邂逅=再会Ⅲ
約10年。
生まれ変わってから過ごしてきた時間は短くない。
それでも、忘れられないことがある。
最後の仕事、いや、傭兵の男にとってその仕事はとるに足らない、本作戦に移る前の強行偵察任務、ようは露払いの筈だった。
できるだけ多くの情報を持ち帰り、出来うるならば施設の破壊と敵兵の排除。
撤退のタイミングは自由。
報酬は持ち帰った情報量と破壊した施設の重要度、そして敵兵の排除数により加算されるというものだった。
しかして事件は起こる、任務の最中、敵軍科学者の一人が独断で最重要機密であった大量殺戮兵器を起動。
同時に惑星を破壊せしめる術式を展開。
科学者は多くの仲間と、敵を見境なく殺し、そして施設の最奥にて潜り込んだ一人の傭兵と出会う。
「ここまで来るとはやるじゃないか、その装備正規軍の物ではないね、傭兵か。
まあこの星もじきに終わる、それまでダンスといこうか傭兵君」
「イカレマッドサイエンティストのクソジジイ、てめえだけ死んでろ」
結果、科学者は自害、傭兵の男も文字通り命に変えて自分の生まれ育った星を守って散った。
そして、再び二人は出会うことになる。
世界をまたぎ、時代を越えて。
「その呼び方、てめえまさかあのマッドサイエンティストかよ」
「マッド、か。
まあその通りだよ傭兵君、いや今はお嬢ちゃんか」
セシルは展開していた術式の照準を魔族の青年に変え、魔力で編んだ銃弾を放った。
「デバイス無しではこの程度が関の山か、いや、デバイス無しで術式が使える時点でオーバーレギュレーション、いわゆるR指定だったな、以前よりも魔術師としての格は上がっている訳だ」
その場から決して動かず、腕のみを迫ってきた銃弾にかざし、防御術式でもって掻き消す青年。
その余裕綽々の態度にセシルは眉をひくつかせる、だいぶお怒りのようだ。
「黙ってろよクソジジイ、てめえだけはぶっ殺す」
「おやおや、女の子がそんな汚い言葉遣いをしてはいけないなあ。
それに‘時差’があったとは言え、陛下のおかげで今の私は生まれ変わった。
この世界に25年しか生きていない私はもう老人でもないよ」
「うっせえ! 今のあたしよりはジジイだろうが!」
腕を振り、セシルは複数術式を展開させ、その全てから魔力で編んだ銃弾を放つ。
「やれやれ、随分とお転婆なお嬢ちゃんに生まれ変わったものだな。
仕方ない、陛下の挨拶が終わるまでこの私、バジリウス・グリムガルトがダンスのお相手をしよう」




