城での再会
二人が案内された浴場は、セシルの予想を遙かに超える豪華な大浴場だった。
本来なら王族や、国賓のみに使用され、城勤めの兵や家臣の者であっても使用は許可されていない。
ましてやキャロルとセシルは城下町に住む平民、平穏無事に暮らしていれば見ることすら出来ない場所でもあった。
そんな場所に案内された二人は、あれよあれよという間にスッポンポンにされ、メイド達に体を洗われると、大浴場の浴槽に入れられたのがつい先程の話し。
「キャロル、なんか慣れてるな」
この場所に来た時からそうだった。
メイド達に服を脱がされる時も、恥ずかしいからと、自分で服を脱ごうと抵抗したセシル。
しかし、キャロルはというと終始メイドに任せていたし、豪華な装飾や、セシルの体が前世と違って幼女なので、余計に広く感じているだけなのだが、それでも十人以上は楽に入れそうな程に感じる大理石と似た素材の石で出来た浴槽。
そんな場所でキャロルは普通に湯浴みを堪能していた。
肩まで湯につかり、普段は見せない、緩みきった表情を浮かべている位にはリラックスしている。
「いやなに、昔、前世で勇者をしていた頃、旅先の国の城で似たような歓迎をされた事があってね」
「なるほどなあ、体験済みって事ね。
俺……あたしの前世の暮らしじゃあ広い風呂っていったら、基本的にはスーパー銭湯とかだったしなあ」
「スーパーせんとう、何やら強そうな響きだな」
「字は戦うに闘うの戦闘じゃあねえからな?」
「そうか、違うのか」
お互い前世を思い返しながら、幼女二人には広すぎる浴槽で湯浴みを堪能する。
そんな時、浴場と脱衣所を隔てるカーテンの方から耳慣れた声が聞こえてきた。
「本当にここに娘達がいるんですか!?」
「ん、この声って」
「お母様?」
それから、メイドであろう「いけません、お客様なのですから」と言う声と「いえとんでもない、自分で脱ぎます」と言う母親のものらしき声が聞こえてきたかと思うと、メイドに案内されて、確かに母親が姿を表した。
「キャロル!セシル!」
「お母様?なんでココに」
二人の姿を確認するなり、駆け出す母。
しかしここは浴場、走れば滑る、それが風呂場。
母は浴槽一歩手前で盛大に滑り、そのまま二人のいる浴槽に尻からダイブする事になった。
浴場で走るのは大変危険です、絶対走らないようにしましょう。
「お、お母様、大丈夫ですか?」
「母様~、おーい」
「ちょっと、大丈夫じゃないかも」
どうやら頭をぶつけたらしい、頭を抱え、苦悶の表情を浮かべる母。
そんな母親を心配して近寄る二人。
その二人を母は痛む頭もお構いなしに抱き寄せた。
「そうよ、大丈夫じゃなかったわよ。
シルヴィア様から聞いたし、見たけど、あなた達はそれでも私の、私とあの人の大事な娘なの、心配で心配で、胸が張り裂けそうだったわ」
「ごめんなさいお母様」
「ごめんね母様」
母親の頭に手を当て、もはや隠す必要はあるまいと、回復魔法を使うキャロル。
「ありがとうキャロル、本当に凄いわね」
「体には気を付けて下さいお母様」
聞くところによると、母はシルヴィアが城へ避難する際に一緒に連れて来られたそうだ。
シルヴィアが母を国賓待遇以上で接するように衛兵に言っていたらしい。
そしてそれをトラリシア王も配下全員に命じたそうだ。
天使を授かり、生み、育てた。
聖母として丁重にもてなすようにと。




