春夏秋冬!!!!
とある家には、珍しい『四つ子』の姉妹が住んでいた。
その姉妹の名前を省略すると、『春夏秋冬』に
なる。
どういうことかというと、
上から、『春』『夏』『秋』『冬』という名前な
のだ。
そしてこの物語は、四季に翻弄される日常ではなく、四季が世界を翻弄する日常。
つまり、春夏秋冬の“はちゃめちゃ劇場”の開幕である。
ピピピッピピピッ
四つの部屋から、アラームの音が鳴り響いている。
実はこのアラーム、かれこれ三十分近く鳴り続けているのだ。
いつまで経っても鳴り止まないアラームに痺れを切らした女性は、音が聞こえてくる二階へと向かった。
そして、その女性が階段を登ると、右と左に二つ
ずつ並んでいるドアを力強く開けていき、大声で叫んだ。
「春!夏!秋!冬!いい加減起きなさぁあぁあぁあぁあぁい!!!!!」
この女性は、春夏秋冬の母親である、『月野季子』だ。
季子の容姿は、人より遥かに良いと言っていいほど優れていて、可愛い系統に当てはまる。
性格はハッキリしており、気が強い女性だ。
つまり、顔と性格とのギャップがすごいのである。
「「「「うるさい!!!!!」」」」
春夏秋冬が叫ぶ。流石すぎるほどに、声が綺麗に重なっていた。
それからも春夏秋冬は、ドアの向こうにいる母親に枕を投げつけるという見事なシンクロもみせた。
だが季子はその枕を安易に掴み取り、そして春夏秋冬に投げ返した。
「痛!」「痛!」「痛!」「痛!」
春→夏→秋→冬とリズムよく四人の声が聞こえた。
ここまでくると面白く感じてしまう。
駄々をこねていた春夏秋冬だったが、季子に強制的に起こされてしまい、四人は渋々階段を降りた。
そして春夏秋冬は、テーブルに並べてあるジャムがのった食パンを食べ進める。
これも、さすが四つ子だろう。
食べるスピードや、食べ方、ココアを飲むタイミングが全て一緒だ。
「今日から高校二年生だね!四人とも何組になるかな〜!!」
春夏秋冬に話しかけたこの男性が、父親の『月野節人』だ。
節も季子に負けずと、容姿はイケメンの部類に入る。
そんな二人の子だ。
当然のように、春夏秋冬も美女なのである。
「でも、絶対みんな別々のクラスになっちゃうからさ、つまんないんだよね〜」
最初に口を開いたのは、長女にあたる
『月野春』だ。
春の性格は、四つ子の中で一番上ということもあり、面倒見がよい。けれど、ちょっぴり抜けているところがある。そして想像力豊かなのだが、時々楽観的すぎるところが欠点である。
「小学校の頃は一回だけ春と一緒のクラスだったけど、それ以外は全部四人バラバラなんだもん。絶対学校側が何か仕組んでるんだね!!!」
彼女が次女である、『月野夏』だ。
夏は四つ子の中でも一番社交的であり、友達も多い。そして学校の人気者なのだ。
ただ破天荒すぎてしまうところがあるので、よく
季子に注意をされている。
「うちの学校14組まであるからさ、もう誰とも被れないのは確定なんだよな〜。こんなことなら、
十五つ子に生まれてくればよかったよ!!!」
そして彼女が三女である、『月野秋』だ。
秋は誰にでも人懐っこく、イジられやすい性格だ。唯一の妹である冬が大好きすぎて、よくシスコンと言われている。だが、当の本人は満更でもなさそうだ。
「でも十五つ子だったら二人しか同じクラスになれないよ。だから、一番いいのは二十八つ子!」
彼女が四女であり、月野家の末っ子『月野冬』だ。
冬は四つ子の中で一番自由人であり、好奇心旺盛。
一度集中してしまうと、他のことが見えなくなってしまうタイプだ。
この通り、四人の名前をくっつけると、
『春夏秋冬』になるのだ。
そして、母親と父親の名前をくっつけると、
『季節』になる。
『春夏秋冬』の名前の由来は、ここからきたのだという。
それから四人は身支度を済ませ、学校へと向かった。
春夏秋冬は一卵性の四つ子でもあるため、顔が見事にそっくり。見分けられる人がほとんど居ないのだ。
だが、そんな春夏秋冬を見分けられる方法が一つだけ存在する。
それは、四人が髪に留めているピンの色だ。
春は桃色、夏は緑色、秋は橙色、冬は水色といったように全員好みの色が違うのだ。
そのため、ピンの色で四つ子の区別をつけることができる。
しかし、ピンの付け方は四人とも一緒だ。
左側に二本のピンでばってんを作り、その下に一本のピンを付け足せば完成である。
髪の毛の長さも全員肩についているくらいのため、
ピンの色以外で見分けるのは極めて難しい。
そうこうしているうちに、春夏秋冬は学校に着き、
クラス替えの表を見るために並んでいた。