7月7日
今日の花言葉
赤すぐり「予想」 すぐり「期待感」 未容柳「気高さ」
きみはとても綺麗だ。
黒い髪を揺らしながら駅のホームで電車を待つ。僕と同じ最寄りの駅なのに、行き先がま反対ってだけでこんなにも遠い。
時々風で顔に張り付く髪をうっとおしそうに払い除けて、いつものように携帯を覗く。
少し切れ長の目が伏せられて、僕はひとりでドキドキしている。
君が来ない日はすごく心配になる。次の日にマスクをしていたら風邪を引いたんだっていなかった理由がわかってホッとするけど、その分学校を休むほどに大変な風邪だったんだと思うと心配だ。
バカみたいに風邪に聞く薬だとか、対処法だとかを携帯で検索する。結局きみに教えてあげられないままに風邪は完治したようだった。
そんなことを、2年と少し繰り返した。
会社の同僚に話すと馬鹿にしたようにはやし立てられる。いい年した男が、高校生に恋をしていて、しかもなんだか話を聞いているとストーカーのようだからかっこうのネタなのだろう。自分で話していてもストーカーのようで気持ち悪いから仕方ないと思うが指摘されるとちょっと辛い。
今日は休日なのに上司に呼び出された。
書類なんて明日でいいのに、わざわざ呼び出されて気持ちはブルーだ。休日ということで周りには友人や恋人と楽しそうに話す子達しかいない。
当然というか、きみの姿は目の前にない。
はぁ、とため息をつく。
憂鬱なまま電車を待つのかと呼びつけた上司を恨んだ。
かた、と隣に少し濡れた傘が置かれる。可愛らしい赤い柄に自然とめがいく。
「あ、」
予想より、高い声だった。
黒い髪はなんだかいつもよりキラキラしていて、制服以外の格好を初めて見た。
黙って突ったっておくのもなんだか変で、フル回転した頭は最善の策としてぺこりとお辞儀をすることを選択した。我ながら無難で、馬鹿な回答だ。
きみは丁寧にそれを返して前を向く。
「いつも、こっちのホームにいますよね。今日もお仕事ですか?」
「え、あ、はい。上司に呼び出されて」
「そうなんですか、大変ですね」
「いや、それほどでも」
「気づいてなかったかもしれないですけど、私よく目の前のホームにたってて。それでよくあなたのことお見かけしてたんです」
「そうなんですか」
「いっつも嬉しそうに笑ってて、携帯で何見てるのかなって気になってたんですよ。あ、失礼でしたかね」
「いや、全然」
「ふふ、あなたを見てて今日も頑張ろうってなるんです」
そうなんですか、僕もです。きみを見て頑張ろうって思ってます。
大事なことは何一つ言えないままに電車が来たことを告げられる。
何も言わず二人で乗り込んで、何も言わずつり革を握る。
きみは思うより早く降りてしまった。
「じゃあ、またホームで」
変な感じです、と笑うきみに僕は手を振る。
もしかして、もしかして。
会社に向かう足取りは軽い。どうしよう、話してしまった。他人から、知り合いにランクが上がったようで。それはなんだか奇跡のようで。
今度は手を振ってみようか。変じゃないだろうか。きみはふりかえしてくれるだろうか。
休日出勤を命じた上司にまずお礼を言おうと思う。
読んでいただきありがとうございました。