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01.story『旅立ち』

どうも皆様、ブラストです!今回は新しい一次創作であるメモリールーツの第1話を後悔したいと思います!低クオリティー+誤字ありかもですが、一目見ていただければ幸いです。

「おはよう!」


私達が住む現代と比べ少し殺風景とした町並み。そこですれ違う人々に意気揚々と挨拶を交わしていくのは、茶髪の髪を束ねたポニーテールが特徴的な女の子。だがそんな普段通りの彼女の前に、突然ドンッ!、とまるで重い物を地面に落としたような音が響き、彼女だけでなく音を聞き付けた人々も野次馬となって、その音の元へと集まり、彼女も群がる野次馬を押しのけて音の正体を確かめようとするも、彼女の前にあったのはまるで積み木のように積み上げられた大柄な男達。そんな男達に腰掛けるのは茶髪の髪に、胸に下げた銀色の楔に赤い宝石を付けたネックレスが特徴的な一人の少年。


「よぉ皆、街のならず者集団制圧完了だぜ?」


「リュウ!アンタまた勝手な事して!」


リュウと呼ぶ少年を見るなり、少女は真っ先に彼を怒鳴りつけ、彼女の顔を見るなり、先程まで少年に見られた笑みは一瞬にして豹変。


「何しようとお前に関係ねぇだろ、アキ!それに俺は勝手な事した覚えはない、ちゃんと仕事でやってんだよ。ほれ!」


リュウと同年代ぐらいの少女をアキと呼びながら、少々面倒くさそうに彼女の背後にいる中年の男性を指差すと男は少し動揺しつつも前に出てじっとリュウの顔を見る。


「あっ、あぁ確かに私が依頼した。何でもやるって言うからこの街のならず者を何とかしてくれって頼んだんだ。半信半疑だったが、まさか本当にやってくれるとは、正直私も驚いてる」


男性の言葉に、唇を上げて笑いながら口を開く。


「そういう訳。まぁ半信半疑だったかどうかはともかく、約束の報酬はここで貰ってもいいか?」


「あ、あぁ。ともかくならず者の制圧には本当に感謝してる。ありがとう」


ジャラジャラ、と金貨の詰まった袋を投げ渡し、受け取って中身を確認すると、笑いながら「バイト終了」などと呟くとその場を後にするように歩きだし、ミルもそんな彼の後姿を追っていき、そんな二人の姿を見つめる一つの影。


『……あの男、まさか』


フードに身を隠すその人物もまた、二人が歩き出した同じ方向に向けて歩き出し、その姿を晦ましていった。









「アンタまた勝手なことして!危険なことしないでよねって、念を押していつも言ってるでしょ!」


何処かの家の中、ソファーで呑気に寝そべるリュウを、家の外にまで聞こえる程の声で怒鳴りつけるアキ。対してリュウは「るせぇーな」と、まるで反抗期を迎えた子供の様な対応で、そのまま言葉を続ける。


「危険な事するなとか、そんな親みたいな事言うんじゃねぇよ?大体血の繋がり所か、俺等同年代だし」


「うるさい!身寄りのないあんたを停めて上げてるんだから、少しは私の注意聞いてくれてもいいでしょ」


「悪ぃが、そりゃ無理だ。俺は働くのが好きなんだよ。それに自分の記憶を捜す手掛かりにもなるかもだしな」


会話から当然、二人に血の繋がりはなく家族でもない。そんな二人がなぜ一緒の家に居るのか、二人についてここで少し話そう。数年前、彼は自分の過去を、記憶を失くし放浪とし、やがてこの街へと行き、そんな彼を見て、彼女はこの家、自分の家へと住まわせている。親の居ない彼女にとって、当ても無く唯放浪としている彼に何処となく近い物を感じたのか、放っておけなかったのだろう。


「とにかく危ないことしないでって言ってんの!仕事って言うのはちゃんと自分に合ってるかどうかを選んで!」


「だから親みたいなこと言ってんじゃねぇよ!それに俺がやってんのは仕事じゃなくてバイトだよ、バーカ!って事でバイバーイ!」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」


「だーれが待つかよ!今から街出向いてもう一件バイト探しだ」


小馬鹿にしたような態度で玄関へと直行し、そのまま外に飛び出そうとするも、突然ガチャッ、ドアの開く音と共に一人の人物の姿があり、それにすぐさま足を止めるも時すでに遅く、スピードを殺せずにその男性と激突。後ろに弾かれる。


