり光栄ですな、お嬢様がたのお口に合えばよろしいのですが」


 老紳士は言いながら慣れた手つきでお茶を入れると、三人の前にお茶を並べ続けてお菓子を置いていく。

 そんな時だった。

 

「入るぞ!」


 とだけ言って、蹴り開けたかの勢いで扉を開けたリアが姿を現した。

 先程の鎧姿ではなく、ルクス達と同じ軍服だが、下は丈の短いスカートだった。

 

 「お、ベルマンの爺さんもいるのか俺にもお茶くれ」

 「もちろんですとも」

 「あのさあリア、いつも言ってるけどもうちょっと静かに入ってこれないかい?」

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