カルキュレイション ワールド 50頁
痺れた空気が辺りに伝わる
(蒼)「なんて闘いよ…」
(ヒバナ)「ヒノ…」
呆気に取られる蒼葉とヒバナ
同様に犬王軍の兵も息を呑む
(犬兵)「ガウル様の牙通一閃を止めるとは……ドベル様、我々もガウル様への加勢を致しては?」
犬兵がドベルへ促す
(ドベル)「…待て、相手は虎王の使者、下手な手出しでは被害が出る、ここはガウルに任せ暫く様子を伺う」
犬兵達は指示に従い待機する
一方キャミィとガウルは睨み合う
背後から禅輝がキャミィの肩に手を置く
(禅)「キャミィありがとな、けどここでお前が出ちまったら〝虎王軍〟の名が後々面倒起こしちまうだろ?だからここは任せてくれねぇか?」
(キャミィ)「…ありがと、禅輝」
キャミィは禅輝の背後に退がる
(ガウル)「フン、我々とて虎王軍と交える気は無い、感謝する黒鉄」
(禅)「だったら退いてくれねぇか?」
(ガウル)「それは出来ん、これは任務だからな」
再びガウルは大鉈を構えた
(禅)「頑固な野郎だぜッ‼︎」
禅輝はガウルに走っていき拳を繰り出す
〝ガキン!〟
禅輝の拳は大鉈に防がれた
(ガウル)「動きが直線的だな、それだけ拳に憑神を纏わせて向かって来れば、攻撃の予測は容易」
(禅)「ヘッ!なら防いでるついでにいいモン見してやるよ」
(ガウル)「?」
(禅)「オラオラオラオラオラ…」
そう言うと禅輝はガウルの大鉈に拳を連打し始めた
(ガウル)「クッ、何のマネだ⁉︎我が〝岩破刀〟にその程度の攻撃など傷もつかんぞ‼︎」
(禅)「オラオラオラオラオラオラ…」
一身に大鉈を連打する禅輝
(ガウル)「しつこい奴だ!そろそろ終わりに…⁉︎」
ガウルは禅輝の拳が真っ赤になり大鉈の一点も赤くなっている事に気がつく
(ガウル)「(まずい……‼︎)」
〝ピキッ〟
大鉈にヒビが入る
しかし禅輝の連打は止まらず
(禅)「オラオラオラオラオラオラオラーーッ‼︎」
〝バキーーンッ‼︎〟
(ガウル)「ー‼︎」
ついに禅輝は大鉈を二つに砕き割り禅輝の拳はガウルの胸へと食い込んだ
(ガウル)「グフッ…‼︎」
禅輝の真っ赤な拳が大鉈を砕いた光景に驚きを隠せない蒼葉とヒバナ
(蒼・ヒバナ)「………」
(蒼・ヒバナ)「えーーッ‼︎」「ヒノーーッ‼︎」
驚く二人の背後からハツネが複数の鼠兵を従えやって来た
(ハツネ)「ヒバナそこを退けぃ‼︎」
(ヒバナ)「ハツネ様⁉︎」
ヒバナはハツネの前を空ける
(ハツネ)「ん⁉︎あの人間まさか犬王軍の出世頭のガウルに膝をつかせるとはな」
ハツネは禅輝を見つめた
膝をつきながら呼吸を整えるガウル
(ガウル)「ハァ…ハァ…中々効いたぞ、黒鉄…」
(禅)「だろ?俺もビックリしたぜ、熱し易くて冷めやすい〝鉄〟の特徴だぜ!」
(ガウル)「フン、相変わらずふざけた考えだな…」
〝ピリリ ピリリ ピリリ〟
その時ガウルの無線が鳴った