2人の行き先
前線に赴くにあたって、キャロルには一つ危惧すべき事があった。
それは、自分達姉妹の幼さだ。
自分達は良い、前線に出て、前世でもそうだったように剣を握り、眼前の敵を屠り、魔王の元に辿り着いて決戦に持ち込めば、後は全身全霊で戦うだけだ。
しかし、周囲の人間はどうだろうか、幼い少女が戦う姿を見てどう行動するだろうか。
戦線の矢面に立つ兵達が黙って見ているだけの筈もない。
ある者は少女に向けられた攻撃から少女を守る為にその身を晒すだろう。
ある者は戦線に幼い少女が立つことに苦言を吐き、幼い少女を戦わせまいと先駆ける事もある筈だ。
詰まるところ、戦線にキャロルとセシルが赴けば所属する軍の士気に影響が出かねない。
それも間違い無く悪い方向で、だ。
いかにキャロルやセシルの力が強大でも、これから2人が向かうのは戦争だ、個人の力が及ぶのは手の届く範囲程度。
キャロルが単身切り込んで、魔王アンジェリカを討ったとして、ソレまでに戦線が崩壊し、進撃されてしまえば頭を失った魔物達は人間界を食い散らかす。
それでは意味が無い。
「単独行動は軍の統率を乱しますし、かといって私達が軍属になったところで「こんな幼子が戦争に参加するのか」と、士気を下げる事は避けたいですね」
食事も下げられたテーブルに視線を落とし、キャロルが呟く。
「でしたら」
と、キャロルの悩みに答えたのはキャロルの正面に座るシルヴィアだった。
「グランゼリアに勇者を養成する機関があります。
老若男女問わず、才能ある人材を勇者として育てる学び舎に近い施設ですが、そこで優秀と認められれば戦線に否が応でも駆り出される事になります。
ブレイブスの一員、勇者として」
「勇者」
やはり後ろ髪を引かれる思いと言うのか、戦線に赴く方法を本当なら教えたくは無いのだろう、シルヴィアの表情は暗いままだ。
「勇者ねえ、縁があるわねキャロル」
「ふふ、そうね全く。
でも悪くないわ、今世でもその称号に恥じない働きをしましょう」
決まりだ、と言わんばかりにキャロルは微笑み、セシルもニヤリと笑った。
「シルヴィア様ありがとうございます、私達はグランゼリアへ向かいます。
国王陛下、この度の厚遇感謝申し上げます。
私達がいない間、お母様の事お願い出来ますか?」
「もちろんですキャロル様、セシル様。
マリエラ様の護衛に2人程、まだ成り立てですが若い女騎士を付けましょう。
後は、マリエラ様の願うままに」




