カルキュレイションワールド 136頁
物陰で息を潜め夜を迎える蒼葉達
(蒼)「……夜ね…追手は撒いたみたいね」
(ニシオ)「けど領内の警備が厳しくなったよ」
(ヒガマル)「親分助けるにもまだコロシアムにいるかどうか…」
(ヤマト)「始めから親分が目的なら移送先はアルゴス城…」
(蒼)「ここはどの辺りなの?」
(ヤマト)「おそらくアルゴス城の南、イナンの町辺りだな」
(蒼)「イナン?」
(ニシオ)「イナンは殆どが廃墟になった町、住人はニシカへ移動したって聞いたよ」
(ヒガマル)「態勢を整えるのに使えそうだ」
(蒼)「そうね、一度そこに向かい作戦を立てましょ」
(ヤマト)「殆どが廃墟なら身を隠せる」
蒼葉達はイナンの町へ向かった
ーー禅輝・冴刃ーー
二人は巨大な岩の隠れ家を背に外で佇む
(冴)「おい倅、この枝を鉄に変えてみろ」
冴刃が禅輝に枝を投げ渡す
(禅)「…伝波ってやつだな」
禅輝は腕を鉄に変えその腕から枝に鉄が流れ込む
(禅)「これでいいか?」
(冴)「〝伝波〟は良いな……そしたらその枝を手離してみろ、鉄の枝でな」
(禅)「…………ん!…っあ」
禅輝は鉄の枝を手離すと直ぐ様元の枝に戻り地面へ落ちる
(冴)「まぁ最初はそうなるわな」
(禅)「なんでだ?」
(冴)「お前はただ、握る拳と枝の境で〝波〟を解いたからだな」
(禅)「……」
(冴)「枝に〝波〟を留らせる〝留波〟…イメージは伝えた〝波〟にを意思残す感じだな」
(禅)「…ん?難い説明だなおっさん」
(冴)「まぁお前みたいなタイプは身体で覚える方が得意か」
(禅)「何度でもやってやるぜ!」
(冴)「それと今の〝波〟の使い方は燃費が悪いな、必要な箇所以外の〝波〟は鉄にせず枝だけが理想だ、それが結果体力の温存に繋がる」
(禅)「はいはい〝留波〟と燃費だな、必ず体得してやるぜ!」
〝バキッ!〟力が入り握る枝が折れる
(禅)「あっ!」
ーーイナンの町ーー
朝が来る
廃墟の建物で夜を越す一同
(蒼)「無事に一夜を過ごせたわね」
(ヤマト)「相手もこの廃墟群を虱潰しで捜索するには骨が折れるからな」
(蒼)「そもそも何でここが廃墟群になったの?」
(ヤマト)「かつてこの地には町の生活を支えてくれていた精霊がいたが、それを今の蛇王ヒュドが奪おうとし、それを阻止する町民との戦いが起こり、嘆き悲しむ精霊は姿を消したらしい」
(蒼)「その結果がこの町の姿…」
(ヒガマル)「その蛇王から親分を助ける作戦を立てる!」
(ニシオ)「向かい先は蛇王の城〝アルゴス城〟!」
(蒼)「そうね、あんな卑劣な戦いを仕掛ける蛇王は許せない!」
蒼葉達が奮起する
(ヤマト)「……囲まれた」
(蒼・ヒガマル・ニシオ)「ー!!」
蒼葉達の身を隠す建物が民衆の蛇に囲まれる
(蒼)「あ、あなた達は…!?」
(民衆の長)「お願いいたします、どうかこの国の王〝ヒュド〟を倒して下さい、このまま悪政が続けば生きていけません…」
(蒼)「……蛇王を」
(民衆の長)「この町をこんな現状にした蛇王を倒し、元の豊かな町へ戻し、この地に償いたいのです!」
(蒼)「償い…?」
(ヤマト)「姉さん怪しい話だ、自国の王を倒すなど、警戒して下さい」
(民衆の長)「…無理もありません、急にこんなお願い、ですから我々の決意をお見せします…こちらに着いてきて下さい…」
(ヤマト)「罠です、ここを早く立ち去りましょう」
(蒼)「…」
民衆が蒼葉達に懇願し返答を悩む蒼葉