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それさえや。   作者: 源 俊一
第二期
17/27

有り触れた日常の裏と憾


「もし、世界が明日輝くとしたら何をする?」

「失くなるとかじゃなくて?」

「別にそこどうでもいいでしょ」

「よくないよ。普通そこは、明日世界がなくなるならとかでしょ?」

「細かいなー。だから嫌われるんだよ」

「うっさい。あんたもそういう大雑把なところが嫌われるんだよ」

「どーこが大雑把だ」

「まず、なんでそんな質問が今出てくる訳?」

「ん、んー・・あれ?なんて質問だっけ?」

「はぁ・・ほら、早く帰ろうよ」

「あぁ!待ってよ!まだ教科書しまってなーい!」


ごくごく普通の日常に、私たちは生きていた。


私、左枝さえ小依さえが出会ったのは中学生の頃。

お互い、転校生という立場から会話をするようになった。


最初は「お互い大変だね」という共通の話題から。

今は、別々の話題を共有し合っているくらいは仲がいい。

・・・たぶん。


正直、私は小依に嫌われてるんじゃないかって思っている。

たしかに、高校生という環境に変わったのもあるかもしれないけど。

お互い、妙な違和感がある。

客観的に見れば、私たちは仲がいいと言われるかもしれない。

だけど、そんな私たちだからこそわかる違和感がある。


最近、小依はほかの友達と話していることが多い。

別に嫉妬してるわけじゃないけど、盗られたという感情はどうにも抑えきれなかった。

私だけの小依じゃないなんて。当たり前のことなのに。


だけど、帰り道にいつも付き合ってくれるのは、小依にとっては渋々なのではないか。本当はほかのお友達と帰りたいんじゃないかって。

ずっと、むしゃくしゃしていた。


そうやって怒って、妬んで、悩んで。ようやく気づいた。

私は小依がいなければ何もできない。変われない。


元々、根暗な性格で。眼鏡を掛けて、成績優秀な女で。

そんな私に声をかける子なんて、小依しかいなかった。

でもそれは、同じ「転校生」だったから。

それがなければ、小依とこんなことにならなかったかもしれない。


私たちは、1から始めてからずっと動いてないんだ。

ゼロからプラス「転校生」という1からでしか成り立っていないんだ。


だから、ゼロからやり直さないと。

小依をまたゼロから知っていきたい。知り合いたい。


もうじき文化祭もある。タイミング的にはそこがいいかな。

細かいと言われて嫌われてるなら、細かいと言って好きになってもらおう。

成績だけは、良いんだから。


そうして秘密の計画を始める。


そんないつもと違う左枝に、私は違和感を覚えていた。

最近は、お昼休みに一緒にお弁当を食べることも少なくなった。

本当は、左枝と食べたいのに。


どこか楽しそうな左枝に、私は寂しさを覚えた。


だから私は思ったのだ。左枝に嫌われているんじゃないかって。

昔から。あの時出会った頃からずっと。


私は天真爛漫で、誰とも隔たりなく仲良くしようというスタイルだった。

今も別に変わったわけじゃないけど、左枝だけは特別だった。

誰でもいいとかそういうものじゃなく、左枝は左枝とのだけの空間があった。

だから、誰とでも交わす上辺だけの会話じゃなくて、左枝と話す会話はどこか不思議と引き込まれるものがあった。


といっても、最後は結局全部忘れちゃったりするんだけどね。


それが可笑しくって。そんな自由な私に付き合ってくれる左枝が好きだった。


でもやっぱり迷惑をかけてるんじゃないかって、心のどこかで引っかかる。


左枝は世話焼きだ。嫌なことも無理に抱え込むタイプ。

あまり自分を出してくれない。


実際、これまで左枝の好きなものだとか左枝の嫌いなものだとか。

あまり聞いたことがない。・・忘れてるだけかもしれないけど。

いっつも私の話を押し付けては、付き合わせてるだけな気がする。


私たちは結局、お互いを歩み合わせてない。

止まったまま、歩いている夢を見ているまま。

でも手を繋いでいるような。


だから歩むための、スタートラインを引こう。

遅かったけど、まだ手を離していない。まだ間に合う。


そうだなぁ。イベントとか・・そうだ!文化祭!

サプライズかなんかで驚かせて・・そこで私らしく自由に本音をぶちまけよう!それがいい!

肝心なサプライズ・・どうしよう。


そういえば唯一、左枝が好きだといったものがあった。

「アイデアは出るのは一瞬で、その一瞬を活かすのは永遠だ」

そんな言葉が、好きだと言っていた。

そのあと、「私が考えたんだけどね」と自慢げに笑ってた顔を私は覚えている。

初めて左枝の言葉を、顔を見た気がして嬉しかったのを。


ほかにもあったなぁ。左枝は詩人みたいにいろんな言葉を並べていた。

詩人・・詩・・詞・・かぁ。

これで作詞してみる・・とか・・。でも作曲とかできないし・・。


あっ・・いる。作曲できて、それでいて歌えて。

さらに文化祭で演奏する・・。



そして迎える文化祭一日前。

私は問いかける。からかうように、意味深く。


「もし、世界が明日輝くとしたら何をする?」


・・意味深というより、意味わからない質問になってしまった訳だけど。

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