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別れと報せ。

トラリシアを発ったキャロルとセシルはシルヴィアの案内でグランゼリアの勇者養成機関、通称ブレイブファクトリーへと向かう。

 そこでの新たな生活、新たな出会いは2人に何をもたらすのか。

 第二章、スタートです。

 トラリシアを発ったキャロルとセシルは馬車に揺られながら母マリエラとの別れを思い返していた。

 

「あたしさあ、前世では母親って顔すら知らなくてさ。

 物心ついた頃から銃抱えて戦場走り回ってたから、母親と別れるってのがこんなにも心苦しいなんて」

 「前世と合わせれば私は二度目になったけど、慣れるモノでは無いわね、流石に辛い」


 遠ざかるトラリシアの街を囲う城壁を眺めながら2人は溜息を吐いた。

 馬車に乗るまでにマリエラは長い間2人を抱きしめていた。

 しかし、行くなとは言わなかった、言えなかった。

 自分一人の我が儘で人類全てを危険には晒せない。

 マリエラが辿り着いてしまった答えは娘2人を戦地に送ると言う、あまりにも残酷な物だった。

 そしてその答えに導いてしまったのが自分だと言う事に、自責の念を感じずにはいられなかったシルヴィアは母娘の別れ際に泣き崩れてしまった。

 何度も母娘に「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返すシルヴィアに、マリエラはただ一言「娘達をお願いします」と言い、最後に2人の額と頬に口付けすると、2人を離した。

  マリエラはそれまで我慢していた大粒の涙を声も無く零しながら、遠ざかる馬車を見送り顔を手で覆う。

 そんな様子を、馬車の窓から見てしまったモノだから、泣き疲れて眠ってしまったシルヴィアの前に位置する席で前世の話しをしながら2人は感傷に浸っていたわけだ。


 「この世界に生まれ変わって9年、もうすぐ10年かしら、初めて見たわね、セシルの泣き顔」

 「うるさい。

 仕方ないじゃない、あたしにとっては初めての事なんだから」

 「まあ人の事は言えないか、私も気を抜けば涙腺が緩みそうだし」


 などとキャロルは言っているがもう大分涙目である。

 

 さて、トラリシアを離れ、キャロル、セシル、シルヴィアを乗せた馬車がグランゼリアへ向かい出発して数日経った頃だ。

 一人の騎士が、馬を休憩させる為に立ち寄った町の宿で休憩していたシルヴィア達の部屋を訪れた。


 「シルヴィア様、お耳に入れたいことが」

 「どうされました?」


 部屋に入り、キャロルやセシルとテーブルを囲んで、今後の予定を話していたシルヴィアに騎士は報告する。

 その内容は魔王率いるデモニウス連合軍が進軍を停止したと言う事だ。

 

 「不可解ですね圧倒的優位な筈の魔王軍が進軍を止めるなんて」


 シルヴィアは軍属ではないが事が事だけに騎士も伝えずにはいられなかったという感じだ。

 デモニウス連合軍の進軍停止それは仮初めではあるが、一時的に平和が訪れると言うことなのだから。

 

 「アイツ、待ってるな」

 「キャロル、何か心当たりがあるの?」

 「アイツは根っからの戦闘狂なの、私達の存在を知ってそれでもなお進軍停止とくれば、恐らく私達の成長を待つつもりなんでしょうね。

 私達が今より身体的に成長し、アイツも力を使うのに十全になったところで再進撃するつもりなんでしょ」

 「強い奴と戦いたいって奴? あたしには理解出来ない思考だわ」

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