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それさえや。   作者: 源 俊一
第一期
10/27

星を観る人魚姫


あれから、二年後。


私は前の仕事を辞めて、冗談半分で昔憧れたペットショップでの仕事をするために、トリマー資格を取って、晴れて大きなペットショップに就くことが出来た。


私は泳げているのかな。

王子様は見つけられそうにないし、姫なんていうほど綺麗でもないけど。

私、夢の中を泳げているのかな。


「いらっしゃいませ」


高校生だろうか。なんだか初々しい顔をしている。すべてが始まる春なんだから、もしかしたら新一年生かもしれない。


その子は餌の整理をしていた私に近づいてくる。


「あの…白い猫っていますか?」

「白い猫ですか。いますよ」

「出来れば毛並みが綺麗で、若い猫」


その子の目はそれ以外受け付けないといったように、真剣な眼差しだった。


白い猫か…それに若くて綺麗な猫。

それなら適任の猫がうちにはいるじゃないか。


「こちらです」


このペットショップには、看板娘といえる看板猫がいた。その猫は憎いくらいの可愛さをもち、純白の毛並みをもつ子猫だ。


その猫のところまで案内すると、彼女は目を丸くしていた。


「似てる…」

「……ペットを飼った経験があるんですか?」

「はい。この猫みたいに、綺麗な猫で…。私の成長を見守ってくれた大切な猫です」


"見守ってくれた"…か。

わざわざ過去形になっているところからみても、亡くなってしまったのだろう。


「椅子……」

「あぁ、この小さい椅子はこの猫の好きなもので…なにかとこの椅子に寝ては、戯れてるんです」

「へぇ…もしかしたら生まれ変わりかもしれないですね。ここまで似てくると」

「……そうですか。なら、本当に生まれ変わってきたのかもしれませんね」

「そう言われたら信じますか?」


彼女は猫を真っ直ぐと見ている。懐かしむように。憐れむように。


「信じ…るかもしれません。どうせ生まれ変わっても…同じ事しかしないんだろうなとは」

「あははっ。わかります。きっとまた喧嘩するんだろうなぁ…」

「喧嘩?」

「な、なんでもないです!」


彼女は未だ悩んでいるのだろうか。なかなか決断出来ずにいる。


「名前は…もう決まってるんですか?」

「いえ…そうだ。お姉さんの名前はなんですか?」

「え…どうして?」

「このままだと私、前と同じ名前をつけそうだし…それ以外思いつかないので」


苦笑いをしながら彼女は私の応えを待つ。


「本当にそれでいいの?」

「はい。気に入ればですけどっ?」

「ははっ…えと、私の名前は…水谷紗江といいます」

「………いい名前ですね」

「ありがとう」

「……ほんと……いい名前だよ」


彼女の声はか細く、なんて言っていたのか聞こえなかった。…けど。


「私、この子にします」

「ありがとうございます」


この子もまた。

泳げるようになったのなら。


「今日から君はサエだよー」


彼女は猫を見ながら、笑う。


「なんだか変な感じだなぁ…」


そんな彼女の姿を見て、微笑む。

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