「ってて……おいおっさん!急に他人の家に上がり込むなよな!!」


「言っとくけど、アンタの家でもないんだけどね」


後ろから合流したアキの突っ込みに言葉が詰まらせつつも、立ち上がってパンパン、と足下をはたきながらフードを被る訪問者に視界を戻す。


「で?あんた誰なんだよ?」


「あぁ、突然来て悪かったな。この街でどんな仕事でも引き受けるという事を聞いてな、それでき街の人々に聞きこんでここに来たという訳さ」


「それってつまり!」


「勿論仕事依頼だ。報酬は仕事完了後に渡す」


「OK!新規バイト来たーーッ!」


「いきなり何言ってんのよ!何度も何度も危険な事させると思ったら大間違いだからね!」


捕まえようと飛びかかる彼女を簡単に飛び越えて交わし、倒れる彼女を横目に割りながら言葉を続ける。


「まぁともかく!仕事内容は?」


「ここからかなり離れた先に遺跡があるのを知ってるか?あそこの奥に宝があってな。相当の財宝があるとか……。それを回収してほしい訳だ」


「その場所が分かってるのにそれを仕事として頼むって事は絶対危険場所って意味じゃない!リュウ、分かってるよね?絶対この仕事引き受けちゃ……」


「OK、じゃぁ契約成立って訳で早速仕事開始するわ」


「人の話を聞けぇーーッ!ってか決断が速すぎる!」


秋の注意を耳に入れる訳も無く、「これに場所を記してある」と、男の手に持つ地図を取ると共に外に飛び出し、迷う事無く指定された場所へと向かう。


「(これでいい、人違いでなければいいが)」


「今なんて!?」


「!、何でも無い。それでは失礼したな、俺は一先ず行かしてもらう」


「あの……!」


彼女の呼び止めに男もまた耳を傾けずにその場を後にし、「まったく!」と苛立ち気味にぶつぶつと愚痴を零しつつ、リュウの事が気になるのか、彼女もまた彼の元へ……。









「よっしゃぁ、ここが仕事場所だよな!」


一足先に辿り着いたリュウの目の前にあるのは、いかにも怪しい雰囲気を漂わす遺跡。アキの言っていた通り軽く遺跡を見るだけでも危険な予感がとても感じられる。だが、案の定彼がそれに構う訳も無く、真正面から遺跡中へ向けて駆けだし、影の中へとその姿を消していき、遺跡内部は誰が置いたかも分からない、いくつもの蝋燭の炎が辺りを照らし、遺跡全体不気味な空気が漂う。


「さぁて遺跡と言えば、お決まりネタの様に何か仕掛けがあったりする訳だけど、できる限り注意しなきゃな」


さすがに遺跡内部の奥深くまで来ると、入口付近まで会ったような勢いを殺し慎重に辺りを伺っている。


『きゃあああああああッ!』


突然遺跡中に響くは、静粛に包まれたこの場には些か似合わない大きな絶叫。ビクッ、肩を振わせつつ絶叫の響いた先にあるのは、絶叫しながら全速力でこちらに向かうアキの姿あり、安心したように大きく息を吐く。


「んだよ、アキ。お前も来たのかよ?言っとくけどな、また危険だからどうとか言うなら聞かないからな?」


飽き飽きした様に言い放つが、彼女はまるでそんな事を聞いていないかのように、絶叫しながらそのままリュウの真横を通り過ぎてしまい、そんな彼女を不思議に思ったのか「何だあいつ?」と呟きながらまた前方に視界を戻すと、ゴロゴロ、と徐々にその音を大きくしながら迫る巨大な岩がはっきりと視界を捕らえる。


