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それさえや。   作者: 源 俊一
第二期
21/27

過去完了の時節甘味を現在進行に添えて

突然ですが。私には付き合って5年の彼氏がいます。


高校の時からずっと付き合い続けて、今は二人共22歳。

私は家庭教師の先生をして、彼はバンドを組んでミュージシャンを目指している。


順調ならいいのだけれど、彼のバンドはそこまで順調じゃない。

ほら、最近は路上ライブをやっているバンドとか、小さいスタジオ借りてやっているバンドとかでも売れる機会があるっていうじゃない。

むしろそういうほうが有名とかいうし。テレビに出ないミュージシャンが今は多いから。


正直言って、私の恋心はかなり薄れている。

彼は優しくて私のことをとても気にかけてくれる。

誕生日の時は必ずプレゼントを持って会ってくれるし、クリスマスの時も必ずサプライズを考えてきてくれるし、会いたいときには会ってくれる。


最初はとても嬉しかった。

それこそ、高校生の時からだから大人の恋愛のようで楽しかった。


でも、もう流石に長すぎる。

何か進展があってもいいくらいなのに、未だにとても仲のいい友達のような。

そんな彼との恋愛に飽き飽きしていた。


早く誘ってくれとか、結婚したいとか。

そんな気持ちは特にないんだけれど。

彼の他愛のない触れ合いになんとなく自分の気持ちが急かされる。


「できれば高校の青春時代に戻りたい・・。」


私の受け持っている生徒は3年間ずっと同じ高校三年生一人。

だからいつもそう言って、口癖になってしまった。


今日もその生徒との授業の時間にぼそりと言ってしまう。


「またですか、指惠先生。」

「ん・・あぁ、ごめん。何か言った私?」

「青春時代に戻りたいとかなんとか。」

「あー・・もうだめだね。私。」


気づけば一時間に一回ペースに現在進行形。

英語と国語がこんがらがって、もはや意味がわからない。

私は文系の先生だというのに、こんなんじゃ授業に多大な影響を与えてしまう。いろんな意味で。


「そんなに過去に戻りたいのにはなにか原因があるんですか。」

「うーん・・いやいや、鞍馬君には関係ないよ。」

「そうですか・・。俺にできることがあったら言ってください。」

「あぁ、うん。・・生徒に助けられるくらいにまでなったらクビだね・・。」

「そんなことないですよ。」

「そんなことなくても、私の気持ち的にそーなの!」


私は頬をふくらませながら鞍馬君に応える。その姿を見て鞍馬君は笑う。


私も笑う。


こんな感じで毎日何気ないことで笑って、なにも考えずに過ごしていられたら。ずっと・・ずっと過ごしていられたら。

私はきっと。甘い甘いお菓子にずっと埋まっているように、恋に滴っていられるかな。


乙女心はほろ苦く。

だけど、恐ろしいほど甘く、甘く、甘く、甘い。


「指惠先生。俺、先生のこと好きです。」


だからとても、とても、溶けやすい。


「・・・え?」

「だから、何かあったら相談してください。頼りになりたいんです。」


鞍馬君は机上の参考書とにらめっこしながら言う。

心なしか顔が赤いような気がした。


「甘いものの食べ過ぎじゃない?」

「な、なんでですか!冗談じゃないんですよ?」


思いのほか必死な鞍馬くんに、私はさっきより上品に笑う。


そうだなぁ。午後のティータイムのような気分で。


「ちゃんと受験受かったら・・考えてあげる。」


甘い甘いお菓子に小さなキスをした。

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