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試験

「へえ、なるほど、こいつは驚いた……」


 大聖堂内の祭壇の前に仁王立ちしていた女性が目を細めながらそう言った。

 ルクスとはまた少し違って、濡れ烏のような艶を放つ肩より少し長い黒髪の女性は歩み寄ってキャロルとセシルを見下ろす。

 キリッと吊り上がった目からキャロルとセシルは微かに殺気を感じていた。

 

 「おいルクス、お前正気か?

 こんなガキの相手を俺にさせる気かよ」

 「あのねリア、いつも言ってるだろ? 外だけじゃなくて内にも目を向けろって。

 あと、君は可愛い女の子なんだから、もうちょっとその言葉遣いどうにかならないのかい?」

 「お、おおお、お前! だ、誰に可愛いって言ってんだ、女だからって舐めてんのか!?」


 ルクスにリアと呼ばれた女性はルクスの言葉に頬を紅く染めて激しく狼狽える、その様子から褒められ慣れてないのは一目瞭然だ。


 「なるほど、可愛い」

 「お、セシルちゃん分かるかい? そうなんだよ彼女って猫みたいな可愛さがあってね」

 「うっせえよルクス! おら試験すんだろうがよ! ちゃちゃっとやるぞ!」

 「おっとそうだったね、じゃあ僕は少し離れているよ」

 

 それだけ言い残してルクスは壁際へと歩いていく。

 それをリアは目で追いながら舌打ちするが、頬は赤く染まったままだった。


 「ったく、内にも目を向けろだって? 言われなくても見てるっつうの。

 なんだよこの魔力の量と質、バケモンじゃねえか。

 問題はそこじゃねえ。

 ガキども、勇者、いや、軍人になりてえってんなら覚悟を俺に見せてみろ」


 そう言って、リアは腰に差している曲刀、刀を鞘から抜き、構え、そして一気に踏み込み、キャロルの眼前へ。

 そして振り上げた刀を振り下ろした。

 しかし、その刃はキャロルに届く事は無く、ボギンと鈍い金属の折れる音を聖堂に響かせた。


 「こいつ……とんでもねえな」

 「失礼しました試験官、本気の殺気でしたので」


 キャロルの頭部目がけて振り下ろされた刀。

 しかしそれは白刃取りの要領で交差したキャロルの手の甲が砕き折った。


 「先にキャロル狙ってくれて助かったわ、私じゃ対処できなかったっし」

 「何をいけしゃあしゃあと言っているのかしらこの子は、あなただって近接はお手の物でしょうに」

 「いやいや、あのスピードは無理だからね?」 

 「おら、よそ見すんな、次はそっちだぞ」


 リアの試験は続行中だった、キャロルの眼前で身をひるがえし、折れた刀に手を添える。

 体勢としては突きの構え、そしてそこから子供相手ではまず使わない突きという攻撃を殺意をもって容赦なくリアは繰り出す。


 「うわっちょ、あっぶないじゃない」


 などと言いながら、セシルはその突きを手元に出現させた魔法陣から取り出した二丁の銃の内の一丁で受け流し、体を回転させて威力を殺し、銃口をリアに向けるとこちらも容赦なく引き金を引いた。


 「あんたも大概バケモンじゃねえか」


 必殺必中の距離で放った弾丸を口で受け止め、かみ砕くリアの姿を見ながら冷汗を流すセシル。


 「いや、俺の初撃をガキの分際で叩き折ったり、受け流して更に反撃してくるお前たちの方がよっぽど化け物だよ。

 まあこれは合格にするしかないだろ。

 名乗るのが遅れたな、俺はリア・ゾルデ・フェルネイト。

 これでもブレイブスの副長だ」


 予想以上にお偉いさんだった。



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