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災害級の魔術

詰所から飛び出し、セシルは銃を携えてキャロルの元へと戻った。


「どうしたんだそれ」

「優しい兵士さんが貸してくれた」

「……そうか、さっき詰所の方から魔術の発動を感知したが」

「よっしゃあ! さくっとぶっ飛ばすぜぇ!!」


話をぶった切るセシルに何があったかをだいたい察して、キャロルはため息を吐く。

しかし、自分が手詰まりである以上邪魔するわけにもいかず、キャロルはセシルに「任せるわね」とだけ言ってセシルの肩をポンと叩くと、もしもの時に備え、防護術式展開のための準備を始めた。


概念武装(デバイス)登録完了、広域殲滅術式高速展開!!」


以前、セシルは元居た世界でこの術式が展開されるのを見たことがあった、圧倒的不利な戦況、絶体絶命の状況で傭兵だったセシルの兄貴分が自分たちを救うために発動したこの術式は、かくしてセシル達傭兵部隊の皆の命を救った。

その命を代償に。


「兄貴……やっぱこの術式は魔力を喰いすぎるって」


発動しながらに過去を思い返す、敵を薙ぎ払い、魔力どころか生命力すら使い果たし、夕暮れを背に崩れ落ちた男の背中を。

恐らく、いや確実にセシルも以前の世界、以前の身体でこの術式を発動したならば、男と同じ末路をここで体現する事になっただろう。

しかし今、神の恩寵を受け、無限に魔力の沸いてくる、ある種の化け物と化しているセシルはこの術式を躊躇わずに展開しようと思えたし、そして成し得た。


「精々ビビれやジジイ、ついでだ、あの時できなかった弔いに、これを届けてやるぜ兄貴」


片手でマスケット銃を持ち上げ、トラリシア上空の魔法陣に銃口を向ける。

木製の部分も金属の部品も、一転、セシルの握っている個所から色どころか素材すら変化しているのか、銃身すべてが真っ黒な重金属のように変化し、その黒い銃身に幾何学的な発光するラインが刻まれる。


それと同じくして、銃口の先、上空に向かって一層、二層、三層と魔法陣が展開されていく。

一層目より二層目、二層目より三層目、一回り、二回りと規模を拡大する魔法陣は、三層目に至ったところで更にその先に十字を刻むように無数の魔法陣を展開する。


「広域殲滅術式、撃つ!!」


セシルは再度照準をトラリシア上空に浮かぶ魔法陣に合わせ、引き金を引いた。

銃口の少し先から放たれた魔力の光が一層目の魔法陣に放たれ、一層目の魔法陣はそれを吸収し、今度は一層目から二層目の魔法陣へ魔力の光が網の目を伸ばすように魔法陣の中心から放たれる。

それを吸収した三層目の魔法陣はそれを更に拡散させ、十字に展開した魔法陣すべてに魔力を届ける。


そして、十字に展開した魔法陣すべてから、最初に放った魔力の光からは想像もできない程の巨大な魔力の光を生み出し、放った。


捻じれる魔力の光がまるで蛇のように絡み合い、竜巻のごとく広がり、その巨大さを増しながらトラリシア上空の魔法陣へと向かう。


巨大な魔力で出来た竜巻はトラリシアの魔法陣で紅く染まった夜空を青く塗りなおしていく。


「っは、まるで昼間だぜ」


結果としてセシルの放った広域殲滅術式はトラリシア上空の魔法陣を、その魔力の奔流でもってかき消した。

その威力は凄まじく本当に嵐でも来たのではないか思えるような暴風と騒音を辺りにまき散らす。


「防護の術式が無駄にならずに済みそうだな」


キャロルはセシルの術式の威力に感心しながらも、皮肉交じりにそう言いながら町の一部に飛散した木や岩などが直撃しても無事なように防護術式を展開するのだった。

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