二、赤ずきん少女とお菓子の家
セレアは夢中になって花を摘んでいました。
あまりにも夢中になりすぎて、気付いた時には森の中で迷子になってしまいました。
帰り道がわからなくなったセレアは、
「ま、いっか」
と。明るく開き直りました。
そしてお腹もなんだかすいてきたので、セレアはカゴに入っていたケーキを食べました。ケーキだけじゃ物足りず、持っていた花も食べました。
「あれ? この花、お菓子でできてるわ」
セレアは周囲を見回しました。
「無理矢理な展開ね。苦し紛れなネタだってことが見え見えだわ。これからどういう流れにしようとしているのかしら?」 すると、どこからか美味しそうな甘い匂いが漂ってきました。
セレアはピンと閃きました。
「ヘンデルとグレーテルの展開ね。ってかこの話、かなりうろ覚えの上、当時は怖くて半端かじりのまま本を閉じちゃったはず……」
セレアは地面に膝を折ると頭を垂れ、絶望的に呟きました。
「結末がわからないわ……」
しかしその場に座っていては何の変化も起こせないので、
「わかったわよ。行くわよ。行ってみるしかないんでしょ、お菓子の家に」
セレアは言ってはならない先の展開を口にして、仕方なくその場を立ち上がり、甘い匂いのする場所へと向かいました。
しばらく森の中を歩くと、予定通り、お菓子の家がありました。
セレアはお菓子の家に無言で近づくと、何のリアクションもなくその家の食べ始め――
「って、なんでこの流れで家がベニア板!? 持ち主どんだけ金無しよ!」
セレアは怒って、その家を壊してしまいました。
――と、そこに。家の持ち主が帰ってきました。
セレアは好戦的に振り向きました。
「やっと現れたわね、魔女!」
と、思いきや。
残念ながら家の持ち主は全身白タイツの男でした。
セレアは地団駄を踏んで喚きました。
「なんでよ! なんでよりにもよって全身白タイツなのよ! 明らかに童話に出てきたらいけない人でしょ! それ以前に全身を白タイツにすることで何を主張しているの、この人!」
全身白タイツ男は真顔でずっとセレアを見つめていました。
セレアはよくわからず戸惑いました。
「な、なに……?」
黙って。白タイツは背中からマラカスを二本取り出すと、それを両手に持ってシャカシャカと鳴らしながら踊り出しました。踊りながら、セレアの周囲を回り、そして軽やかなステップをお見舞いしました。
「…………」
セレアは無言で拳を固めました。
全身白タイツ男は全力でその場を逃げ出しました。
セレアも全力でその男を追いかけました。




