有り触れた日常の裏と憾
「もし、世界が明日輝くとしたら何をする?」
「失くなるとかじゃなくて?」
「別にそこどうでもいいでしょ」
「よくないよ。普通そこは、明日世界がなくなるならとかでしょ?」
「細かいなー。だから嫌われるんだよ」
「うっさい。あんたもそういう大雑把なところが嫌われるんだよ」
「どーこが大雑把だ」
「まず、なんでそんな質問が今出てくる訳?」
「ん、んー・・あれ?なんて質問だっけ?」
「はぁ・・ほら、早く帰ろうよ」
「あぁ!待ってよ!まだ教科書しまってなーい!」
ごくごく普通の日常に、私たちは生きていた。
私、左枝と小依が出会ったのは中学生の頃。
お互い、転校生という立場から会話をするようになった。
最初は「お互い大変だね」という共通の話題から。
今は、別々の話題を共有し合っているくらいは仲がいい。
・・・たぶん。
正直、私は小依に嫌われてるんじゃないかって思っている。
たしかに、高校生という環境に変わったのもあるかもしれないけど。
お互い、妙な違和感がある。
客観的に見れば、私たちは仲がいいと言われるかもしれない。
だけど、そんな私たちだからこそわかる違和感がある。
最近、小依はほかの友達と話していることが多い。
別に嫉妬してるわけじゃないけど、盗られたという感情はどうにも抑えきれなかった。
私だけの小依じゃないなんて。当たり前のことなのに。
だけど、帰り道にいつも付き合ってくれるのは、小依にとっては渋々なのではないか。本当はほかのお友達と帰りたいんじゃないかって。
ずっと、むしゃくしゃしていた。
そうやって怒って、妬んで、悩んで。ようやく気づいた。
私は小依がいなければ何もできない。変われない。
元々、根暗な性格で。眼鏡を掛けて、成績優秀な女で。
そんな私に声をかける子なんて、小依しかいなかった。
でもそれは、同じ「転校生」だったから。
それがなければ、小依とこんなことにならなかったかもしれない。
私たちは、1から始めてからずっと動いてないんだ。
ゼロからプラス「転校生」という1からでしか成り立っていないんだ。
だから、ゼロからやり直さないと。
小依をまたゼロから知っていきたい。知り合いたい。
もうじき文化祭もある。タイミング的にはそこがいいかな。
細かいと言われて嫌われてるなら、細かいと言って好きになってもらおう。
成績だけは、良いんだから。
そうして秘密の計画を始める。
そんないつもと違う左枝に、私は違和感を覚えていた。
最近は、お昼休みに一緒にお弁当を食べることも少なくなった。
本当は、左枝と食べたいのに。
どこか楽しそうな左枝に、私は寂しさを覚えた。
だから私は思ったのだ。左枝に嫌われているんじゃないかって。
昔から。あの時出会った頃からずっと。
私は天真爛漫で、誰とも隔たりなく仲良くしようというスタイルだった。
今も別に変わったわけじゃないけど、左枝だけは特別だった。
誰でもいいとかそういうものじゃなく、左枝は左枝とのだけの空間があった。
だから、誰とでも交わす上辺だけの会話じゃなくて、左枝と話す会話はどこか不思議と引き込まれるものがあった。
といっても、最後は結局全部忘れちゃったりするんだけどね。
それが可笑しくって。そんな自由な私に付き合ってくれる左枝が好きだった。
でもやっぱり迷惑をかけてるんじゃないかって、心のどこかで引っかかる。
左枝は世話焼きだ。嫌なことも無理に抱え込むタイプ。
あまり自分を出してくれない。
実際、これまで左枝の好きなものだとか左枝の嫌いなものだとか。
あまり聞いたことがない。・・忘れてるだけかもしれないけど。
いっつも私の話を押し付けては、付き合わせてるだけな気がする。
私たちは結局、お互いを歩み合わせてない。
止まったまま、歩いている夢を見ているまま。
でも手を繋いでいるような。
だから歩むための、スタートラインを引こう。
遅かったけど、まだ手を離していない。まだ間に合う。
そうだなぁ。イベントとか・・そうだ!文化祭!
サプライズかなんかで驚かせて・・そこで私らしく自由に本音をぶちまけよう!それがいい!
肝心なサプライズ・・どうしよう。
そういえば唯一、左枝が好きだといったものがあった。
「アイデアは出るのは一瞬で、その一瞬を活かすのは永遠だ」
そんな言葉が、好きだと言っていた。
そのあと、「私が考えたんだけどね」と自慢げに笑ってた顔を私は覚えている。
初めて左枝の言葉を、顔を見た気がして嬉しかったのを。
ほかにもあったなぁ。左枝は詩人みたいにいろんな言葉を並べていた。
詩人・・詩・・詞・・かぁ。
これで作詞してみる・・とか・・。でも作曲とかできないし・・。
あっ・・いる。作曲できて、それでいて歌えて。
さらに文化祭で演奏する・・。
そして迎える文化祭一日前。
私は問いかける。からかうように、意味深く。
「もし、世界が明日輝くとしたら何をする?」
・・意味深というより、意味わからない質問になってしまった訳だけど。




