「制服」
制服というモラトリアムの鎧を剥がされて少女は空を仰ぎました。
隠していた翼を広げたけれど、
吹いた風に乗ることはできないで、
黒い雨が降った地面に落下。
制服というモラトリアムの鎧を剥がされて少女は君を仰ぎました。
まるで同じ人間とは思えない程に、
きらきら眩しいのです。
彼女に黒い雨は降りそそいでいませんでした。
だから、地面に堕ちてもあの子が壊れることはなかったのです。
考える時間は失われました。
少女は生きなければいけません。
モラトリアムはもうどこにもないのです。
考えてはいられないのです。
ご飯を食べないといけません。
脳味噌を使っていたら餓死してしまいそうです。
制服を脱いだら大人になれると思っていました。
自由になれるんだって思っていました。
けれど、学校の鳥籠を飛び立ったところで私たちは大きな社会の鳥籠に囚われているのです。
制服を脱いだって大人にはなれないのです。
自由なんかもらえないのです。
生きていかなければいけません。
考えてはいけません。
モラトリアムはもうないのだから。
お腹空いていたんじゃ毎日ヤッてられねえよ。
制服着たいな。
パパに殴られてママに怒鳴られる日々は大嫌いだけれど、あんなの二度と御免だけどさ。
制服着たいな。
コスプレじゃなくて。
また制服着たい。
それで学校でちゃんと考えたかった。
どうやって生きるのかを。
そうすれば、
ちゃんと風に乗れて空を飛べていたんだろうね。