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03.story『もう一つの剣』

どうも皆様ブラストでございます。

今日はメモリールーツの第3話を公開したいとおもいます。


ぜひ一目見てくだされば幸いです。



「見えたぜーッ!あれがアーストか!!」


大きな声を荒げるリュウの視界の前には、自分の元いた街よりも広々とし、大きな建物も並び立つ大都市とも言うべき街、アースト。長い道程を経て、ようやく来るべき目的地に近づいたことに当然喜ぶ。目的地を前に一気に走りだし街の中へと入るが、街の中は優雅な見た目とは裏腹に彼を出迎える待ち人どころか、外を歩く者がほとんどおらず、人気など全くない街全体がひっそりとしている。









「ミミの言う通り、やっぱ普通の街って事はねぇのかよ」


辺りを見回し、ミミの行っていた言葉を思い返しながら呟く。あのフードの男、ラークが最初にこの街に行けと言った時から、このアーストが唯の街でないことは重々承知していたが、今のアーストの街の様子は完全にリュウにとって予想外、そして刹那────。


『オイッ』


突然掛けられた言葉に振り替った瞬間、彼の眼が捕らえたのは振り下ろされる鉄製の棍棒。


「ッ!?」


即座に後ろに飛び、棍棒が肩を霞めるも最小限にダメージを抑え、攻撃してきた相手を確認するとそれは人と呼べるような物ではなく、怪物に近い姿をした人型、そして何より注目すべき胸にぶら下げている「Goblin」のスペルが浮かぶ緑のネックレス。そこから分かる事は恐らく見た目は違う物のリュウ動揺『鎧羅』と言うべきものなのであろう。


「おいおい、この街の歓迎ってのは随分手荒いもんなんだな?」


『鎧羅』の姿は戦闘意識の表れ。即ち相手は確実に龍に向けている事になる。分かりやすく言えば敵意を向けているという事、相手の方ではリュウの質問に答えず、再び棍棒を振り下ろす。


「ったく、しゃぁねぇな!」


リュウの胸に下げた宝石から浮かぶ「Savior」のスペル。それと同時に棍棒が振り下ろされ、砂煙が巻き上がる。相手は敵を仕留めた事に口元を緩ませるが、煙が晴れた頃、ゴブリンの人物が視界に捕らえたのは倒れたリュウの姿ではなく、赤い鎧を身に纏い、手に持つ刃で棍棒を受け止めているリュウの姿が……。


「!?」


「うぅおりゃああああッ!」


そのまま刃を振り切って棍棒の先端を両断。相手がそれに怯んだ瞬間を見逃さず、そのまま間髪いれずに敵を斬りつけ、火花を散らしながらゴブリンの人物は斬られた箇所を抑える。


「ぐッ!て、テメェも鎧羅(ガイラ)か!?」


「けっ、鎧羅(ガイラ)なんて知るかよ!それが何なのかぜひ教えて欲しいぐらいだ」


「ほざけッ!」


使い物にならなくなった棍棒を投げ捨てて、強靭な拳を振うがそれを蹴りで相殺し、身体を反転させると同時に手に持つ刃を振って敵を斬り裂き、そのまま倒れた相手の首筋に刃を突き付ける。


「ッ!」


「さぁ、鎧羅の情報ついでに何で俺を襲ったのか話してもらうぜ?」


「……貴様、まさか『ブレイド』か?」


「はぁ!?「ブレイド」、テメェいきなり何言って────」


「悪いが敵に話すこと何ざ、何にもねぇよ!」


途端、先程まで誰もいない筈のその場に突如としてゾロゾロと姿を現すゴブリンの集団、数はざっと4体程で恐らくこの人物の加勢と言った所だろう、すぐさま刃を構えて身構えるが、多勢に無勢。明らかに形勢は逆転していた。


「新手!?」


「悪いな、ただの一般人なら半殺し程度で済ましてやったが、奴の仲間じゃただじゃおかねぇ!」


「ッ!」


味方の増援に勢いを取り戻したのか、先程まで倒れていたゴブリンは起き上がると共に拳を振い、それを受け止めるも、突然背中に衝撃が走る。


「うぐっ!!」


「後ろががら空きだぜ!」


完全に囲まれ、その内の一体が隙だらけの背後に叩きつけた棍棒、衝撃に身体がジンジンと痛だし、それを堪えるも四方向から次々と振われる棍棒や拳。防御するだけでもそれは容易な事ではなく、完全に袋叩きの状態。


