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ファクトリー

 勇者養成機関ブレイブファクトリー。

 グランゼリアの首都に存在し、首都の中央に位置するシルヴィアが祈りを捧げる塔と、首都城壁の正門との間に位置するこの場所。

 トラリシアとは比べ物にならない都会の街並みに、忽然と現れる白煉瓦の大聖堂を思わせる外観の建造物。

 その大聖堂を囲む壁は城壁程ではないが、一般人ではまず中を覗くような事など出来ない。

 しかし、大聖堂とは表現してはみたもののとてもではないが軍事施設には見えない。


 「おお、結構な規模の結界じゃない?」

 「そうね、首都外周城壁よりも強固な代物みたい中は恐らく異界化しててもっと広大だと思う」


 馬車の中からブレイブファクトリーを一目見たセシルとキャロルが素直に驚いていると、馬車は施設正面の門の前で止まった。


 「あの、本当にお二人だけで行かれるのですか?」

 「はい、ここまでありがとう御座いましたシルヴィア様。

 昨晩話した通りに私達はここから、実力でブレイブファクトリーに入所します」

 「シルヴィア様の声を借りちゃうと、戦場に出ても天使って偶像扱いで後方待機のお飾りにされかねないしね」


 グランゼリアにたどり着く前の晩の話しだ。

 セシルの言った通り、シルヴィアの推薦で入所試験をパスしては戦場に出たところで宝物扱いで前線に出る事が出来ないかも知れない。

 最悪ブレイブファクトリー内で軟禁状態になりかねない。

 二人なら突破も可能だろうが敵は人類ではない。

 問題を起こさないように、尚且つ、迅速に前線に降り立つ為には、順当に試験を受け、合格し、養成機関内部で結果を出す。

 そうすれば自ずと主力入り、前線に引っぱりダコという訳だ。

 急がば回れとはこういう事かな、とセシルは思いながら肩を竦める。

 

 「では、シルヴィア様、またお会いしましょう」

 「同じ街にいるんだし、いつでも会えるでしょ?」

 「ファクトリー内に合格者が現れれば私が祝福の儀を執り行う事になる筈です、またその時に。」


 2人は挨拶もそこそこに馬車を降りると軽く頭を下げ、シルヴィアを見送った。

 シルヴィアも重要人物であるならファクトリー内が安全だとも言えるが、国外への避難を拒否した勇敢な国王への神託の結果報告義務がある。

 何より彼女自身神官としての職務もあるのだ。


 「さあて、それじゃあ」

 「ええ、セシル。

 お邪魔しましょう」


 2人は真っ直ぐファクトリーの門へと向かった。

 まずは門の前に佇む二名の騎士の相手からだ。

 

 「この度私達2人はブレイブファクトリー入所試験を受けさせて頂きたく思い馳せ参じました。

 キャロルと申します、コッチは妹のセシル。

 どうか試験官様にお取り次ぎ願います」


 兜で年齢は分からないが、若い青年であろう騎士はキャロルの突然の口上に驚いていた。

 

 「君達はここがどういう場所か知っている訳だね。

 しかし若すぎるよ君たちは」


 馬鹿にしている訳ではない、幼い少女が勇者という一種の兵器として戦いたいとファクトリーの門を叩く。

 そんな状況を嘆いている感が騎士2人にはあった。


 「百も承知です、しかし戦える力があるのにそれをしないというのはもう出来ません。

 どうか1度で構いません試験を受けさせて下さい」


 セシルが言いながら足元に炎を燻らせる。

 トラリシアでキャロルが母に魔力で創った羽根を見せたのと同じ、ようは演出だ。


 「魔術に才あり、か。

 分かった取り次いでみよう、来なさい」


 かくしてセシルの目論見は成功。

 2人はファクトリーの敷地に足を踏み入れる事が出来た。

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