「はぁ?」









遺跡全体に響く二重の絶叫と共に、遺跡内部を並んで駆け抜けるアキとリュウ。


「あ、アキちょい待て!!て、テメェ一体何をどうしやがった!」


「知らないわよ!アンタの事心配で先回りして先に遺跡の中調べてたら何か“カチッ”って音して、足下見たら変なスイッチが」


「「知らないわよ」じゃねぇよ!間違いなく原因それだろうが!!」


ギャーギャーと喚き続ける二人。そんな彼ら二人を見つめる影が一つ。


『何やっているんだか……当たりか、唯のお調子者か、判断しかねる』


フードを被る男はそのまま二人を監視するかのように見つめ続け一方のリュウ達は息を切らしつつも走る足だけは止めず、必死に駆け抜け続ける。


「ったく!お前の性で本当に面倒だよ!一寸しっかり捕まってろ!」


「えっ!?ちょっ!」


アキを掴むと同時に横に飛び、壁の隙間にその身を埋らせて岩をやり過ごし、壁に激突しガラガラと音を立てて岩は崩壊し、安心しきったように二人はほっと息をつく。


「ほんとお前のせいで大迷惑!俺の事殺したいのか?」


「何言ってるの!私はアンタが危険な目に遭ってるんじゃないかと思って」


「ほとんどお前が危険だよ!俺の事気遣うなら大人しく帰れ!」


「何言ってるの!さっきの事はともかく、絶対アンタに危険な事させるような真似は!」


遺跡の内部を再び進むリュウを追いかけようとするが、道中再び彼女の足下からカチッ、と響く音。



「あっ」


「お前まさか……!」


遺跡の真横から開いた幾つもの穴、そこから飛び出すは鋭き無数の槍。言うまでも無くまた遺跡内部に響く多重の絶叫、その中の群を抜いてリュウの言葉が遺跡中を最も轟かせる。


「お前やっぱ帰りやがれぇーーーーッ!!!」









数時間後にはようやく遺跡の奥へと姿を見せる二人だが、その表情にはもはや疲労の募った様子を隠し切れていない。


「まったく、何が俺を危険にさせたか知れないぜ」


「すいません」


最早何も言えないのか、リュウに対して頭が上がらずそのまま彼の後に付いていき、そんな彼ら二人の前にあるは一つの宝箱。それを見るなり宝箱を開け、中身にあるはチップの様なもの。


「はぁ!?あれだけ危険な目に遭って中身がこれ!?」


男が話していた財宝とはお世辞にも言えない中身に怒ったように声を荒げるも、リュウだけはなぜかそれが気になるのか、そのチップを手に取ったまま黙り込んでいる。


「リュウ、何してるの?帰るよ?中身がそんな物でも当初の目的達成したし、いつまでもこんな危険なとこに居る訳にいかないでしょ?」


「……このチップ、少し俺は見覚えあんだよ」


「はぁ?アンタ見覚えも何も、記憶が無いって自分で言ってたじゃない?」


「そうなんだけど、どうも初めて見た気がしないっていうか……」


「もしかして記憶失くす前の所持品とか?」


「そう!まさにそんな感じだよ!」


「気のせいとかじゃないの?それに万が一、アンタの所持品として何でそれを依頼人が持ってきてって言うのよ?」


「それは俺にもしらねぇけど、ともかく絶対嘘なんかじゃないんだよ」


「なら依頼人に聞いてみたら?少なくともそれが何なのかについてぐらいは教えてもらえると思うし」


「だよな?ならさっさと戻って、報酬貰ってこれが何なのか聞こうぜ」


「悪魔で報酬優先するんかい!」


半場呆れ気味のアキを余所に、出口に向けて歩き出すリュウ達。だがその彼等を監視していたあのフードの男は、それを見て……。


『ここからが本番。まずはお手合わせ願おうか』


ボソッ、と呟きフードを脱ぎ捨てると、彼の胸には紫色に輝く宝石を取りつけたネックレスが下げられ、右手にはリュウが持つようなチップが握られており、チップを宝石に差し込むと、「Shadow」のスペルが浮かぶと、男の身体を黒い鎧が覆い、次の瞬間男の周りには、影の様に黒く染まり、まるで影をそのまま実体化させたような人型が三体、男の周りに集う。それを見ると、「行けっ」とでも言わんばかりに首を振って合図を送ると、影の様な人型達は10m程も離れた真下に躊躇いも無く飛び降り、リュウ達の前に突如として降り立つ。


「!、何だテメェ等?」


「な、何こいつ等?」


「さぁ?ただどう見てもこいつ等、友好的とは世辞でも言えないな」


「つ、つまり?」


「言うまでも無いだろ?こいつ等、俺ら襲う気満々だぜ?」


言葉通り、殺気を隠す事無く手に握られた鉄パイプの様な武器を振い、それを振り下ろされる前に腹部を蹴り飛ばすとそのまま残る二人の攻撃を避けながら後ろへと下がる。


「(何だこの感覚、馴れたようなこの動き。俺、前にもこうして……)」


二度目の様な気がする感覚に疑問を抱きつつも、迫る敵の攻撃を手馴れたように避け、腕を掴むと同時に腹部に拳を叩き込み、怯んだ相手をそのまま蹴り飛ばし残る二体にも─蹴りで後ろに後退させる。