「(ったく、数が多い上に埒があかねぇ、このままじゃ……)」


「貰った!!」


「!」


その声と共に頭上に向けて振われる棍棒、対応しおうにも体は付いて行けていない。確実に棍棒はリュウの頭部を直撃、そして次の瞬間には赤い鮮血が飛び散る。





ゴブリンの棍棒を持つ左腕に突如として突き刺さった一本の剣によって────。


「!?」


「う、ぎゃあああああッ!!!」


鎧羅の姿のお陰か、貫通はしていないものの溢れる血と突き刺さった刃による痛みに悲鳴を上げ、他の4人も悲鳴を上げる男に視界を奪われたその一瞬、悲鳴を上げるゴブリン顔面に突如蹴りが叩き込まれ、蹴り上げられたサッカーボールの様にゴブリンは吹っ飛び、背後の壁に激突。


「「!?」」


ゴブリンを蹴り飛ばしたであろう乱入者はそのまま地面に降り立ち、その乱入者の正体はリュウとは正反対の青い鎧を身に纏い胸に下げている青いネックレスには「Blade」のスペルが浮かんでいる。


「ま、まさかブレイド!?」


「こいつは囮って事か!」


突然の乱入者を前にゴブリン達は動揺を隠せていない。しかし青い鎧を纏うブレイドと呼ばれる人物はそんな事お構いなしにゴブリンの腕に突き刺した青い剣を引き抜き、その刃をゴブリン達に向ける。


「構う事はねぇ!ここで奴をぶっ潰すぞッ!!」


まだ数で優位に立っているゴブリン達の士気は衰えてはおらず、一気に叩き潰そうと一体のゴブリンが果敢に突っ込んでいき、棍棒を振うが慌てる事無くほんの数㎝ほど身を退いて棍棒を避わすと、反撃の様に青い剣を振い、攻撃の空振りで隙だらけゴブリンに避けるられる訳なくそれは直撃し、痛みを感じる間も無くさらに連続で振われる剣に斬り裂かれ、止めと言わんばかりに腹部を踏みつけるように蹴り込み、ゴブリンの男はそのまま吹っ飛ばされ、その場に倒れる。


「ひ、怯むな!で潰しちまえ!」


残る三体のゴブリンは一斉にブレイドを取り囲み、正面と左右の三方向から手に持つ棍棒を同時に振り下ろすが、ブレイドには通じない。三本の棍棒を全て一本の剣で受け止めると支える両手に力を込めて一気に弾き返し、三本の棍棒全てを斬り落とす。


「!?」


「終わりだ!!」


バチバチッ、と音を鳴らしながら手に持つ剣に青い電気が迸り、その剣を一気に振うと三体のゴブリンを纏めて斬り裂き、そのまま地面へと倒れ、倒れたゴブリン達のネックレスから「Goblin」のスペルが消滅し、元の人間態へと戻り、男達は地面に突っ伏したまま全く動かないが、呼吸はあるようで恐らく気絶しただけだろう。









