能力
魔法の森の入り口、僕はここでいつも、客が来るのを待っている。
香林堂――外の世界の流れ物を扱う店だ。僕はその店の店主、森近霖之助である。
日が暮れ、まもなく夜を迎える。
ふと思い、僕は日記を書く。夜は闇の世界、その時僕の店に一人の男が訪れていた。
東方香林録〜Dialy of Korin〜
◆第一章 能力◆
夜、僕は店を開けていた。今日は何故か勝手が違った。
気持ちの問題だ。普通はもう店仕舞いをするところだ。僕にはもうひとつ予感がする。
そう――不吉なことが起きるのではないかと。
すると案の定、客が来た。
「よう、あんたはここの店主かい?」
「ああ、そうだけど…どうかしたのか?」
声からして男だった。しかもまだ若い年頃男だ。男は話を続けた。
「いや…それよりもお前さん、スペルカードを持っていないようだね」
突然、そのようなことを言われ、ドキンとした。そう――自分の中で何かがもがいている。
「ああ…だけどどこでわかったんだ?」
「瞳の奥だよ。能力者は瞳の奥まで見えなくなる。そんなお前さんにはこのスペルカードをやろう」
男は懐から一枚のカードを取り出した。そしてそのカードを受けとると、なにも書かれていなかった。
「おい、これは一体…」
僕は話ながら前を見た。しかし先程の若い年頃の男はその場に居なかった。
男は『スペルカード』と言った。スペルカードとは自分の得意技に名前を付けた物である。
これは博麗の巫女によって作られたものだ。
「なんか怪しいんだよなあ…」
僕はそう思い、店仕舞いをし床に着いた。
――明日、出るかな。
◆
「こちら『3519』、予定通り完了しました…」
サゴイクと呼ばれた男は、通信端末を使ってどこかへ連絡していた。
サゴイクの能力は『結界を解析する程度の能力』、つまり結界の種類を解析し、身体を同化させる事ができるのだ。
『了解した、引き続き監視を続けろ』
「はい、『Level』」
サゴイクは通信を切ると、その場を去った。