「リ、リュウ?」


「(何をどう動いたらいいのか、考えるよりも先に身体が勝手に動いてくれる。懐かしく感じるこの感覚。ひょっとして、これが俺の記憶手がかりってことか?それにこのチップ、やっぱり俺の思い違いじゃない。俺はこいつを覚えてる……!)」


群がる敵を軽くいなしながら手に持っているチップを見ながら……。


「記憶違いって事は間違ってもあってくれるなよ!」


乱戦の最中、フラッシュバックの様に脳裏に浮かぶ記憶の断片、それを頼りに手に取ったチップを自分の胸に下げたネックレスの赤い宝石に差すと、「Savior」のスペルが浮かぶ。


「行くぜ!」


先程のフードの男とは違い、炎のように真っ赤に染められた鎧を身に纏い、背中に突如として出現するは炎の様なラインが刻まれた一つの剣。それを何の違和感もなしに掴むと、白銀に光る鋭き刃の切先を敵に付き付ける。


「リュウ?あんた、一体?」


「別に不思議がるなよ?俺は俺だし、この姿になってちょっとばかし気分がよくなってるだけだ!なんせ、俺の記憶思い出せそうなんだからよ!」


動揺を隠せていないアキに対し、まるで何事も無いかのような気楽さで返事を返すと、向かう敵を一閃。斬られた影は原形を留められないのか、跡形も無く砕け去り、残る影に対しても一気に駆け出して二体纏めて剣を振うと、先程の影と同じく残る二体もバラバラとなって砕け散る。


「さぁ~て余裕余裕、ビビったのは最初ぐらいな物だぜ」


「リュウ、だ、大丈夫なの!?」


「見ての通り快調だけど?つーか、さっきよりだいぶ気分がいい」


まるで準備運動を済ませたかのような陽気さに彼女ももはや心配する事馬鹿らしくなったのか、落ち着いた表情を取り戻すと今度は怒るように表情を厳しくさせ……。


「それはそうと!いつまでアンタその格好で居るつもりよ?さっさとその鎧脱ぎなさい。見てるだけで危険な匂いがするから」


「んだよ突然、つーかこの鎧脱げって言われても外れねぇし、脱ぎようがねぇんだけど?」


取り外しの利かない鎧にまごつくリュウ達だが、胸に下げた宝石から「Savior」の文字が消失すると、身に纏う鎧はいつの間にか霧の様に消えてしまう。


「あぁ?何だこれ、突然消え──」


『それは君自身の意識、戦闘への意識が薄れたからだ』


リュウの疑問を代弁するのは頭上に響く一つの声、上を見上げればそこにはフードを被った依頼者であるあの男性が……。


「あ、あなたは!?」


「お前、何しに来たんだ?依頼しときながら俺の仕事の視察でも来たかい?」


「ふん、大方正解だ。お前が当たりかどうか、少し見させてもらいたかった」


「どう意味だ?」


リュウ達の前に飛び降ると、リュウの首に下げてあるネックレスを見ながら言葉を続ける。


「確か記憶失くして居るのだったな?だが、そのネックレスで多少の記憶ぐらいは思い出せたんじゃないのか?」


「あ、あなたリュウが記憶喪失って事知ってるの?」


「あぁ、お前がそのネックレスに填めたチップ。見覚えあるだろう?お前の予想通り、元はお前のものだ」


「!、ならどうしてそれをあなたが持って?」


「言っただろう?当たりか外れかを見極めるためさ。お前がリュウなのかどうか確証を得たかった。当たりであってくれて本当に礼を言う」


「……テメェさっきから一体何なんだ?」


「俺の名はラーク。お前と同じ『鎧羅』だ」


「鎧羅?」


「悪いが話はここまでだ、自分の記憶を取り戻したいならここから遥か西の方角にあるアーストという街にでも行ってみろ。必ず手掛かりが掴める筈だ」


「街に出向く必要はねぇ、テメェを直接洗いざらい吐かせりゃ済む事じゃねぇか!」


「やれやれ、依頼者に手荒い真似でもするつもりか?」


「悪いな、バイトはさっき終了したからな、テメェとの縁もこれできっぱりってわけだ!」


再び両者のネックレスに浮かぶ「Shadow」と「Savior」のスペルと共に、ラークの身には紫の鎧、リュウの身には赤い鎧が身に纏われ、振り下ろす剣を長い刀身を誇る長刀で受け止める。