「……」


「お、おい!ちょっとアンタ!!待ってくれよ!」


気絶した男達から視界を外し、何も言わぬままその場を立ち去ろうとするがリュウは『鎧羅』の姿を解いて、その人物を呼び止める。


「一先ず礼を言わしてくれ。助けてくれてサンキュー」


「……別に助けたつもりはない。俺の前に敵がいた、それを倒した。ただそれだけ」


目線を合わせないままどこかツン、とした様子で返答する相手の態度に少しムッ、としたのか、少し苛立ち気味に皺を寄せてそのまま口を開く。


「んだよ、それ。まぁいいけどな。ところでさっきの奴等が何なのか少し教えてくれないか?」


「アンタに教えて、それで俺に何かメリットがあるのか?」


「メリットって……まぁ俺に出来んのはバイトぐらいなもんだけどな」


「バイト?」


「そっ、どんな仕事も短期間で引き受けるぜ、仕事に見合った報酬をもらえればだけど」


「アンタ唯のフリーターか」


「言い方にカチン、とくるけどそんなとこだ」


「仕事探しならほかでやるんだね。今この街でできる仕事なんか何にもない、あるのは戦いだけだ」


「それどういう意味だよ?」


「ふっ、何にも知らないのにこの街に来るなんて……。『鎧羅』なら少しぐらい情報収集もすべきだと思うけどね?」


「悪かったな!生憎、記憶喪失中で、『鎧羅』だのどうとか全く分からない、悪く言ったら戦闘ができる一般人ってとこですから」


「記憶喪失?」


「そだよ、名前とこのネックレスの使い方だけ、後はみんな忘れちまった」


「ネックレスの使い方を知ってるのにさっきの戦いはまるでなってなかったけど?」


「うるせぇよ、ネックレスの使い方もまだうる覚えなんだよ!」


「何でもいいよ、早く俺の前から消えて。アンタと居ると足を引っ張られそうなんだよね」


「なっ!テメェそれどういう意味だよ!」


「言葉どおりの意味。それじゃぁ」


「だからちょっと待てっ────!」


後を追いかけようとした矢先、リュウの前に剣が付きつけられる。


「俺に付いて来るな、どこの誰かとも分からない様な奴信用できるか」


「だからって初対面に、んな物騒なもん向けるってどういう神経してやがる?」


「敵かもしれない奴には当然の態度だと思うけどね?」


「この分からずやが!俺はただ情報を聞きたいだけって言ってるだろ」


「なら力づくで来なよ?」


「上等だ!」


「Savior」のスペルの出現と共に赤い鎧を纏い、ブレイドの振う剣を受け止め、ガキイィィィィンッ、と刃同士がつばぜり合う。


「最初に言っとくぜ?ガチ勝負をするつもりはねぇから一太刀だ」


「?」


「俺がテメェに一太刀でも入れたら情報教えてもらうぞ?いいな?」


「構わない、雑魚倒しても暇なだけだしな」


「テメェ、人おちょくるのも大概にしとけ!」


刃に力を込め、そのまま一気にブレイドを押していくが、それを軽く左に受け流すと背中を斬りつけ、蹴りを叩き込んで突き飛ばす。


「ぐっ!」


「そんな調子で俺から情報聞き出すなんて一生かかっても無理だね。諦めてこの街から出ていけば?」


「お生憎様、この街には俺の欲しい物がある他に、仕事の用事まであるんだからさっさと情報掴んで用件済ましてぇんだよ!」


再び立ち上がって連続で刃を振りかざす。対してブレイドの人物はそれをいとも簡単に受け止めていき、受け止めた刃を弾き返すと切り返していく。


「ッ!まだまだぁッ!!」


「いい加減うっとおしいよ!」


刃を簡単に弾き返すと腹部を蹴り飛ばし、後ろに後退させられる龍に追い打ちをかけるかのように飛び膝蹴りを喰らわせ、後ろに吹っ飛ばされ、仰向けになりながら地面に倒される。


「何が目的かは知らないけど、足を踏み入れる場所間違えたね。いい加減アンタを相手にするのも面倒になってきたよ」


「けっ、悪いな。一度果たした仕事の契約だ、裏切ることはまずねぇ。それに面倒ってのはこっちの台詞だ」


「?」


「テメェのへなちょこ刀で何回切られようが、何回でも立ち上がってやるよ!何回でも向かってやるよ!俺は仕事のためなら何だってやる男だ!」


「うっとおしい、ここらKOでもしてあげるよ!!」


「やってみやがれってんだ!!」


何度も立ち上がるリュウに苛立ち、痺れを切らすと、再び剣にはバチバチっ、と電気が走り向かってくるリュウに対し剣を振い、それはリュウの横腹を直撃。さらに剣に纏う電気が電流となってリュウの鎧に流れる。


「うがああぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」


花火のように身体中から電撃による光が輝く。ようやく電撃が治まる頃には、焼けた様に鎧のあちこちから煙が噴き上げる。


「馬鹿。真っ向から向かってくるなんてね」


立ったまま気絶してるのか、腕も力なく垂れ下がっており、決着が付いたと見て、剣を下げようとするが……。










ガシッ!、先程まで垂れ下がっていた筈の左腕が突如として剣を掴み、とっさに引き抜こうとするが、ガッチリと固定されているかのようにまったくもってピクリ、とも動かない。


