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道中昔話

 盗賊の襲撃なんのその。

 セシルの戦いぶりをキャロルは感心の目で追っていた。

 盗賊の振り下ろす刃を避けたかと思うと、手にした銃が火を噴き、たちどころに盗賊達は鏖殺されていった訳だが、どこか舞踏にも見えたセシルの動きに、キャロルはつい考えてしまう。

 私ならセシルの動きに、どう対応するだろうかと。

 キャロルの前世の世界にも銃という武器は存在したが、これほどの使い手には、世界中を旅した勇者も会う事は無かった。

 いつぞや、故郷トラリシアの街角にあった廃墟で昔話に花を咲かせた際には、セシルは前世で魔導師として戦っていたとキャロルは聞いていた。

 しかし、初めて目にしたセシルの対人戦闘はキャロルの知る魔導師のそれとは大きく異なっていたわけで、改めてキャロルはセシルの生前いた世界が自分の生前の世界とは全くの別世界なのだと実感していた。


 「キャロルもなんだかんだで戦闘狂の気があるよねえ」


 シルヴィアに聞かれて困る話しでもないが、それでもキャロルがセシルに教えた念話で話をしていた2人。

 キャロルがセシルに先程の戦闘について楽しそうに聞いてくるものだから、セシルは苦笑がちに言った。


 「……まあ、そうかも知れないわね」

 「ちょっと意外だなあ、勇者って言えばさ、清廉潔白! みたいな感じなのかと思ってたから」

 「以前あの廃墟でも話したじゃない?

世界を救ったのはあくまで結果でしか無かったって。

 きっかけは魔物に村を襲われて、村の自警団の一人として戦ったのが始まり。

 恐怖が無かった訳じゃない、でもそれよりも戦っている最中は正直、楽しかったの」


 グランゼリアに向かう馬車の中、補修されたドアのガタガタ揺れる音に耳を傾け、窓に映る自分の姿を見ながらキャロルは前世を思い出す。

 

 「そうね楽しかったわ、初めて自分より大きな魔物を殺した時、初めて強大な龍を殺した時、アイツと戦ってる間も。

 村を出て冒険者をやってるうちに私は知りたくなったの、自分はどこまでいけるのか、って。

 勇者って言われ始めたのは、パーティーを組んでた仲間達と魔王軍の幹部クラスを一人殺したあたりからだったかしらねえ

 私は強くなりたかっただけなのだけど、皆には死地に赴き魔王軍を討伐する勇者に見えたのでしょうね」

 「間違っては無いんでしょう?」

 「まあね、でもまあ私にとっては強くて討伐報酬の高いやつを求めて戦って、戦って、戦って、すべてに勝利していった結果、アイツといつの間にか対峙していただけなんだけどね」

 「別に良いんじゃない?  

結局、それをどう捉えて伝えるかは他人な訳だし」

 「まあ最後に死んでしまったわけだしね、もう前世の世界で私の事がどう伝わっていったかなんて確認しようもないものね」

 

 そんな話をしながら数刻が経過し、山越えも終了。

 一行は遂にグランゼリアへと到着した。

 そびえ立つ城壁と荘厳で重厚な門はトラリシアのそれとは比較にもならない。

 人類の切り札、勇者を育てる養成機関、ブレイブファクトリーはこの門の先だ。


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