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日曜礼拝での出来事Ⅱ

ほどなく、王城の方から馬車が教会の方へと向かってくるのが見えた。

護衛の程度からもその馬車に、例のシルヴィア様とやらが乗っているとキャロルとセシルは予想する。

この世界の神職であるならば、挨拶くらいはするべきか。

そう思っていた矢先、母がキャロルとセシルの手を引き、集まっている野次馬とは逆方向、つまりは教会の中へと向かった。


「あの人数が全員入ってきたら座れないからね、今のうちに座っておきましょう」


微笑みながら言う母に逆らう必要もない。

それもそうか、と思いながら手を引かれるまま教会内に入ると、三人は最前列の椅子に腰をかけた。

数刻と待たず、教会の出入り口の方が騒がしくなった。


しかし、その雑音もシルヴィアが教会内に立ち入った瞬間に鎮まることになる。

神聖な物、場所、人、それらを前にすると人は誰からともなく、口を閉ざしていくものだ。

シルヴィアの美しさ、雰囲気、もっと端的に述べるならばオーラとでも言うべきか、またはそれら全てがそうさせたのか。

教会内は野次馬だけでなく、信者達すら沈黙させてしまった。


静まり返る教会内に足を踏み入れたシルヴィアは一歩、一歩と最前列に向かっていく。

その歩みが本人でも気づかない程早くなっていく。

 

教会に着く前から、シルヴィアは感じていたのだ、トラリシアに到着した時に見た光を。


最前列に座っていた二人の幼女、その二人を前にした時、神殿で行う祈りのようにシルヴィアは膝を床に付いて手を胸の前で合わせた。


「ああ、ここに居られたのですね、天使様」


困惑したのはキャロルとセシルの母親。

二人はというと「ああ~、神の頼みでこの世界に来てるわけだから、そうなるのか」と、自分達という存在を再認識している最中だ。


「あの、シルヴィア様ですよね? 娘たちになにか」


と不安げに声を掛けたのは、母だった。

それに対して、シルヴィアは顔を上げると、膝を付いたまま母に一礼する。


「私としたことが、ご無礼をお許しください。 私はシルヴィア・プレトリウス。グランゼリアの巫女などと呼ばれています」


今度は深々と頭を下げるシルヴィアに、お付きの者や近衛の兵たちが駆け寄ってくる。


「シルヴィア様、おやめください、平民に頭を下げるなど」

「お黙りなさい、身分など関係ありません、私がやるべきだと思ってやっていることです」


近衛の兵を一喝するシルヴィアの姿に驚いたのは野次馬や信徒だけでなく、キャロルやセシルも同様だった。

可愛らしい顔立ち、法衣で隠れてはいるが、華奢な体というのは布の隙間から伺えた。

一瞥すると気弱そうな女性だが、意志の強さは放たれる言葉から伝わってくるものだ。


キャロルとセシルは対応に困っていたが母はというと冷静なものだった。


「頭を上げてくださいシルヴィア様、まずは礼拝を終わらせましょう。話はまた後程」

「そうですね、本当になんとお詫びしたらよいか」


そこからは普段通り礼拝が行われた。

グランゼリアの神官である彼女であったが、トラリシアの神父にシルヴィアが「いつも通りに」と言ったのだ。

そして普段通り礼拝は終わり、双子と母親は帰路についた。

しかし、帰路はいつもと様子が違った。

家への帰路にシルヴィアが加わったのだ。

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