「まさか、アンタ!」


「肉を切らせて骨を断つってやつだ!!」


身動きの取れていないブレイドにそのまま刃を振い、完全に避けきれず相手の肩に火花を散らしながら一太刀を入れる。


「まさか、俺に大振りさせるためにわざと挑発したのか?」


「言ったろ、仕事のためなら何だってやるってな……約束通り、この街の……じょう……ほう、を……」


過度のダメージによるものか、最後まで言葉を言えないまま、そこでリュウの意識は途絶え糸の切れたマリオネットのようにその場に倒れるが、倒れ込む前にリュウの腕を掴む。


「……肉を切らして骨を断つだなんて、馬鹿なことするよ。俺が約束果たさなかったらどうするつもりだ?」


射式の無いリュウに薄情な台詞を吐き捨てるも、リュウが一太刀入れた個所であろう方に手を添えて、軽く口元を緩ませると、胸に下げてある「Blade」の文字の消失と共に身に纏う鎧が消え、元の姿に戻った人物の姿は男にも女にも見える中世的な顔立ちと耳までかかる長めの黒髪が特徴的な人物で、彼の名はセナ。


「聞こえてるかどうか知らないけど、一応約束は約束だ。アジトで話してやるよ。アンタの知りたい情報ってのを」


そのままリュウを背負うと、ある場所に向けて彼等は歩き出して行った。









『で?揃いも揃って返り討ちだとォ?』


とある建物の内部で、椅子に腰かけて苛立ち気味に呟くのは顔に付けた痣や傷だらけの腕が目立つ一人の男性、その胸には黒いネックレスが下げられている。


『奴等の処理はいかがいたしましょう?』


『知るかァ、ゴミ掃除もできないドカスが俺に不要か必要かどうかの判別ぐらい分かるだろ?』


『承知しました』


適当な部下に指示を出しだすと、溜まるストレスを吐き出すように大きな息を吐くとまたドッ、と椅子に凭れる。


『随分ご機嫌斜めだな、ザギ?』


『ほんと、暇なら俺達とでもつるんでみる?』


些かその場の空気には馴染まない二人組の声、影から姿を現す一人は胸に下げた黒緑色のネックレスに腕に付けたブレスレットが特徴的な男、もう一人は胸に下げた灰色のネックレスが特徴的でどこか幼さを感じさせる男。ザギと呼ばれた男は眉間に皺をよせ、『あぁ?』と憤怒を込めた表情でその二人組を見るが、それを全く恐れる事無く言葉をつづけていく。


「ゴミ掃除に随分手古摺ってんだろう?親切に俺等が掃除の代理人なってやるって言ってんだよ」


「何を企んでる、グレイ?ガイ?」


恐らく二人の名だろう、その言葉にガイと呼ばれた少年風の男はそのまま言葉を続ける。


「俺達も暇してんだよね?最近手応えのある奴と戦えなくて、だから早い話が強そうな奴がいるなら、戦ってみたいってとこ。ねっ?兄貴」


「だな、相棒」


「けッ、なら早いとこ掃除してもらおうか?」


「おやおや、ザギってのは来たばかり客に仕事押しつけて礼を言わねぇのか?」


「カスがほざくな、俺はテメェ等に暇つぶしを与えてやってんだ。感謝述べんのはテメェ等の方だ」


「ふっ、これ以上は無駄か。まぁいい、行くぞ相棒」


「行こうか、兄貴」


グレイとガイは不敵な笑みを零すと共にまた影の中へ歩み、ふとグレイは口を開く。


「さぁ、地獄の宴の始まりだ」


言葉と共に、彼等は影の中へとその姿を晦ました。


いかがでしたでしょうか?第3話。今回は結構な新キャラ登場です。

敵確であるザギ、さらに謎の二人組グレイとガイ。そして敵か味方か、謎のセナ。


新たなキャラ4人を加え、次回はさらにバトルシーンを書く予定です!

グレイやガイ彼等の実力も次回公開するので見てくれたら幸いです。


余談ですがグレイとガイはカブトでお馴染のあの二人組をモチーフにしてます。セナのモチーフキャラはまぁ後日発表と言う事で……(笑)


ぜひ次回も宜しくお願いします。

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