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約束

 「神に仕える身として、私にはお二人の意見に口を挟む事は出来ません」

 

 シルヴィアが俯きながら呟く。

 幼子が戦場に赴くと言う、それに対して否定的な発言が出来ない。

 その行いはシルヴィアにとって自らが崇拝する神の発言を否定する事になるからだ。

 

 「シルヴィア様の胸中、お母様の想い、私達は充分に理解しているつもりです。

 しかし、私達姉妹は戦場へ行かねばなりません、それが使命ですから」

 「神様との契約もあるしね。

 まあソレはコッチの話しだけど」


 キャロルは俯くシルヴィアを優しく見つめ、セシルはそんなキャロルを茶化すように言う。

 そんな2人にマリエラは言葉を詰まらせる。

 

 「約束、してくれるかしら」


 しばらくの沈黙の後、マリエラが震える声でやっと絞り出した言葉だった。


 「お母様との約束なら絶対に破りません」

 「そうよ母様、私達約束は絶対守るわ」


 隣に座る娘2人から返って来た言葉には、絶対の自信が宿っていた。

 片や人々から望まれ、救える者は全て救って来た元勇者。

 片や約束事、契約には絶対遵守の元傭兵。

 自信たっぷりに返答するのも無理は無い。

 が、セシルにとってはこの後交わす約束に関して、まずは契約内容を確認してから契約書にサインしましょうと、傭兵に、いや傭兵に限らず社会に生きる人間とって、基本中の基本と言える事を怠った罰を受ける事になる。

 まあ罰とは言っても罰ゲームレベルの話なのだが。

 

 「絶対に生きて返ってきてね2人ともこれは絶対だからね。

 あともう一つ。

 キャロル、セシル、戦争に行ってもちゃんと女の子らしくはしてね。

 無事に帰って来ても可愛い娘2人が男勝りな風で帰ってきたら。

 想像しただけでも眩暈が」


 そんなマリエラの言葉にキャロルは「分かりましたお母様」と笑ったが。

 セシルは「女の子らしくと言う事に関しては保障出来ない」と言いかけたところ、キャロルに貫手で脇腹を強打され悶絶した。


 「さて、やる事は決まりました。 

 猶予が無いわけでは無いですが、早く動くにこしたことは無いでしょう」

 「キャ、キャロル、あんた、割と本気で痛いんだけど」

 「約束は守るのでしょう? グダグダ言わないのよセシル」

 「ぐぬう」


 自分の発言である以上、キャロルの言葉にぐうの音も出ないセシル。

 いや、出てはいるがキャロルの言葉に一切の反論が出来ずにセシルは苦虫でも噛んだような表情を浮かべていた。 

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