五月蝿い六月の雨
私は雨が嫌いだ。
あんな淀んだ水の落ちるところを見ていたって、何も嬉しくない。
確かに高校生の私にとっては、雨が降って都合のいい事もある。
それでも、やっぱり好きになれない。
私は雨が大嫌いだ。
「これ……受け取ってくださいっ!」
またか。もう飽き飽きしてきた。
これを話すと、そんな羨ましい事を悩みに持つなんて…とよく言われる。
「早栄はいつもモテモテだね!」
「……なにそれ。」
私だって好きになる人はいる。恋愛もしたいし、彼氏募集中をいつでも掲げたい。
最初は嬉しかった。どんな人でも、好きって言われるのは嬉しい。いくら嫌いでも断ることが辛かった。
でも雨のように、何度も何度も何度も何度も。地面を打ち付ける音が五月蝿いのと同じく、五月蝿くて仕方が無くなってきた。
常人の 恋ふといふよりは 余りにて
我れは死ぬべく なりにたらずや。
古典の授業で、こんな短歌があったような。いくら愛してると言われても。そんな言葉じゃ足りないということ。
どれも形ばかりで飽き飽きしている。
授業中。
窓の外を眺めても、降りしきる雨が私を打ち続ける。
あぁ、早く雨が止まないかな。
私はいつだって待っているのに。
雨の日はいつも君と同じ時間。同じ道。
こんなに雨が降っているのに、君は振り向かないし、同じ空を見ない。
朝月の 日向黄楊櫛 旧りぬれど
何しか君が 見れど飽かざらむ
春の季節に出会ってから、もう随分見てきたけれど。私の声は雨音に掻き消されてばかり。
嫌いになったのは、そんな言い訳。
照れ隠しで火照る顔を水で拭う。
私はそんな雨が大好きだ。
「あのね。私好きな人がいるんだ。」




