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邂逅=再会Ⅳ

キャロルの斬撃とアンジェリカの斬撃が交錯し、剣と剣がぶつかる音と言うよりはもっと重い鉄板同士がぶつかり合うような音が周囲に響き渡る。

何度も何度も打ち合い、強化の術式が施された剣であったが、双方の剣は徐々に欠けていく。


「やはり、こんななまくらでは駄目だな」


呟くアンジェリカ。

眉をひそめるキャロル。


それは不意に訪れた。

避け、避けられ、隙があったからではなく、隙を作るために剣を振った。

とは言えそのどれもが当たれば必殺ではあるが。

お互いに少し後ろに跳び、力一杯打ち込んだ際、持っていた剣が、バキンと音をたてて折れたのだ。


「流石と言わせてもらおうか勇者よ、その小さな体で良くもまあ動けたものだ」

「それは貴様もだろう」

「っは、違いないな」


鼻で笑いながら、折れた剣の柄を、まるでゴミでも捨てるかのように後ろに投げるアンジェリカ。

一方で、キャロルは折れた剣の柄に魔力を流し込み、魔力でもって刃を形成しようとするが、それに耐えられず、剣の柄は塵と化してしまった。


「いやはや、やはり貴様との殺し合いは滾るな、だがその力、惜しくもある。

なあ勇者よ、魔王城の玉座の間で私が言ったことを覚えているか」

「忘れたよ、貴様の言葉なんてな」


嘘だ、あの日、キャロルにとっては最終決戦を迎えた10年前のあの日、魔王が言った言葉をキャロルはちゃんと覚えていた。


「そうか、まあどっちでもいいさ。

あの時は仲間になれと言ったが、今度は別の言葉を送ろう。

勇者よ、私の嫁になれ、今の貴様は将来さぞ美しく、そして強く育つだろう。

私の妻として隣に立つ権利をくれてやるぞ」

「貴様は戯けた事を――」


睨み合う二人を割ったのは、バジリウスと魔術戦を繰り広げていたセシルの魔術弾の流れ弾。

見ればセシルがむせて咳き込んでいた。

今の会話が聴こえていたのか、どうやら動揺して照準がズレたようだ。


「女同士で嫁に来いとか、そもそも魔王が勇者を勧誘とかホントにあるとは思わなかったわ」

「戦時によそ見かね?」


バジリウスがセシルの隙を突こうと術式を展開するが、それをアンジェリカは干渉して止めてみせる。


「待てバジリウス。

そこの娘っ子、貴様もどうだ? このバジリウスとその齢で此処までやりあえるのだ、私の寵愛を受けることを許してやってもいいぞ?」

「敵と寝るとかそう言うのはスパイ活動中だけでいいわ。此方には百合の気もねえしな」

「おやおや、二連敗か。

まあいいさ、さて剣も無くなったし、興も逸れたし。

挨拶はこの辺で終わりにしようかしらね、自らこんなド田舎まで足を運んだ甲斐はあった訳だし」


自らの足元に魔方陣を形成するアンジェリカ。

その様子に、バジリウスもアンジェリカの側へと短距離の転移で移動。

その様子から、その術式が移動用だと予想するのにそう時間は掛からなかった。


「待て魔王!! 逃がしはしないぞ!」

「てめえもだクソジジイ! ここで死んどけ!!」

「このアンジェリカ、貴様らを娶る事諦めたわけではない。また戦場で会おうじゃないか。

まあ今日は長距離の転移でいささか疲れたんでな、悪いが帰らせてもらう」


武器は無くともと、拳に聖光輝を纏わせ、アンジェリカの元へと駆け寄ろうとするキャロルと、ありったけの魔方陣を展開させ、魔術弾を放とうとするセシル。

だがそれは、不意にアンジェリカが天に手を掲げ、上空に出現させた魔方陣によって止められる事になる。


「追ってきたいなら来たまえよ、その代わり、トラリシアには消えてもらうがな」

「この術式、クソジジイ、あの術式を魔王の嬢ちゃんに」


展開された術式、それは10年前、ある傭兵を傭兵のいた施設とその周囲十数キロごと灰に変えたあの術式だった。

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