「戦いを思い出したばかりの青二才が俺を相手にできると思うか?俺の影を倒したぐらいで少々はしゃぎ過ぎたな。だがだからこそお前には旅立ってもらう必要がある」


「んだよ?そんなに俺に遠い場所でバイト先探せって言いたいのか?冗談は御免だぜ?」


「冗談ではない。お前の素質を見込んだ上で言っている。はっきり言えばお前は、こんな平凡な場所に……行きつく街を誤った。お前が本当に居るべき場所は──!」


そこまで言いかけた瞬間、何かが彼を咎めたのか軽くリュウを弾くと、戦う意識が無くなったのを示すかのように長刀を下げ、鎧も消え去る。


「これ以上は止そう、お前が自分自身で過去を取り戻してこそ何をやるべきか分かるだろう。しかし行動を起こさないのなら、記憶失くした腑抜けと呼ばざるのを得ないがな」


「テメェ、一寸待ちやが──」


「じゃぁな」


言葉も聞かずに挨拶を済ませると、足下の影に吸い込まれるかのように闇の中へと消えていき、記憶の手がかりを逃した事に地団太踏んで悔しがるも時既に遅く、苛立ち気味に「くそーッ!」と声を荒げ、遺跡内に唯空しく声が響くのみだった。









家に戻った後の彼の行動は速かった。手軽な大きさの鞄に適当な荷物を詰めていき、度に出る様な身支度を済ませ、そんな彼を見ながらアキは……。


「リュウ、やっぱり……あの人の言ってた通り旅に出るの?」


「……悪いな。今度ばかりは危険だとか、何言われても止める気ない」


「分かってる。それに私が何言っても止める気が無いのは最初からわかってるし」


「…………」


「今だから言うけどさ、アンタが初めてこの街に来て今まで私と住んでいた時、何か自分に弟が出来た気がしてたの」


しんみりとした様に暗い表情を浮かべつつも、そのまま言葉を続ける。


「だから姉の様な自覚を持って、危険な事ばかりするアンタを守らなきゃってずっと思ってたけど、結局唯の御節介で、迷惑だったかな?」


「……迷惑なんかじゃないさ、記憶を失くして放浪としてた頃から俺に手を差し伸べてくれる奴はいなくて、そんな時にアキに出会えたのは心から嬉しかった」


アキに背を向け、どこからか重い物を詰めたような鞄を引き摺りながらアキの前へと差し出し、鞄を開ければ中身は大量の金貨が……。


「!」


「俺が今まで稼いできたバイト代だ。今日の今日までずっと金を貯めてきたのは、アキが今までしてくれた恩に応えたいからだよ、まぁこれっぽちで恩を返し切ったなんて思わないけどな」


「……えぇ、そうね。確かにこんなんじゃ恩は返しきれてないね」


「?」


「本当に私に恩を返したいと思うのなら、またいつかここに戻ってきて?自分の記憶を取り戻したら、今日みたいにまた二人で暮らさない?」


驚いたような表情を浮かべながら振り替えるも、すぐにまた口元を緩ませ、彼女の言葉に対し静かに頷きながら、口を開く。


「……了解。仕事が終わった暁には、腹空かして戻るからうまい飯作って出迎えてくれよ?」


「それあんたからのバイト依頼?」


「そうなるな」


「ふふ、分かった。なら必ず戻ってよね?キャンセルは聞かないから」


「心配すんな、一度言った事を訂正するような真似しないさ」


命一杯の笑顔でグッドサインを送ると、彼はいつものようにドアをぶち破る勢いで玄関を飛び出し、新たな街に向け旅立った。彼女との再会を約束して……。

第1話いかがでしたでしょうか?記憶を失くした主人公、リュウ。そして彼がつけたネックレスの謎、これも本編中で少しずつ明かしたいと思います。


メモリールーツ今後から連載していきますが今後もどうかよろしくお願いします!

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